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狂乱の一夜が明けた翌朝、朝食後にお土産を受け取って新しい家族に見送られて王都へと向かう。
二日酔いもしないで日の出前から仕事してたらしいけど、その辺はドワーフの血なのかなぁ・・・・・
「気を付けて帰ってね。手紙待ってるから」
「ちゃんと休憩取るんだぞ」
「ご両親に宜しくね」
「はい。それじゃ失礼します!」
街道を北へとリサを走らせる。ゲベルを通り超えて開拓地へ。
当初の予定ではゲベルから西へと向かいリザードマンの養殖場やお米を作っている田園地帯、そして王都西の衛星都市を回って王都に入るつもりだったが止めた。
婚約したとか両親に報告とか相談する事が出来たし、一刻も早く一人前の整備士になるための勉強を始めたいからだ。
ちゃんと休憩を取りながら急いで開拓地へと向かう。身体の水分が足りなくなるとあんな事になるなんて知らなかった。
広くなった街道でロードローラーと擦れ違い、夕方近くに開拓地に着くと大型魔導四輪の数が増えていて驚いた。と言うか開拓地が物凄く広がっていた。
凄く力入れてるんだなと感心しながら開拓地に乗り入れて前回と同様に宿舎の横にリサを止めに行くと見た事のある魔導二輪が止まっていた。
「これって・・・やっぱりそうだ!これってニールさんのだ!」
特徴のある炎の絵が描かれた魔導タンクや前後のフェンダーとサイドカバーは間違いなくニールさんの物に見えた。
「おおぉ・・・すげぇ、四気筒の魔導内燃機関の魔導二輪なんて初めて見た・・・・・」
僕が知ってる限り二気筒以上の魔導内燃機関の魔導二輪は無かった筈だと、リサの物より遥かに巨大な魔導内燃機関を覗き込みながら唸り声を上げた。
「う~ん、アメリカンもかっこいいよな~・・・でも僕の体格だと似合わないんだよな・・・・・おっと、野営の許可貰いに行かないと」
日が落ちる前にテントを張らないとと、許可を貰うために宿舎に入ると特徴的な赤と黒の髪が目に入った。
「すみませ~ん、またテントを・・・あ、ニールさんにアマンダさん!」
「ん?おおっ!オルト君じゃないか!」
「あら意外と早い再会だったわね」
思いがけない再会に頬を綻ばせながら挨拶を交わし、野営の許可を取りに来た事を告げると宿舎の空いてる部屋を使っていいと言われた。
流石にそれはと遠慮すると他の作業員さん達からニールさんとアマンダさんはゴタード商会の偉い人だから断るのは失礼だと言われて驚いた。
僕はお言葉に甘えて宿舎の一室を借りて其処へ荷物を置いてお土産を持って食堂に入った。
「これ、お世話になったお礼に買って来ました、良かったら皆さんで召し上がって下さい」
「へぇ、兄ちゃん若いのにしっかりしてるじゃねぇか」
料理をしているおじさんにお土産を渡すとおじさんは感心して褒めてくれた。
そしてニールさんに夕食にも誘われて、恐縮しながら作業員の皆さんも交えての食事となった。
「へぇ、オルト君もゴタードの一員になるのか」
「は、はい」
「王都南の整備場ってハルトおじさんの所よね?」
「ああ。オルト君、おやっさんは王都で一、二を争う腕の持ち主だからしっかり学ぶといいよ」
「は、はい、頑張ります」
ゴタードの偉い人と聞かされてとても緊張しながら受け答えをしていて夕食の味なんてさっぱり解らなかった。
「あの・・・ニールさんのバイクって市販車じゃないんですよね?」
「ん?ああ、あれは俺のオリジナル~・・・まぁ俺だけの一台って奴だ」
気になったので聞いてみたけどやっぱり市販車じゃないんだ・・・自分だけの一台を作るのって一体幾ら掛かるんだろ・・・・・
「はぁ~・・・凄いなぁ・・・あれって僕のRS-01とどれ位の差が有るんですか?」
「あ~エンジン・・・魔導内燃機関の基準で排気量って言うのが有るんだが、君のが250ccで俺のは1500㏄、馬力・・・出力で言うと君のが40㎰位で俺のが150ps位になるかな。魔導内燃機関の形式とか色々違うから単純には比較出来ないけど」
「・・・あれって四輪の魔導内燃機関と同じ物ですよね?二輪に四輪の魔導内燃機関って必要なんですか?僕には危険なだけな気がするんですけど・・・・・」
「正確には四輪用って訳じゃないんだが・・・そうだな、必要ではないとも言える。でもな、危険な物になるかどうかはそれを扱う者による。刃物が良い例だろ、包丁だって人は殺せる。違うかい?」
「違いません・・・・・」
「二輪とか四輪とか大型か小型かなんて関係ないんだ、それを扱う者が悪用すればどんな物でも危険な物になるって訳だ」
「オルト君、心配しなくても市販車に関しては過剰な性能の物は作らないわ。事故を起こした時の罰則も厳しい物にしているのも抑止の為なのよ」
抑止のために罰則を厳しくしてると言うのも理解出来るんだけど、魔導車が、魔導二輪が好きだから悪評が立つような事になって欲しくないんだよなぁ。
「でもそれはゴタードだけの話ですよね?他の商会が出してる物は如何なんです?」
「ははははは・・・それこそ心配いらないよ。現在他の商会で出している物はうちの劣化品でしかないんだ。小型化はおろか大型化ですら難航していて出力はうちの半分程度しか出せて無い。他商会の大型魔導車なんて見た事無いだろ?実質うちの独占状態なのさ」
「でも、それはあくまで現在の話ですよね?」
「ああ、でも他商会が今のうちに追い付く頃には道路や法の整備が整っているだろうし、馬車を買うよりも魔導車の方が安く済むようになっていると思うよ」
「そこまで見越しての事なんですね?」
「ああ、そうさ。そしてその頃には他商会は採算が合わなくなって撤退してうちの完全独占状態になると俺は踏んでいる」
「えっと、その根拠って有るんですか?」
「うちは腕のいい技術者は特に優遇しているからね。誰だって環境と給金の良い所で働きたいだろ?」
「確かに・・・・・」
ニールさんの言う事は尤もで、他商会の技術者もゴタードに移籍してくる可能性は高いと僕も思った。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




