千文字の安堵
前回のあらすじ。
ファリアは呪いについて調べるため、カテジナさんは従姉を探すため、
二人は仲間になったようです。
イザベラ・ホワイト公爵令嬢の部屋の窓辺に、
ファリアの使い魔である黒猫が手紙を携えてやってきた。
事前に打ち合わせたいくつかの符号と紋章から、
カテジナ・ルースルート男爵令嬢が
協力者となったと読み取るイザベラ。
(やっとか……)
イザベラは安堵のため息を漏らす。
カテジナは、ファリアが思っているよりも
ずっとファリアのことを大事に思っているようだった。
おそらく従姉殿の雰囲気に、
どこかファリアが似ているせいだろう。
(私から見れば、ふふ、とんでもない!
あの方をどこぞの無能貴族令嬢と比べるなど、笑えてしまうわ)
カテジナはイザベラの時間遡行を持ってしても厄介な存在だった。
イザベラがファリアとひとたび接触すれば、
彼女はファリアを危険から守るために、
いつもイザベラの就寝中、あるいは夜道、
ある時は入浴中、ありとあらゆる無防備な時間帯に殺しに現れた。
ファリアがケーシィの二の舞になることを極度に恐れていたのだろう。
時間を巻き戻しても、見えない敵を常に警戒するなど現実的ではなかった。
あまりに鉄壁、あまりに隙がなく、
情に厚いが、同時に目的のためなら冷酷無比な狂戦士。
それがファリアの知らない、イザベラから見たカテジナという女だった。
だからイザベラは、ファリアがそうか弱い人間でなく、
背中を預けるに相応しい人間だと印象づけさせた。
社交界から迫害を受けているとあれば、
きっかけの前の時間まで戻り、
情報屋まがいの趣味を磨かせ、価値を与えさせた。
ファリアが口を割らなければ糾弾されるような試練を与え、
それを乗り越える様を周囲に見せた。
仲間を作らせ、上の階級の人間とも関わらせ、
男爵位の家出身であるにも関わらず、地道に発言力を持たせた。
リボンに可能な限りの加護を与え、
イザベラがファリアの絶対的な味方であることを強調した。
魔法だって、ちょっと、いや大分下手くそだけど、
少なくともクラス最下位などの悲惨な成績ではなくなったはずだ。
(あの方は一番得意な魔法をお使いにならないから
苦労するわ)
結果、カテジナは呪いと対峙するファリアに
協力することとなった。
無数の遡行、無数の修正、無数の実験、無数の惨劇を繰り返し、
ようやく彼女は大きな成果の一つにたどり着いた。
(さすがに疲れたわね。 目が霞むわ……)
それはどこまでも高潔な悪役に許された、
ほんの一時の完全な安眠だった。
その傍らに、ファリアの黒猫の後をつけ、
不可視となったカテジナが佇んでいた。
仲間なら疑わないなんてルールはこの世にはないのですわ~~~~~~~!!!!




