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千文字悪役令嬢  作者: うたた寧々


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42/64

千文字の後始末

前回のあらすじ


ついに解呪が完了しました。 皆は後始末でてんやわんやです。


※今回は性的な暴力や後遺症についての記述が続きます。ご注意ください


千文字姫の呪いは周知の事実だったし、解いたことに大っぴらに罵る人物はいなかった。


しかし明らかに数人、「まずいことになった」という表情をした人間がいた。

ベルはそれを見逃さず、片っ端から名前を挙げて憲兵隊へ尋問を要求した。


また数々の帳簿も()()()A()()N()()から提供があり、数々の人身売買が確認された。


転生して呪いから守ると謳いながら凌辱の限りを繰り返した罪は混乱を呼び、一時報道規制が敷かれたが、一般ゴシップ誌による暴露でほぼ無意味な規制となった。

強制的な性的奉仕の事実を派手に書き立てたゴシップ誌は飛ぶように売れ、呪いから生還した女性達を苦しめた。


金に困った貴族が、神聖院の司祭に頼み込み、呪いで仕方なくというていで娘や妹、貧しい親戚、母親どころか妻をも娼婦として扱われると知りながら売り払う、悪質なケースも複数確認されたらしい。


オルスフェーンでは人身売買は重大な犯罪だ。

売り払われた本人は保護されることとなったが、売り払った人物は大半は拷問刑、良くて懲役刑に処されることになった。


尚、A・N嬢については捜査に最初から協力的といういうことで、今回から特別に司法取引という制度が制定され、多少の減刑が受けられるようだ。

なんでも同じく呪いで転生させられる寸前だったメアリ・バートン嬢の、前世での記憶を元にした法案らしい。


時は少し遡って、あの複雑な魔法陣を解呪した直後――。


「静かになさい。 司祭長。 ケーシィ・ブルーベル嬢との面談を要求するわ」


司祭長は絵に描いたようなたぬきおやじ。


もごもごとはっきりしない様子だ。


「そ……そんな娘のことは知りませんなぁ」


「隠蔽は偽証に等しい罪よ。 イザベラ・ホワイトにそのような態度を取ったと明確に記憶しておくわ」


はっきりと凄みのある声で男装の令嬢が司祭長を脅す。


結局司祭長は折れ、若手に罪をなすりつける形で、ケーシィ嬢との面会を許した。


希望と緊張の入り混じった表情をするカテジナと、視線を合わせないアリスフィアが気になった。





「あまり、見ないほうがいいわ」


「大丈夫、覚悟はしてる……」


アリスフィアの警告。


カテジナも、ここまでアリスフィアが全くケーシィの状態について口にしないことから、何となくは察していた。


ケーシィは、ブルーベル家の両親に肉体ごと売られていた。


表向きは神聖院への奉仕活動という名目だった。


「私が先に見ようか。 様子を、聞いてからでも……」


「ううん。 自分で受け止めたいの」


今なら、カテジナの魔力暴走程度なら抑え込めるが、彼女が心配だった。


防音が施された重い扉を開くと、ケーシィ・ブルーベルはカテジナに抱きついてきた。


「  様ぁ……今日は、何をしてくださるの? ✕✕? それとも✕✕✕✕✕かしら」


カテジナが動きを止めた。


悪趣味な人間が、徹底的に性的な教育を施し、名前のみを空白にして行為の際だけ呼ばせるようにしたらしい。


「ねぇ……  様……私、もう……」


話に聞いていたケーシィよりはかなり大人びた体つきになっていた。


ケーシィがさらわれてから、たった半年なのに。


カテジナを客だと思ったのだろう、艶めかしく足を擦り寄せてくる。


ケーシィは、壊れていた。


どれだけの数の人間が、性的な欲求と、女をねじ伏せる支配欲を満たすことができれば、女であれば誰でも良いとこの有り様のケーシィを助けず弄んだのかが伺いしれた。


カテジナはたまらずケーシィを抱きしめた。


「ごめん、遅くなってごめんね、ケーシィ」


カテジナが名前を呼ぶと、ケーシィはぴくりと体を震わせた。


「その……声……」


狂気にくすんでいた瞳に急に生気が宿る。


「カテ……ジナ……?」


そこには予想もしなかった表情があった。


「なんで来たの?」


怒り、侮蔑、劣等感、あらゆる嫌悪。


「帰ってよ!! 帰って!! 私はここがいい!! ここしか居場所がないの!!」


枕、時計、ドアカード、あらゆる室内にある備品をカテジナに投げつけるケーシィ。


「何で! 何で今更来たのよ!! どれだけ願っても何回犯されても来てくれなかったくせにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


あの武力に秀でて強いカテジナが、ついに肩を震わせて泣き出してしまった。


「ごめん……本当にごめんね……」


そのまま座り込んでずっと謝罪をし続けている。


ケーシィは荒い息を吐きながら激昂し続けている。


このままだとケーシィもカテジナも精神への負担が大きい。


補助脳に依頼して、二人とも鎮静魔法をかけることにした。





「急に魔法かけてごめんね」


「ううん……助かったよ……助かりました?」


「敬語はいいよ、所詮男爵令嬢だし」


魔王の血族であることにどう対応すべきか、カテジナはまだ悩んでいるようだ。


「……」


ケーシィ嬢も先程よりは落ち着いたようだが、ベッドの上で縮こまってしまっている。


「ケーシィさん」


ベルはさすがに何を言ったものかわからないという顔だったし、アリスフィアなんか敵側だったというので、私が間に立つことになった。


「! ……もう、その名前いらない。 今はパメラよ」


「じゃあ、パメラさん。 戻りたくないってどういうこと?」


ケーシィ改めパメラは、ぐっと言葉を飲み込んで迷ったあと、少しずつ話しだした。


「カテジナには聞かれたくない」


「OK、カテジナはちょっとお外行ってて」


「ドアの向こうからでもここの音聞こえるんだけど……」


野生動物か。


「んじゃ神聖院の周り散歩してて」


カテジナはしょんぼりしながら神聖院周りを徘徊しに行った。


「私、ブルーベル家では邪魔な子だったの」


ブルーベル子爵家。


あまりお金がないくせに、ブルーベル家当主は何人も愛人を作った。


ケーシィは、使用人との間にできた子供で、当主は醜聞を恐れてケーシィを養うことにした。


しかし当主の不倫の証であるケーシィを夫人はよく思わず、ケーシィはさんざんに虐待されていたそうだ。


「カテジナは優しくしてくれたわ……あの子のことは大好きだったけど、同じくらい大嫌いだった。

 どうして従姉妹なのに、こんなに扱いが違うんだろうって」


ケーシィの黄緑色の瞳から大粒の涙がぱたぱたと落ちる。


「ここでは、皆必死に働いてた。 ある意味平等だったの。

 ごはんも毎食食べられるしね……肌艶が悪くなったり骨が浮いちゃったら、一部のもの好きにしか売れないから」


「なるほどねえ」


どうしたものか。


ベルにちらっと視線をよこしたら、「あなたがなんとかして」と言いたげだった。


「えーと、あなたには色んな選択肢があります。 まず、ここではもう働けない。 なぜなら違法な就業状態だからね」


ケーシィは覚悟していたのか、少し肩を落としただけだった。


「で、多分色々辛い目に遭ったと思うけど、幸い君は人間だ。 魔法を使えば記憶はある程度消せる」


「……本当?」


「うん。 変わりに楽しい記憶を詰めたっていいよ。 歌劇をたくさん見に行ったとかね」


ケーシィはその生まれから、魔法については全く習得していないようだった。


アシュレイも似たような育ちなのだろうか。


「……それでも、私が帰る場所はないわ」


「あら、うちに来る? 使用人ならいつでも大歓迎よ。 身許もしっかりしてるし」


ベルが、雇用の話になると急に元気になった。


「いいんですか……!?」


「三食とアフタヌーンティー付きよ」


ケーシィの表情にわずかに希望が灯る。


「あのぉ~~私もぉ~~家では冷遇されてましてぇ」


アシュレイが後ろからぴょんぴょん飛び跳ねながら就職希望している。


「はいはい、まとめて面倒見るわ」


「わーい!」


さすが公爵家。


うちではこうはいかない。


片方たかが男爵だし、片方魔界だし。


「でも多分、さっきのことを謝れるのは今だけだよ。 私はどっちでもいいけど。 どうする?」


「…………カテジナのせいではないものね。 ……わかりました。

 あと、皆に挨拶したいから。 待ってていただけますか。 ……魔王様?」


「まだ魔王ではないよ。 私はファリア・アルテイシア」


「赤い目は魔王の印って、オルスフェーンなら誰でも知ってるわ」





結局カテジナとケーシィ改めパメラは無事仲直りしたようだった。


濁音だらけで聞き取りにくかったがカテジナは私やベルに感謝していたようだ。


記憶の消去については、調書が取れてから迅速に対応することを約束した。





「幸い君は人間だ、ねぇ」


後処理を憲兵隊に任せ、私は来た時と同じく、ホワイト家の馬車に乗せられていた。


これからやることは山程ある。


山程あるが……とにかく今は眠い。


眠いと同時に、恐ろしかった。


魔族の記憶は、どうやら時間遡行をしても消えにくいらしい。


「……」


ベルが太ももを二回叩く。


私は特別に行儀悪く、馬車の中でなんとベルの膝枕で寝ることを許された。


足を組めば十分寝られる広さだ。


さすがホワイト家の馬車。


イザベラが悲しむような、慈しむような顔で私の頭を撫でている。


「ベルは……魔法でなかったことになった記憶をどう処理してるの?」


「そうねぇ……有り得た過去を、本で読んだみたいな気持ちかしら」


「本かぁ……大分悪趣味な本だなぁ」


「……ごめんなさいね、助けてあげられなくて」


少し考えて、ベルは言い直した。


「……助けなくて」


ベルは、少なくとも数度、私の命の危機を()()()起こしている。


それが魔族としての能力覚醒の条件だったのは、今は理解しているが。


「いいよ。 私ベルのそういうところ、結構好きだよ」


「ほんと、悪趣味」


静かに馬車は街道を走っていく。


ベルの目元で何かが光った気がしたが、ここからは星空しか見えない。


治癒したばかりの手足とは別に、記憶にしかないはずの傷が痛んだ。


長い長い夜はまだ始まったばかりだった。

はあはあ………呪い解けたからって字数多すぎですわ~~~~~~~~~~~~~~~

次回から2000文字程度までにおさめます。 好きに書けるって楽しいね

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