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妖霊怪奇学園綺譚  作者: ±√
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23話

かれこれ30分以上歩いた。途中、山に入ったかと思えばそこから一向に抜け出さない。人気も建物もなくなり獣道をひたすら進む。

「これどこに向かってるんですかね」

「聞いてみる?」

いや答えてくれるわけ――

「ねぇいったいどこに向かってるの?お腹すいたんだけど」

「うるさい黙って歩け」

ほら、みたことか。

「――都に決まっているだろう」

答えるんかい。

「へぇ、都......みやこねぇ。ちなみに今の年号ってなんだっけ」

「なんだ、ますます怪しいな。今は安元。安元三年だろう?」

「安元...安元かぁ」

春馬さんは何かを含めたような言い方をした。すると、一気に目の前が開け、激しい日差しが私をさした。

「わぁっ」

目の前に広がるのは升目状にきれいに整備された都市。これが平安京か。

山を下っていくと次第に大きな門が姿を表した。そしてその門の下まで来たところで足が止まる。いたいと感じるほど首を目一杯動かし見上げる。立派なものだ。

「羅城門だね。」

あぁ、ついこの間古典の授業で習った――

「何だ、京都に来るのは初めてか」

「っと、まいったねこりゃ」

「なんだ、歩かんか」

「うーん、でもなぁー」

春馬さんは、やたら羅城門をくぐるのを嫌がった。男たちにどれだけ押されようが怒鳴られようが動こうとしなかった。そんないざこざが数分続き、ついに「そもそも僕、この先入れないから」と言い切り男たちの腕を振り払った。

「何を馬鹿なことを言っている」

「ちょ、春馬さん。突然どうしたんですか」

「あー――

まぁ見ててよ」

春馬さんはゆっくりと羅城門の方に進んでいった。そして門にちょうど差し掛かったところで目の前に白い稲光のようなものが走った。不意の衝撃だったためもちろん横転する人もいた。私も後ろに倒れそうになるがなんとか耐える。

「――ほらね」

唯一彼だけは当然のような顔をして立っていた。

「な、な、何だ今のは⁉」

「結界だ!結界が発動したんだ!」

「てことはこいつは――」

私は何がなんだかわからなかった。ただ、目の前にいる青桐春馬という人が今まで私が見てきたような人ではないのだと確信した。

「だから言ったじゃん」

「......春馬さん、いまのは......?」

「ん?あ、あぁ――

この頃僕、都出禁なんだ」

みやこできん?何を言っているんだこの人は。都ってことは、ここ?平安京に入ることができないって?この頃?思考がめ切り巡って銀河の果てに飛んでいく。同時に私達を囲っていた男たちの顔が青ざめ、どよめきをまとって口々に罵声を浴びせ合っている。「なぜこいつを連れてきたのか」「どう当主に説明するのか」責任の押し付け合いをしていた。

「と、言うわけでこんなふうに目立ってしまったからまた大事(おおごと)になるねぇ」

「ど、ど、どーするんですか」

春馬さんはニコっと笑って「もっと大事(おおごと)にする」といった。

あぁ、誰か私を助けて。


 この時期の『黒の当主』はお世辞にも強い力を持っているとは言えなかった。一人の女に溺れ、都を守るという『黒の家』の当主としての役割はどれも穴だらけだった。そんな男が管理する結界など壊すことは容易いものだ。この結界に阻まれ続け、当時の自分は約200年。いい頃合いだろう。ときの流れては残酷なもので、いくら偉大な陰陽師が張った強力な結界だろうと管理するものが悪ければその効力は世代を重ね衰えていく。いいや、もしかしたらこんなものはすべて言い訳で、ただ、はじめから彼女(・・)が残したものを壊すのが嫌だっただけかもしれない。この世界の果に、そんな愚か者がいるのだ。俺は「この結界を張った彼女(・・)ではない彼女」を思い浮かべて結界に触れる。結界というのは固くて脆い。結界を破壊するにはより強大な力でその結界を崩すか、術式の一部を書き換えることでそれは機能しなくなる。今回の場合、術者の術式が複雑すぎて到底書き換えられるものではない。そのため方法は一つだ。右手の先により高密度な妖力を集めそれを一気に流し込む。するとそこから結界がひび割れ始め、ついには崩壊した。都を覆っていた結界のかけらは花びらのように舞い落ちる。ふと思い出す。彼女が消えたのも同じように花が散るころだった。

あぁ、夜魅(よみ)。君は本当に優秀な陰陽師だよ。僕(・)に1000年以上も続く呪いをかけたのだから。


 

まるで胡蝶の夢の中にいるようだ。それほどまでに目の前の景色が美しい。

「あぁ、だめだ」

「我々はなんということを......」

男たちは様々だ。

その場で崩れ落ちるもの。

刀を捨て先程までの闘志を捨て去るもの。

彼らの目に春馬さんはどう写っているのだろうか。

「さ、幸村さん、走って」

「へ?」

「ほら、早くしないと人が来ちゃうよ」

そう言って春馬さんは羅城門をくぐり抜け、都の中へ走り出す。

「え、あ、ちょっ、おいて行かないで、ください」


制服では目立つからと、そのへんの呉服屋でそれっぽい服を見繕った。お金はなぜか春馬さんが持っていて、見たことないお金だったためだいたいいくら分かわからなかったが元の世界に帰ったら必ず返すと言ったが春馬さんは受け取ってくれなそうだ。

「あ、あとこれもつけておくといいよ」

そう言って渡されたのは布でできた顔隠し。

「逆に目立ちません?」

「大丈夫大丈夫」

私は言われるがままにそれをつけた。

「私、春馬さんに聞かなきゃいけないことが多いみたいです。」

「――せっかくだからなにか食べようか。何も隠すつもりはないよ」

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