千文字の読了
前回のあらすじ
過去のイザベラ様は千文字の呪いが時を戻しても消えないことに気づき、塞ぎ込んでしまった。
運命の日。
告示していた「千文字の呪い持ちにのみ会う」条件。
それに合致したファリアがホワイト邸までやって来た。
ファリアも呪われたことには先触れを見た時に驚いた。
とにかく無事を確認できたことがイザベラは嬉しかった。
「なるほど、事情は承知しましたわ」
カテジナは丁寧に時間遡行記録(表)を閉じた。
「地下室で助けられた身ですが、呪いを解くことには協力したいです。
……アリスフィアの話が本当なら、解呪しても彼女達には行き場はないかもしれないのですよね」
イザベラは少し迷った後、例の魔法玩具を取り出した。
『わからない』
「でも、呪われたままよりは絶対良いですわ」
『はい』
イザベラは透明化の魔法は苦手だった。
元来から注目の的だったイザベラにとって、自身の存在を薄くする想像がつかなかったのだ。
(これでやっと――条件が揃った)
中央教会。
神聖院の本拠地にして大神聖堂を備える広大な施設。
警備は厳重ではあるが、透明化が使えればかなり奥まで潜れるはずだ。
呪いを解く意志があり、他人への透明化の魔法まで使える人間はカテジナしかいない。
「一週間後の夜、ファリアと一緒にドゥーイ伯爵をつける」
カテジナは承諾し、正面エントランスから帰っていった。
イザベラはカテジナに多くの事実を隠した。
ファリアは最初、呪い持ちではなかった。
イザベラも最初は研究に前向きになれなかった。
(貴族達と研究……、嘘ではないわ。 ファリアは貴族令嬢だし、お父様も私を匿ってくださるもの)
イザベラの時間遡行の発動条件は、自身が死ぬか、自発的に時間遡行魔法を使う必要があった。
呪いが発動して気が狂ってしまえば、時間遡行自体が不可能になる。
最初にファリアが訪問した日、イザベラは今よりずっと険悪な態度だった。
呪いを解きたいと打診しても、協力してくれる者は皆無だった。
誰も呪いになど関わりたくない。
一介の喋ることもままならない悪評のある小娘の話など、誰も取り合わなかったのだ。
唯一反応してくれたのがファリアだったが、呪いの取材と、休校のお見舞い目的とのことだったし、深入りさせたくなかった。
(このまま気が狂って破滅してもいいかもしれない)
嫌がらせのように、腹いせのように、ファリアに今の実情を身振り手振りで全て話した。
(怖いでしょう? ここまで話せば、関わりたくなくなるわ!)
「なるほど、魔法で私たちを守ってくださったのですね」
イザベラはファリアの提案に思わず耳を疑った。




