千文字の解説
前回のあらすじ
主人公は魔王の血族でした! 無事アリスフィアの襲撃を退けましたが……
「大体の位置が把握できるなら横薙ぎにすべきでしょ?」
ベルが唇の前に人差し指を立てた。
力を取り戻したのが嬉しくて、つい呪いのことを忘れていた。
カテジナが困惑したように口を挟む。
「イザベラ様の時間遡行中に、あなたが教えたのよ。 ドゥーイ伯爵のこと」
「……そう。 そういうこと」
私は服がぼろぼろになってしまったアリスフィアにケープをかける。
アリスフィアは不快そうな顔をしたが、諦めて受け取ってくれた。
「私にその時の記憶はないもの。 ……時間魔法へは警戒してるけど」
胸ポケットから一つの手帳を取り出す。
「その日起こった重大な出来事は書き留めているわ。
ドゥーイのことを教えた時は、書く暇がなかったのね」
主に魔界に生えるトキワスレの樹皮からできる絶対記録紙。
時間魔法の影響を受けないアイテム。
時間魔法を危険視する者は必携の品だ。
(人間界では貴重品なのに、流通しているのね)
「……クララの暴走を回避してくれたことには感謝していますわ。
……でも、あの子の肌を衆目に晒したことは許せない」
「あら、二人きりでじっくり花を散らすのがお好み?」
「それ以上口を開いたら殺すわよ」
ベルは冷ややかにアリスフィアを見据えている。
アリスフィアもわだかまりがなくなったわけではなさそうだった。
「こら、やめて。 二人とも私には勝てないんだから」
剣呑な空気の二人に割って入る。
毒気を抜かれたようにアリスフィアはため息をついた。
「ただの腹いせよ。 ……もう気は済んだわ。 神聖院に協力させられるのもうんざりしてたし。
私も何か見逃してもらったのでしょう?」
「ご明察。 ついでにこの施設は何か教えて?」
イザベラが頼むとアリスフィアは心底嫌そうに答えた。
◆
この施設はやはり水槽に浮かぶ女性の魔力を利用していた。
呪いの付与や娼婦達の時間の巻き戻し、魔法監視装置の動力源としているそうだ。
アリスフィアは宴の日だけ転移魔法で秘密裏に呼ばれ、護衛と見回りをノースフェイス侯爵直々に頼まれていたらしい。
魔法監視装置をこっそり切っておいてくれたのも彼女だった。
「あの男、クララにも色目を使ったのよ。 暴かれるなら絶対あいつからだと思ってた。
給仕達にも評判悪くて誰も寄りつかないしね」
榛色の目を細めながら忌々しそうにそう言った。
アリスフィア嬢は随分とクララ嬢のことを大切に思っているようだった。
「……あの、怖くないのですか。 神聖院の人たちが」
アシュレイ嬢がアリスフィアに尋ねた。
イザベラ様、どうもアリスフィア嬢とクララ嬢のことはお嫌いのようですわ~~~~~~!!!!
まあお二人とも覚えてらっしゃらないけど、元々はファリアを虐めてた人たちですものね……。




