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千文字悪役令嬢  作者: うたた寧々


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千文字の強化

前回のあらすじ


ついに解呪に取り掛かるファリアとイザベラ。魔力倍加の秘薬を使い、物量でゴリ押しするようですが……

『魔力倍加を使用する場合は――と唱えてください』


「――」


「!」


久しぶりの音。


人の耳には聞こえにくい発音だった。


ループ中の突然の異変にベルが目を見開く。


人の言葉に無理やり当てはめるなら、マナの根源に最も近い理知の魔神との交信を行い、強制的に魔力を倍加させる。


通常この世界の魔法は呪文も魔法陣も必要としない。


呪文を必要とするのは、異常に強力なため、本人の承認を必要とする魔法のみだ。


突如、魔力暴走に近い激流に包まれ、補助脳が可視化の速度を越えて倍加し始めた。


稲塚かプラズマかわからない刺激光が辺りにほとばしる。


「あっはは! 楽しいねこれ」


精神の愉快さとは対照的に、肉体は限界を迎えつつあった。


少しずつ魔王の血脈に慣れつつあるとはいえ、元は普通の男爵令嬢の肉体だ。


「ちょっと、手足にヒビが! 大丈夫なの!?」


ベルが慌てて止めに入る。


いくつか限界を越えてダウンする補助脳も出てきた。


加速度的に解析は進む。


補助脳が160機落ちる。 再起動。


落ちる。 再起動。 解析。


落ちる。 再起動。 解析。



あ、ダメだ。


こんなに急に限界って来るんだな。




「んー……骨は拾って?」




手首から先が弾け飛び、眼球が片方破裂する。


足が縦に割れ、辺りに血が飛び散った。


私は真っ白な光と、何か柔らかいものに包まれた。







「……馬鹿!」


魔力の奔流の影響で雲が厚くなり、霧のような小雨が頬を叩いた。


意識を取り戻すと、中央教会の屋根が半壊し、光の帯が幾筋か私の女神を照らしていた。


私はベルの体に頭を預け、体を投げ出す形になっていた。


体といってもほぼ半壊しているが。


神聖院の司祭でもそうそう受けられない上等な治癒魔法で、血まみれになった私の体は次々修復されていく。


「あれ、時を戻していただければ大丈夫ですよ」


「もう一回貴女が壊れるかもしれないのに戻れるわけないでしょう!」


そう言われると、確かにどのタイミングから壊れ始めたのかはよくわからなかった。


魔力は……魔王よりちょっと強いくらいで止まっているようだ。


倍加の重ねがけは、今後より実験を繰り返して慎重に使わなければ。


呪いはどうなったんだろうか。


手を見ようとしたけど、弾け飛んでいたので確認できなかった。


魔法陣はもう消えてしまったようだけど。


「あの、お手を見せていただいても」


ベルは無言で手を見せてきた。


その間も一切治癒の手は止めなかった。


あざがすっかり消えた綺麗な手だ。


「良かった……」


アリスフィアがすっかりグロテスクになった私から目をそらす。


「おーい、終わった!?」


カテジナ達も駆けつけてきた。


遠くから、多くの人のざわめきが聞こえる。


「これから質問攻めにされるわよファリア。 覚悟なさいな」


オーロラに輝く絹糸を眺める。


彼女を見ているとどんな痛みも引いていくような気がした。


「いいですけど、ご褒美をください」


「……資産も爵位も思いのままよ、多分ね」


ああ、そうだった。


一晩一緒に過ごした夜の空気も、あなたの照れた可愛い顔も、時間遡行でなかったことになったのだ。


私が()()()()()()()いても、()()()()()()にしなきゃいけない。


「楽しみですねえ()()()()()


イザベラ様はごく近くにだけ防音魔法をかけた。


「イザベラ様は長いって言ったでしょ」


「あれっ? えっと……」


「……あなた、嘘が下手ね、リア。 明確にスキルが積み上がる前提で作戦を立てるんだもの」


「ああー、そういうこと……」




本当は忘れさせてあげたかった。




ベルは確かにそう言った。


その意味を理解するには、もう少し時間が必要だった。


私は膨大に積み上げられた記憶を反芻しきれてはいなかったし、イザベラが何故最初から私に好意的なのか。


嘘つきのホワイト家の恐ろしさをまだ理解していなかったのだ。

やっとちょっときりがいいとこまで書けました。

ファム・ファタルに人生めちゃくちゃにされる話が大好きですわ~~~~~~~~~~~~~~~~

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