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なんだか同時に色々決まったり衝撃の事実を知って混乱したけどアリサさんとの婚約を認めて貰って良かったと胸を撫で下ろした。
お土産のチーズとツクダニを肴に宴会を始めた両親を放置して自室に戻りアリサさんに送る手紙を書いた。
開けて翌日、朝食の後にリサに乗って街へと繰り出した。
目的は商業組合へ手紙の配送依頼とゴタード商会の道具屋での買い物だ。
「はい、確かに承りました」
「宜しくお願いします」
受付で配達をお願いして依頼料を払い、少なくなってきた残金を見て時間に余裕が出来たら仕事をしなくちゃなと溜息を吐いた。
王都で一番大きなゴタード商会の道具屋へと着き、店内の案内板を見て工具売り場へと向かう。
どうせ買うなら良い物が欲しくて一通り揃えるのに幾ら掛かるのか知っておきたかったからだ。
「・・・マジかよ・・・・・」
整然と並ぶ工具の棚を見て目玉が飛び出るかと思った。
一般家庭で使う売れ筋商品はそこそこの値段の物が纏めて売られていたが本職の整備士が使う専用工具は一線を画す値段が付けられていたんだ。
よく使う大きさのレンチを手に取り値札を見る。そして少し離れた所に置いてある様々な大きさのレンチが纏められている物の値札を見て溜息を吐いた。
「・・・これ一本であれが買えるんだけど・・・・・」
特にスパナ、レンチ、ドライバーは整備には必要な工具で纏まっている物なら五分の一以下の金額で揃えられる。
でも僕は何一つ買う事無く売り場に背を向け商業組合へと踵を返した。
仕事だ、予習も大事だけど夏休みの残りで可能な限り稼いで就職までに良い物を揃えるんだ!
その日から昼間は仕事、夜は勉強の日々を過ごし、あっと言う間に学生生活最後の夏休みは終わった。
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「マモン領都経由マハン王国方面行き間も無く発車致します」
ハビラ王国王都北の衛星都市から出ているマハン王国との国境前まで行く定期便の魔導車内で私は溜息を吐いた。
「ハァ・・・戴した成果無しか・・・・・」
族長から受けた表の仕事はハビラ王国内の種族状況と『シルフライン』を名乗る者の調査だった。
「まさか人族以外の純血種が殆ど居ないなんて思いもしなかったわ」
しかも純血種は貴族だけでシルフラインを名乗る者は人族との混血とか有り得ないわ。
本来精霊名の付いた種族名を混血者が名乗る事はエルフの常識では許されない事だ。
だから族長からの裏の指示通り彼等を狙った。
「・・・・・あの女一体者なのよ」
深夜に隠密を掛けて完全に気配は消していた。
念には念を入れて100m以上離れた場所から黒塗りの矢に風魔法で速度上げて背後から狙ったのに素手で受け止められるなんてどんな達人よ。
「はぁ・・・どう説明しても信じて貰えそうにないわよね・・・・・」
溜息を吐いて窓の外に目をやるとほぼ同時に何かが物凄い勢いで追い越して行ってぎょっとした。
「なっ?!あっ、あいつ等・・・・・」
ほんの一瞬だけど確かに真っ赤な長い髪が視界に移ってシルフラインの二人組だと確信した。
「・・・行先はマモン領よね・・・・・」
あんな調子で国内を移動されたら追い掛けて狙うなんて不可能だ、だから自宅のあるツォアルで待ち伏せたんだけど・・・・・
「・・・まぁ、やるにしても私一人じゃ無理か・・・・・」
取り敢えず一度族長に報告してからねと、途中で降りる事も無く国境前の町へと向かった。
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マモン領の鉱山労働者が住む町へと向かった俺達はとある建物へと入り声を掛けた。
「お~い!モンド!ジェイ!居るか!」
「ん~?・・・に、ニールさん!アマンダさん!良く来てくださいました!どうぞ奥へ!親父!!ニールさんとアマンダさんがいらしたぞ!」
「なにぃ?!おお・・・またお会い出来る日が来るとは・・・・・」
「ははは・・・大袈裟だって。まぁ元気そうでよかったよ、今日は牧場の件で話に来たんだ」
モンドはマモン王国だった時に奴隷として強制労働させられていた人達の内の一人でジェイはその息子だ。
今日ここに来たのはモルクレイ牧場がゴタードに譲渡される事になった事やその経緯を説明しに来た。
「態々知らせに来て下さって有難う御座います」
「お気遣い有難う御座います」
「宜しかったら他の者達にもお会いして頂けますか?」
「皆喜びますし、励みになりますから」
この町の労働者達は皆元奴隷とその子孫で・・・まぁ俺達の正体を知っている訳で、俺達の事を崇めていると言うかそんな感じでだな・・・・・
「あ~・・・如何するアマンダ?」
「ん?まあ、偶にはいいんじゃない?」
「おお!アマンダ様感謝致します。ジェイ!宴の用意だ!皆に声かけて来い!」
「おう!」
と言う訳でモンドの案内で酒場に連れて行かれて大勢に囲まれて一晩中馬鹿騒ぎに付き合わされたのだった。
アマンダ~お前なら断ってくれると信じてたのに、何でこう言う時だけ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




