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「俺は仕事上国内を行ったり来たりするから出力の高い方が楽なんだよ、こいつも乗せないとだし」
「私的には四輪にして欲しいんだけど、ニールはバイク馬鹿だからもう諦めたわ」
「仕方ないだろ、バイク乗りってのはそう言う生き物なんだよ」
二人のやり取りを見て凄く羨ましくてアリサさんの姿が頭を過りちょっと寂しい気持ちになった。
そしてそれと同時にゴードンさんの話が頭を過る。
『黒目黒髪の男と赤目赤髪の女が車輪が二つ付いた真っ黒い魔導具に乗って現れて奴隷達を解放し、マモン王家を一人とアルバハン公爵家を残して王家に阿る者全てを蹴散らした』
黒目黒髪に赤目赤髪、そして黒い魔導二輪・・・偶然なのか?しかもゴタードの上層部で国内を回っている・・・当然貴族や王家とも繋がりは有るだろう・・・・・
気にはなるけど直接聞いた所で否定されて終わりだと思う。
だから少し鎌をかけてみる事にした。
「あ、そうそう『モルクレイ牧場』って知ってます?僕そこの娘さんと婚約したんですよ。まぁ、旅の途中だから僕の両親に話すのは帰ってからになるんですけど」
「・・・へぇ、モルクレイの・・・・・」
「あら、おめでとう。今の経営者には会った事は無いけど―――」
「あ~・・・あそこは子供が娘一人だと思ったけど、君が婿入りするのかな?」
「・・・いえ、牧場はゴタードに譲渡してゲベルにある奥さんの実家を継ぐそうです」
怪しい・・・ニールさんがアマンダさんの台詞を遮った。
しかもアマンダさんは『今の経営者には』って言った。
その後に続く言葉は『前の経営者』を意味する言葉の筈だ。
そしてそれは二十年以上前になる。
彼等が他種族との混血だとしてもゴタード商会の傘下ではない一牧場の家族構成まで詳しく知っている事にも違和感を覚えた。
僕の中で疑惑が確信へと変わっていく。
この二人があの物語の主人公で、ニールさんが天空神を倒し天神教を衰退させた張本人で、ジュイダ王国、マモン王国、タイラ王国、ハルハ王国の四ヶ国を一つに纏めてハビラ王国を建国した人・・・いや『神様』なんだと。
そしてゴタード商会を設立してからはこの国を陰ながら守りつつ国民の生活を支えているのだろう。
「そうか・・・俺からもゲベルの方に通達を出しておくよ。交渉時に買い叩く事の無いようにってな」
「ありがとう御座います。その、出来れば名前だけでも残して貰えませんか?僕にとっては思い出深いので無くなるのはちょっと悲しいんです・・・・・」
「ああ、そうだな・・・解かった、そのように指示しておくよ」
一瞬だけどニールさんが悲しげな顔をした。
僕につられた訳じゃない、彼にとってもゴードンさんのお爺さんとの思い出の地なのかもしれない。
僕はそれ以上追及するような真似はしなかった。
その後は他愛のない話で盛り上がり、作業員さん達に婚約した事でいじられたりと楽しい時間を過ごして就寝した。
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こんなに楽しい夕食は久しぶりな気がした。
「さて・・・行くぞアマンダ」
名残惜しいが席を立ち食堂に背を向ける。
「なによ、泊って行くんじゃなかったの?」
「そうですよ、何もこんな遅くに出る事無いじゃないですか」
「泊って行って下さいよ、事故でもされたらたまったもんじゃない」
「いや、急ぎの仕事を忘れててね。それじゃまた」
アマンダや作業員達が引き止めて来たがやる事が増えたしなと作業員達に別れを告げる。
こいつ等とも何時まで顔を合わせられるのだろうか、何時かはこの国を出る事になるのだろうなと目を伏せた。
「待ってよニール・・・ちょっと口を滑らせちゃったのは悪かったわよ・・・・・」
「別に気にしちゃいないさ・・・俺だって何時までもこの国に居られると思っちゃいない。俺達がエルフの混血だって設定もそろそろ限界だしな」
「ぅ・・・そ、そう、よね・・・・・」
項垂れるアマンダの頭に手を乗せてやる。
こいつもここでの生活が楽しかったから離れる日も近いと聞かされれば落ち込むのも無理はない。
宿舎の隣に止めた俺の分体のバイク『ヘルファイア』の隣に並ぶ『スレイプニール』のシートに手を当てて声を掛けた。
「心配しなくてもお前のご主人様をどうこうする気は無いよ。だから末永く使えてやってくれ」
お父様、お母様、有難う御座います―――
「礼なんて要らないさ、それじゃな」
「あなたの成長を楽しみにしているわ」
精霊王なのか付喪神なのかは解らないが俺達の同族となった『スレイプニール』に別れを告げて南へと向かった。
「あら?ツォアルに戻るんじゃないの?」
「いや、先ずはゲベルに牧場の件を伝えに行く。戻る形になっちまうがその後にツォアルでデクスに報告、そしてマモンの鉱山だ」
「ふぅ~ん・・・相変わらずお節介だ事」
「いいだろ、どうせなら出来るだけの事はしておきたいじゃん」
「ま、解るけどね」
「ま、ここまででかい国になったんだ、出て行ったとしても幾らでも情報は手に入るさ」
「で、いざとなったらマモンの時みたいにやればいいと?」
「ああ、そうだ。が、その前にアルビエルだな」
「そうね、再起出来ない位にやっちゃいましょ」
「ああ、牙を剝くなら容赦はしないさ」
一度痛い目を見てなお繰り返すと言うなら容赦はしないとヘルメットの中でニヤリと笑った。
二度も見逃してやる程俺は優しかねぇぞ!大司教アレミア・ハイメル!!
ここまで読んで頂き有難う御座います。




