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 忙しい日々が過ぎて行き、冬も近付いて来た或る日の事。

 そろそろ冬用の上着を引っ張り出さないとな、なんて思いながら商業組合の入り口を潜った時だった。


「あっ!オルト様!申し訳ありませんがこちらへ!」


「はい?え?なに?何ですか?!」


 いつもお世話になっている受付のお姉さんに声を掛けられて半ば強引に腕を引かれて奥の応接室へと連れて行かれた。


「申し訳ありませんが今直ぐこちらをお読み下さい」


 そう言って手渡された封筒の裏面を見てぎょっと目を見開いた。

 そこには見た事の有ると言うか、この国の国民なら誰もが知っている紋章の封蝋がされていた。


「・・・あ、あの、これって・・・・・」


「はい、アンモン伯爵様からの書簡になります」


 何でアバタ領領主のアンモン様から僕に?夏の旅行で領主館の見学をしたけど、だからって直接手紙を出してくるか?


「アンモン様からの指示で組合員立会いの下、書簡を検めて頂いた後にこちらを直接本人にお渡しするようにと仰せ付かってます」


 困惑する僕に受付のお姉さんはそう続けて細長い箱をテーブルの上に置いた。


 組合員立会いの下って事は、受け取っていないとか読んでないとか言い逃れと言うか逃げられない訳で・・・・・震える手で封蝋を外して中の手紙を深呼吸をしてからゆっくりと目を通した。


 で、手紙の内容は簡単な挨拶から始まって次に謝罪の言葉が綴られていた。


『ニール殿から二年以内にうちの領民になると聞いてね、彼が気に掛けている若者に私も興味が沸いて申し訳ないが少々調べさせて貰った』


 ニールさ~ん!気に掛けてくれるのは有難いけど、なんで領主様に話しちゃってんの?!アンモン様に謝罪させちゃいましたよ?!一般人の僕には刺激が強過ぎるんですけど?!


『まあ、その中で少々悪い噂を聞いてね、ああ悪い噂と言うのは君の事ではないよ。でだ、微力ながら私も力になろうと思い贈り物をさせて貰う事にした。外出時には必ず、肌身離さず持ち歩くように』


 贈り物ってあれかとテーブルの上に置かれた細長い箱にちらりと目を向けてから手紙の続きを読んだ。微力とか謙遜が過ぎるだろ。


 それに悪い噂を聞いた伯爵様からの贈り物とか、必ず持ち歩けとか、嫌な予感しかしないんですけど・・・・・


『モルクレイ牧場の件も彼から聞いた。彼の牧場は建国当初から我が領地の、この国の発展に長らく寄与してくれた。私からもゴタード商会に口添えをさせて貰ったので無くなる事は無いと思うので安心してくれたまえ。未来の我が臣民へ、ジェラール・アンモン』


 手紙を読み終えて封筒の中に仕舞い、無くさないように上着の内ポケットに入れるとお姉さんが細長い箱を僕の方へと押し出してきて、僕はそれを受け取り蓋を開けてまた目を見開いた。


「・・・あ、あの・・・これって・・・・・」


「あ・・・アンモン家の紋章・・・・・」


 箱の中に入っていたのは銀色の鎖の先に付いた硬貨のような丸い金属の中に紋章が描かれている首輪だった。


「あの、これを常に身に着けているようにと書かれていたんですけど・・・・・」


「・・・・・アンモン家の庇護を得た・・・と言う解釈で間違いないかと」


「そう、ですよね・・・・・」


「・・・こっ、これはとても名誉な事ですよ!アンモン家の紋章を下賜された方なんて建国以来初めてなんじゃないですか?!少なくとも私は聞いた事が有りません!」


 興奮して捲し立てて来たお姉さんを掌を前に出して制して頼み事をした。


「済みません、御礼状を書きたいのですけど作法に疎いので教えて頂けますか?」


「は、はい!直ぐにご用意致します!」


 僕のお願いに興奮したまま答えてくれたお姉さんは少し乱暴に席を立って応接室から出て行った。


「・・・はぁ・・・なんだかなぁ・・・・・」


 大きく溜息を吐いてから不安を押し殺すように呟いてから頂いた首輪を首から下げて紋章をシャツの中に仕舞った。


「お待たせしました!」


 元気な声と共に部屋に入って来たお姉さんは返事を書くための紙とかと一緒にお茶を持って来てくれた。


 軽く息を切らしたお姉さんに、そんなに急がなくてもいいのにと言う言葉を飲み込んでお礼を言い、二人でお茶を飲んで一息ついてからアンモン様へのお礼状をお姉さんに教わりながら書いて配達もお願いした。


 貴族特有の言い回しとかめんどくさいなぁ・・・・・


「ありがとう御座いました、助かりましたよ」


「いえ、私もいい経験をさせて貰いましたし・・・それで、その~・・・よ、よかったら今夜食事でもっ!」


 お貴族様への手紙の作法のお礼を言って頭を下げたら食事に誘われた。


 今夜って事はあれだよね?告白とかの類だよね?ん~この人なら教えても大丈夫かな?変に期待させちゃ悪いし。


「あ~・・・すみません、僕婚約者がいるんですけど、それでもよかったら」


「ええ~!そんなぁ・・・担当になった時から『いいな』って思ってたのに・・・・・」


 担当になった時ってもう二年位前だよね?僕って本当にモテるのかな?なんだかまだ信じられないや。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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