千文字の籠絡
前回のあらすじ
呪いの検証を進めていく二人。
巷では呪いだか病気なんだかふんわりした扱いでしたが、どうやら感染はせず故意にかけた呪いで確定のようです。
「……婚約者に頼むべきです」
ごく当たり前の話なのに、私の声には悔しさが滲み出ていた。
ホワイト家は王家とも繋がりが深い。
イザベラ様は第二王子エドワード殿下との婚約が決まっていた。
どういう仲かは知らなかったが、呪いを受けた彼女を見舞うことすらなかったようで、仲睦まじいわけではなさそうだった。
(呪いを受けたと分かった途端、婚約を保留にした男よ。 一度だって見舞いに来やしない)
手元のスケッチブックに、すらすらと王冠や敗れた書類の絵を描いてみせる。
(時を戻せば、どうせあなたは忘れてなかったことになる)
「それに……下心がないと思って?」
大きな窓からレースカーテンで柔らかく拡散された少しだけ欠けた月の光が差し込む。
オーロラ色の髪が様々な色に輝き、夢のように綺麗だ。
月明かりに照らされた完璧な姿の女神が、この青白い空間でも分かるほど頬を染めた。
品の良い白のナイトドレスから伸びる手が、私の頬を捉える。
こんなに美しい月を見たことはなかった。
大きく豪奢な装飾が施されたベッドに二人横たわる。
一切声を出してはならない情事は色々と大変だったが、これまでにないほどイザベラ様を近くに感じる。
「イザベラ様は長いわ」
「……ベル?」
イザベラ様は満足そうに微笑んで私の頭を撫でた。
「リア」
額をくっつけてくすくすと笑う。
幸せすぎてどうにかなりそうだ。
情を交わした後に親密な呼び方に変えるなど、順序がおかしい。
さっきまではとても可愛らしかったのに、すっかり元の調子だ。
結論から言うと、呪いは感染しなかった。
これで呪い持ちの令嬢達も、多少は生きる道筋が見えてきた。
(私は男性ではないので……そこは気がかりですね。 性転換の魔法でも使えればいいですが、あれは希少だし)
性差を叩き込まれる貴族で、性転換の魔法を使いこなせるものはごく僅かだった。
大抵からかいのネタになるので誰も使えることを話さない。
イザベラ様は照れたような、罰が悪いような、奇妙な顔をした。
机の引き出しから小さな小瓶を取り出し、私に差し出した。
(まさか)
(性転換の秘薬。 ……8時間で効果が切れるわ)
(最初からこれを使えばよかったのでは?)
「……最初はそのままのリアがよかったの」
ホワイト家は嘘つきの家系だ、と噂に聞いたことがある。
こんな可愛らしい嘘ならいくらでもついてほしいと思った。
今後彼女の結婚を大人しく見守っていられるか自信がないが、この後の実験も耐えられる気がした。
婉曲表現と、事実を書くことのみにつとめましたわ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!




