千文字の不安
前回のあらすじ
イザベラが何度繰り返してもクララがファリアを殺してしまいます。
クララとファリアの助命のためイザベラがとった行動は
(学園に行かなければ、トーマスに好かれることも、クララに決闘を申し込まれることもない!)
そう思ったイザベラは学園入学よりもずっと前に時を戻した。
そして処罰されない程度のあらゆる悪行を働いた。
公爵令嬢ともなれば、国の要請を無視して学園を欠席するのは難しい。
唯一認められているのは他の生徒に著しく迷惑をかける疾患、呪いなどがある場合だ。
公爵家お抱えの治癒魔法チームにかかれば、そんなものはないに等しかった。
アリスフィアは言っていた。
あまり悪い子だと呪われる。
(つまり悪い子になれば呪いを受けられるはず!)
無作法者の下位貴族令嬢がこちらが話しかけるより先に声をかけてきた時、いつもなら諌める程度で済ませるのに頭からワインをかけたり。
言い寄る貴族を「豚のほうがお似合いよ」と追い返したり。
(何故かイザベラが豚と行為を行わせたという噂に発展した)
紳士たちの賭場で時間を操る魔法で賭場自体を潰したり。
対立派閥の悪徳貴族を派手に茶会で煽った後、処刑にまで追い込んだり。
その復讐にやってきた息子達を返り討ちにし、縛り上げて中央広場に晒したり。
他家の貴族主催のお茶会の当日欠席を繰り返したり。
ちょっと粉をかけたら寄ってきた人の良い侯爵にさんざん貢がせて破滅に追い込んだり。
(破滅した後匿名の寄付金で救っておいた)
他にも後遺症が残らない程度の叩く蹴る忖度させるを繰り返し、ついに世間では悪役令嬢だの、真っ黒なホワイト嬢だの二つ名がつくようになった。
「もう限界よ! あの子を何とかしてちょうだい!」
夜のホワイト公の執務室。
父、ロードライト・ホワイト公爵の後妻、メイベリー・ホワイト夫人が喚いている。
メイベリーはまだ子を成していないため精神的に余裕がなく、前妻を思い出させる容姿のイザベラを忌み嫌っていた。
悪行の限りをつくしたイザベラの関係は更に悪化していた。
「あの子も母を早くに失い、難しい年頃なのだ……すまないが見守ってやってくれないか」
「いつもそればっかり! もう言い訳は聞き飽きましたわ!」
父のため息を、イザベラはドアの隙間から聞いていた。
数日後、狙い通り、イザベラの手の甲には呪いのあざが浮かび上がった。
(入学までに、何とか間に合ったわね)
イザベラの胸中は複雑だった。
(きっとお義母様の仕業よ。 ……きっとそうよ)
いつも優しく見守ってくれる父が、自分を見捨てたのなら。
悲しいことなのねと、初めてクララに少しだけ共感した。




