39
「?お父さん、どう言う事?」
俺の台詞に驚いた獣人達を見て首を傾げるアリサに説明してやる事にした。下手すりゃこれから起こる事態に巻き込まれるからだ。
「ん?ああ、こいつ等も俺達と同じ奴隷の子孫なんだよ。そうだろ?おめぇさん達」
「はい。俺達の祖先はアルビエル聖皇国の鉱山奴隷でした」
「で、ニールさん達と西へと逃亡中に別れて南に向かった獣人達の子孫って訳だ」
「へ~よく解ったね、お父さん」
「あ~、先ず名前が二文字って所だな。アルビエルじゃ獣人は特に差別されていて奴隷は名前に二文字以上使うのが禁止されてんだ。そしてうちのモルクレイもだがこいつ等の家名も古いアルビエルの言葉で『狼の何番』とかそう言う意味なんだよ。うちの祖先もモルクレイの後に数字を意味する言葉が付いてたらしいがそれだと長過ぎるし、何より解かる奴には解るからってんで取っ払ったって訳だ」
「よ、よくご存じで・・・・・」
「まあな、爺さんから『昔話』を聞かされた時に色々と調べたんでな・・・『敵』の事は有る程度は知っておいた方がいい、そうだろ?」
「仰る通りです」
アリサから感心する獣人達へと話し相手を変えた。情報の擦り合わせは大事だからな。
「お前等は何で家名を変えなかったんだ?西側ならともかく東側じゃ生き難かっただろうに」
「まぁ俺達は山裾の深い森の中の隠れ里に住んでまして外部からの接触は殆ど無いんですわ。それと家名を変えなかったのは忘れないためです」
「忘れない?何をだ?」
「先ず何をおいても助けて頂いた『恩』を。そして虐げられ続けた『恨み』をです。俺達獣人は例え世代を超えたとしても『恩』と『怨』は決して忘れねぇ。そして何時か必ず返す、そう言う生き方しか出来ねぇんですわ」
「成程ねぇ・・・それが今、お前達の世代って訳か・・・・・」
「はい。ゴードンさん達も関係者って事でお伝えしておきます。この夏辺りからアルビエルの動きが如何もきな臭せぇ・・・騎士団の結成、魔術師の募集、ラマ―ドとの同盟に加え国内及び周辺国での祭司の募集・・・いくらなんでも短期間でここまで動いたら誰でも解かるってもんで、里長から俺等が抜擢されたって訳です」
「戦か・・・それをニールさんに伝えるためにここまで来たと?」
「はい。まぁそれ以外に戦闘面でもお力になれればと思っております。それで申し訳ないんですが直ぐにでもここを発ちたいと」
「はぁ・・・お前等ニールさんに会うってんなら目的地はツォアルだろ?また行き倒れてぇのか?ここから一番近いゲベルでも歩きじゃ半日は掛かんだぞ」
もう日も落ちたと言うのに直ぐに発つとかこいつら馬鹿だろ。
「心配してくれるのはありがてぇんですが、俺等は夜目も利きますし、夜行性の魔物とか狩れば飯と金はなんとかなるんで」
さてはこいつ等、この国の事なんにも調べねぇ出来やがったな?
「はぁ・・・ねぇよ」
「は?」
やっぱり馬鹿だこいつ等。仕方ねぇ、これも何かの縁だし力になってやるか。
「はぁ・・・あのな、夜行性所か魔物自体がほぼ居ねぇんだよこの国にゃ。ここまで歩いて来て気が付かなかったのか?それに、魔物の皮なんか売った所で戴した金にゃならねぇんだよ」
「・・・・・え?そ、そんな訳ねぇでしょ」
「お前等東の常識はこの国じゃ通用しねぇよ。この国じゃ魔物の討伐は兵士の仕事で冒険者なんて殆どいねぇ。大体食用にホーンラビットやブラウンボアにリザードマンまで飼育してんだぞ、その辺で狩った魔物の肉や皮を態々買い取る必要なんてねぇんだよ」
「「「はあっ?!マジっすか?!」」」
「どどど、如何すんだよギイ!」
「力になる所か迷惑かける事になんぞ?!」
「いや、どうするったってよ・・・・・」
「やっぱダビラで稼いだ方が良かったじゃん!」
俺が現実を教えてやると慌てて騒ぎ出しやがったので一喝してやった。
「喧しい!お前等落ち着け!いいか、取り敢えずここで二日間働いていけ。配達ついでにゲベルまでなら送ってやるし多少だが給金も払ってやる。その後はゲベルで荷運とかの日雇いの仕事でもしながらしっかりこの国の常識を学んでニールさんの情報を集めろ。あの人は魔導車でこの国中を走り回ってるから捕まえるのは大変だぞ」
「いや、しかし・・・・・」
「俺達だってニールさんには『恩』がある。だからお前達の力になるのはおかしい事じゃねぇ、だろ?」
「・・・・・解りました、お世話になります」
「「有難う御座います」」
これ以上迷惑はかけられないと渋る彼等を説き伏せて、うちで働かせる事にした。そこらで野垂れ死んだら寝覚めが悪いじゃねぇか。
「うちは朝は早えぇぞ。部屋に案内するから今日はさっさと寝ちまえ」
「「「はい!」」」
そんなこんなで獣人三人がうちで働く事になった訳だが・・・こいつ等使えるのかね?まぁ適当に力仕事でもさせるしかねぇか。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




