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好感度が1上がりました


 「あ、アメリアさん」

 「おはようございます。ユーリ様」

 「おはようございます」


 朝の日課を終えて寮の部屋を出たところでバッタリとアメリア嬢に出会った。

 ニッコリ笑顔の彼女に私もつられて笑う。

 アメリア嬢はほわほわしてて空気が柔らかくなる感じがするんだよねぇ。こっちまでほんわかしちゃう。


 「ユーリ様はこれから朝食ですか?」

 「えぇ、アメリアさんも?」

 「はい、目が覚めてしまったので」

 「では、ご一緒にいかがですか?」

 「えっと……いいんですか? ベロニカ様やサフラン様は……」

 「ふたりともまだ寝ているので私一人ですよ。なので、お付き合いいただけると嬉しいです。一人で食べるよりも二人で食べたほうがご飯は美味しいので」

 「えっと、じゃあ、お願いします」

 「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 私たちは連れ立って食堂へと向かった。

 隣を歩くアメリア嬢に私は話を振る。


 「学園には慣れましたか?」

 「街の暮らしと違うところが多くて戸惑っていますが、ユーリ様のおかげでなんとか」

 「ふふ、私は何もしていませんよ」

 「いえ! ユーリ様にはいつも助けていただいてます!」


 この2週間ほど事ある毎にアメリア嬢に気にかけてただけだし、本当に何もしてない。というか彼女が優秀でこちらがしてあげられることがない。

 

 「平民の私に良くしてくださりますし、こうやって声もかけていただいて……」


 しょんぼりと肩を落として立ち止まるアメリア嬢。

 そう。彼女はこの学園では珍しい平民だ。内容までは知らないけど特殊な魔法が使える為に学園への入学を許可され、ここにいる。

 

 『平民』で『特殊な魔法の所持者』。

 

 主人公っぽいなぁと思って様子を見ていたら周りの不穏な動きまで見えてきた。遠巻きにしている人たちとあからさまに嫌味を言う人たちがいるけど、今はまだそれだけだ。やっかみだろう。ほら、平民ってだけで劣ってるって考える残念な思考の持ち主がね。貴族の中にはそういうのが多いからねぇ。

 そもそも識字率が高いんだよね、この国。その中でもアメリア嬢が特別な教育を幼い頃から受けているわけじゃないのに優秀なのはすごく努力してるんだろうなぁと見てて思う。それくらい勤勉なんだよ、彼女。私より勉強できるんじゃないかな。座学は無理……。


 そして、そういう人たち(ざんねんきぞく)を見ているとどうにも気になるのがフレイヤ様だ。

 フレイヤ様が悪役令嬢なのは唯一私が知っているストーリー要素だ。悪役令嬢といえば嫌がらせ。その筆頭だもんね。

 アメリア嬢が主人公だとすると、フレイヤ様との関係が悪くなることを防ぎたいという思惑もある。だから気にかけていたというのも事実。今のところは特にアメリア嬢と関わってはないんだけど。どういったきっかけで関係も持つことになるかわからないし、警戒しないわけにもいかない。

 でもゲーム(それ)とは別に私はこの子がしょんぼりするのを見ていたくない。まだ関係は浅いけど、私はアメリア嬢の笑顔が好きだ。暖かくて心地良い。彼女には笑っていてほしいと思う。主人公力ってやつかな。人を惹きつけるんだよね。

 

 私はぽん、とアメリア嬢の頭に手を置いて、ゆっくり2回撫でた。


 「私はアメリアさんと仲良くなりたい。平民とか貴族とか関係なく、貴女と。だから、『してもらう』というのは少し違うと思うんです。友人として、私がしたいからしているんです」

 「ユーリ様……」

 「あぁ、それとずっとお願いしたいことがあったんです」

 「お願い、ですか?」

 「はい」


 私はニッコリと微笑んで、まだ不安そうなアメリア嬢の頭をもう一度撫でた。ふわふわとした桃色の髪が気持ちいい。


 「ユーリ様、ではなくユーリとお呼びください」

 「えっ」

 「敬語も不要です」


 あわあわしている様が面白くて、余計な注文までつけてしまった。なんだろう。小動物感? 悪戯したくなるんだよね。


 「えと、それは、さすがに……」

 「ふふ、冗談ですよ」

 「もう……っ!」


 アメリア嬢が子どもっぽく、ぷくっと頬を膨らませてみせる。かわいい。


 「でも『様』はいりませんよ」

 「わ、分かりました。ユーリ、さん」

 「はい」


 一応私も貴族だし、敬語なし敬称なしは難しいかなって思ってたけど、様付けをやめてくれるだけで満足。

 15年経っても未だに慣れないんだよねぇ。

 私が満足してにこにこ笑っていると、なぜか顔を真っ赤にしてうつむいていたアメリア嬢がパッと顔を上げた。

 

 「ユーリ、さんも、私のことも呼び捨てにしてください! あと、敬語もいりません! ゆ、友人として!」


 さらにぐいっと私に近寄るアメリア嬢。近い。

 私は勝手に友だちだと思ってたから友人としてーなんて言っちゃったけど、アメリア嬢も友だちだと思ってくれてたんだねぇ。じゃあ私も彼女の要望に応えてあげないとね。

 

 「うん、わかった。よろしくね、アメリア」

 

 アメリアの顔がさらに赤くなる。またうつむいてしまった。

 朝から暑いのかな? 体調悪いとかじゃなければいいなと思いつつ、アメリアの顔を覗きこんだ。

 

 「大丈夫?」

 「はい……その、予想以上に刺激が……」


 体調が悪いわけじゃなさそうだ。よかった。

 そうとわかると途端に空腹が気になってきた。とりあえず朝ご飯食べたいなぁ。食堂に行く途中で話し込んでたからね。


 「アメリア、そろそろ行こうか」

 「は、はい」

 

 私は未だ顔を真っ赤にしているアメリアの手を取り、改めて食堂へと向かうことにした。アメリアとまた少し仲良くなれたこともあって自然と足取りが軽くなる。鼻歌まで歌ってしまいそうだ。というか実際に鼻歌が漏れていた。

 

 ふんふーん♪

 今日の朝ご飯は何だろうなぁ♪


 ガシッ。


 「わっ」

 「きゃっ」


 ご機嫌に歩いていたところで、食堂の前でまたしても首根っこを掴まれた私が急に止まったからつられてアメリアも止まった。手を繋いでいたから引っ張られた格好だ。

 というかまた首が絞まるぅ。


 動きを止められてもがく私の後ろにアメリアが視線を向けた。なんか怯えてないかな。この時点で嫌な予感がバリバリするんですけど。


 「お、おはようございます。ベロニカ様」

 「おはよう、デイジーさん」


 朝に似つかわしくない、底冷えするような声音。私も絞まっている首をなんとか後ろに向け、私の首を絞めている相手をなんとか視界に収めた。うん。わかってたけどね。やっぱりフレイヤ様だね。制服をきちんと身につけ、いつも通り身なりはしっかり整えているんだけどなぜか前髪が少し乱れている。急いで来ましたって感じだ。そして……なんか、怒ってる……?


 「お取り込みのところ申し訳ないわ。ちょっと用事があるのでこれを借りますね」

 「え、はい」

 「ちょっ! フレイヤ様っ! 私まだご飯……っ!」

 「行きますわよ、ユーリ」

 「えぇっ、どこ行くんですか! というか離してください、このまま歩くのは、わぁあああ」


 めちゃくちゃ腹筋使った。





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