千文字の苦痛
前回のあらすじ
引き続き夢の中での記憶の話です。
呪いの感染についての実験を終えたイザベラとファリア。ついに呪いの発動条件について調べ始めます。
その後も何度かいちゃついていたが、呪いは特に伝染る気配はなかった。
結局私も、イザベラ様と同じく「悪い子」になることにした。
イザベラ様ほど思い切った行動ができたわけではない。
家宝の花瓶を割ってしまったり、お父様のお気に入りの靴を汚してしまったり。
手紙の宛先を間違えてちょっとしたトラブルになったり、お客様を招いた時に苦手な食べ物をお出ししてしまったり。
そういう細々したやらかしを続けて、ついに「粗忽者」と言われるようになり、程なく私の手の甲にはあざが浮かび上がった。
何度時を巻き戻してもらったとしても、学園に入学して暫く経つと、勝手に呪いのあざが浮き上がるようになっているらしい。
(父かな。 それとも父や母から私の話を聞いた誰かか。 まあ私はずっと家族からは浮いている存在だったからなあ)
ちょっと格の違いは感じるけれど、二人揃って悪役令嬢。
呪い持ちが二人揃ってからの実験は、過酷を極めた。
何をもって千文字とするのか。
あくびやくしゃみ、いびき、吐息などはカウントされるのか。
知りたいことはたくさんあった。
「……本当にいいのね? 辞めるなら今よ」
「始めちゃってください」
実験で千文字を超えるたび、私の意識は混濁した。
正確には、体の方の意識は混濁したように見えた。
イザベラ様の悲しげな表情がぼんやりと知覚できた。
ああ、そんなに悲しまなくていいのに。
精神と体の接続が不安定になり、断片的な発言や動作しか表現されなくなるという表現が近い。
幽霊が見えたり、明らかに何かに怯えて見える令嬢達は、精神が離れても肉体との接続が完全に切れなかったのかもしれない。
私の精神は別の場所に飛ばされていた。
薄暗い照明と、カビ臭い壁に囲まれた窓一つない部屋。
色とりどりの明滅する光が封じられた瓶が周囲に見えた。
瓶には一つ一つラベルが貼られていた。
全て女性名、見知った名前もあった。
(あの光一つ一つが、呪われた令嬢達なのかしら)
私も硬いガラスの瓶の中に入れられているようで、外に出られない。
白いフードを被った男が、薄い黄色に光る瓶を一つ持って行く。
(一体何に使っているのかな)
正直、吐き気がするほど嫌な予感はしていた。
人の体を離れたためか急速に精神体として意識がはっきりしていくのを感じた。
瓶には魔法が使えなくなる魔法がかけられていた。
(……人にはよく効きそう)
少し、魔法の改造を試みる。
人の身に縛られていた頃に比べたら、随分と容易かった。
今更ですが、ファリアは完全な人間ではありませんわ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!




