千文字の解呪
前回のあらすじ
千文字の呪いを解く方法はあるにはあるけど、それは重大な代償を必要とするのでした……
作業手順を決め、なるべくベルの文字数を消費しない方法がとられた。
アリスフィアが既に呪いを解こうとした魔術師達の記録を持っていたため、手順については問題なかった。
これだけで5ループほどは稼げたかもしれない。
ベルが「次」と言ったらアリスフィアが魔法でたどる道筋を伝え、私が実施する。
補助脳はアリスフィアの発言を元に自身が次に解くべき道筋を自動解析し、アリスフィアが次に読むべき道筋を示したりする。
検証を終えたら絶対記録紙に記録し、道筋を順番に消していく。
呪いはいつも呪い返しと表裏一体だ。
呪いの主も覚えられない道筋は設定しない。
ごく普通の、迷路パズルのようなものだ。
カテジナとアシュレイには透明化して見張りを頼んだ。
「始めるわ」
超越者の秘薬を飲む。
(あ、意外と飲みやすい。 ほんのり甘いんだな)
噂では世界樹の花から100年に一度だけ採取可能な花の蜜を使用しているらしい。
魔法陣の迷宮との、長い長い、しかし一瞬の戦いが始まった。
◆
「次」
「2、9、2、4……」
もうどれくらい繰り返しただろうか。
何度も繰り返される2時間。
補助脳が30回目ですと即座に答える。
最初は一つだった補助脳が、既にかなりの数になっていた。
倍加が途中で止まるなどの想定外の事態に気づきやすくするため、補助脳は球体として可視化していたが、少し邪魔くさい。
(正直、こんなにうまくいくと思わなかったなあ……)
とっくに私が知る魔王が持っていた魔力とは桁違いの魔力量になっていた。
今なら国をひとひねりで滅ぼしてしまえそうで、その想像が容易くできる自分に背筋が寒くなった。
カテジナは「次」のループに入った途端、私の異常な魔力量を察知し駆け込んでくるので、それをなだめるのがお決まりになっていた。
魔力の隠蔽魔法は一応使っているのだが……何という嗅覚。
(ベルは、怖くないのかな……)
それだけが気がかりだった。
最初は呪いを解くことに夢中で、魔力を持った後関係性の変化に気がまわらなかった。
(嫌われたら嫌だな)
「!?」
急にベルの頬が紅潮し始める。
無意識に魅了の魔法を使ってしまったようだ。
慌てて魔法を鎮める。
「……もう、そういうのは後にしてちょうだい」
輝く宝石の公爵令嬢が少し呼吸を乱しながらそんなことを言うものだから。
(そうか、自分で編み出せばもっと速く解呪が終わる!)
次の瞬間には、補助脳がとんでもない魔法を生み出していた。
『魔力倍加の魔法を発案しました』
どこまで強くなってしまわれるのですか~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!??
ちなみに魔力隠蔽なしだと普通の人なら半径10km圏内に足を踏み入れただけでなんかすごく恐れ多くなって泣き出すレベルです。




