千文字の迷い
前回のあらすじ
偵察のスペシャリストのカテジナは、
実は幼馴染のケーシィが行方不明になってる事をファリアに教えてくれました。
カテジナを巻き込むべきか。
カテジナの話から数分が経過した。
彼女は私を信頼してくれている。
私は千文字以上語れない状況にある。
犯罪の告発をするなら、多くの書類や対話が必要だ。
だからカテジナは不法侵入という犯罪の告白ができた。
イザベラ様の時間遡行ほどではないが、
偵察に長けた味方を得られることは魅力的に見えた。
幼馴染を助けたい気持ちも理解できる。
だがケーシィの話から、私にはある仮説が思い浮かんでいた。
神聖院筋の誰か、または組織全体が、
呪いを利用して何らかの犯罪行為を行っている可能性。
それが多くの貴族達にとって都合が良いことである可能性。
更にカテジナは呪われておらず、
私やイザベラ様と十全に話せるわけではない。
得た情報をどれだけ正確に伝えられるか。
私は落とし穴に落ちるカテジナを手元のスケッチブックに描いた。
「危ないって心配してくれてる?」
何度もうなずく。
「あのねえ、あんたの方がよっぽど心配だっての。
もしファリアも消えちゃったら、私は嫌だよ……」
ああ、これは断れない。
『はい』
カテジナは目をまんまるに見開いてぎょっとしている。
「それ、魔力を通すと音が鳴る……?」
安っぽいブローチ型の、ひと昔前に流行していた魔法玩具だ。
一度使うと上書き不能、廃れてしまって入手困難な代物だ。
私はイザベラ様に3つ渡され、『はい』『いいえ』『わからない』を吹き込んだ。
イザベラ様は『入れ』の他にもいくつか持っているらしい。
イザベラ様自身の声で返答がないと使用人がドアを開けたがらないそうだ。
イザベラ様の実験記録によると、この玩具を使って保存した声は、
保存時を除いて千文字のカウント外となるそうだ。
自身の魔力は機能を起動するだけで、
実際に動作するのは玩具の製作者の魔力だからだろう、
とイザベラ様は仰っていた。
チープな玩具を手に真面目に推察する完璧超人は大分面白かったが、
そう言ったら彼女は憤慨していた。
学園生活はこれで乗り切ろうと思っていたが、
ケーシィの話を聞くとそうも言っていられなくなった。
千文字縛りは、犯罪者に対し無力な存在の証でもある。
抜け道を首謀者に知られると、警戒されるかもしれない。
――いつかの時間軸では、この会話を聞いていた令嬢によって
カテジナとファリアの命は徹底的に弄ばれ奪われた。
丁寧に可能性を取り除かれた今、昼休みは静かに過ぎていった。
ファリアのオーロラ色のリボンは、静かに魔力を帯びた輝きを放っていた。
時間遡行も壁抜け透明人間魔法も全部一人に持たせたら楽に解決できるんではなくて~~~~~~~~?????????
それだとつまらないか。それもそうですわね。




