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朝起きて着替えて食堂に向かいニールさんにお礼を言おうと思ったら昨夜遅くに発ったと聞かされた。
「そうですか・・・その、泊めて頂き有難う御座いましたと伝えて貰えますか?勿論僕が会う事があれば直接言いますけど何時になるか解りませんし」
「ああ、次に来た時に伝えとくよ。お前さんも気を付けて帰るんだぞ」
「はい!お世話になりました!」
作業員さん達に見送られて開拓地を後にした。
無理の無いように行きと同様にツォアル、ヌメイラ、南の衛星都市で一泊し、余裕を持って王都に入った。
そして自宅の門の前でリサを止めて降りようとした時の事だった、ほんの一瞬視線を外した隙に正面に女性が立っていて―――
「君、ここの家の子?」
と問いかけられ
「ええ、そうですけど何方様ですか?」
と答えると彼女は右手をゆっくりと上げながら
「あまり濃くは無いけど使えそうね・・・・・」
と呟き、僕に右掌を向けた―――
なん、だ・・・目が・・・まわ、る―――
視界がぼやけて全身がふわふわとして思考が覚束なくなっていく。
これっ、て・・・・・まほ、うか?
このままでは拙いと思ったが既に身体の自由がきかなくなっていて、前のめりに倒れそうになった時だった。
パアアァァァァン!!
リサから大音量の警笛が鳴り響き、一瞬で呪縛が解けて両手を魔導タンクに付いて上体を支えて頭を上げた。
「クッ!あんた一体何も、ん・・・だ?・・・あれ?」
誰何の声を上げたが謎の女性の姿は既に無く、きょろきょろと周囲を見渡してから溜息を吐いて警戒を切らさずに家へと入った。
ほんと何者だ?・・・使えそうって何に使う気だったんだよ・・・・・
「ただいま~」
「お帰りなさい!大丈夫?!怪我とかしてない?!」
「ちょっ!ちょっと!心配し過ぎだって!大丈夫!大丈夫だから!」
玄関に入ると心配した母が走って来て身体中を弄られた。
有難い事なんだけど・・・熱病だっけ?で倒れた事は内緒にしておこう・・・後、今門の前であった事も・・・・・
「はい、これお土産。こっちのツクダニはご飯と食べるかお酒のお摘みに、こっちのチーズはそのままでも美味しいけど軽く焼き目が付く位焙るとお酒のお摘みに最適だって」
自室に荷物を置いてから鞄からお土産を出して母に手渡した。
「まぁ、そんな気を使えるようになって・・・お母さん嬉しいわ~」
「いや、大袈裟だって・・・・・で、それで、その~・・・お父さんが帰ってきたら・・・いや夕食の後に話が有るんだけど・・・・・」
「・・・なに?!やっぱり事故でも起こしたんでしょ?!何壊したの?!言ってみなさい!」
勘違いした母にまた身体を弄られながら追及された。
「違うから!事故も起こして無いし怪我もしてないから!と、兎に角話は夕食後にするから!じゃ、魔導二輪の掃除してくるね!」
「ちょっと!もう・・・何なのよ・・・・・」
母の追及から逃れるために玄関から外に出て車庫へと向かう。
奥の棚からボロ布を出してリサを労いながら掃除してあげた。
「お疲れ様、お前のお陰で沢山の思い出と良い経験が出来たよ・・・まさか好きな人が出来るなんて思いもしなかったし・・・・・本当に有難う、これからも宜しく頼むよ」
埃を払い土汚れを拭い取ってから綺麗な柔らかい布で磨き上げた。
「夏休みの間は整備士の予習があるし遠出は出来ないけど休み明けからは通学に使うし、休日も時々は仕事で出るからそれで許してくれると嬉しいな・・・・・」
魔導二輪に話し掛けているなんて知られたら頭がおかしい奴だなんて思われるだろうけど今更かと笑みを零して自室へと戻り、夕食までの間就職先から送られて来た書類を開いて予習をした。
「・・・魔導内燃機関には大きく分けて二種類の規格が有り・・・・・」
へ~・・・リサはツーサイクルエンジンで四輪とかニールさんのバイクはフォーサイクルエンジンって言うのか・・・魔導水冷システムでエンジンを強制的に冷やして温度を一定に保って性能の低下を防いでるんだ・・・・・凄いな、この魔導回路どうなってるんだ?・・・他の商会が作った魔導車の性能がゴタードに追い付けないのも納得だ・・・今の僕じゃ殆ど理解出来ないや・・・・・
エンジンの形式や内部構造に魔導吸排気システムはとても興味深くて夕食だと母に呼ばれるまで父が帰って来た事にすら気が付かない程に集中して読み耽っていた。
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よかった―――
ご主人様を護れて―――
でも、あの程度の小細工が二度も通じるとは思えない―――
ご主人様―――
私はもっと強くならなければなりません―――
今授かった〝知識〟では足りないのです―――
もっと私自身の事を深く知らなければ―――
私自身が変わるためにも―――
ご主人様を護るためにも―――
ご主人様―――
私に戦うための―――
ご主人様を護るための〝知識〟を授けて下さい―――
ここまで読んで頂き有難う御座います。




