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妖霊怪奇学園綺譚  作者: ±√
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17/25

16話

なかなか隙がない。攻撃をしても避けられるか回復されてしまう。そして彼も少しずつ反撃してくるようになった。

「よう――」

地面が大きな爪でえぐられたような姿になり、私頬にも斬撃が掠る。なかなか続き(・・)が詠めない。伝承に書かれていた恐ろしさがよく分かる。殺さなくてもいい。致命傷を与えなくてもいい。ただ1つ。あと1ピース。私は彼に近づき、左胸に刀を貫通させ、刀を通じてプラズマを体内に直接流し込む。

「陽動二衝厳神《おんみょうにしょうげんしん》」

しかし近づいたことで彼にも攻撃のタイミングができ、彼は私の腹部に触れぐっと力を入れた。私は痛みに顔を歪めた。それはおそらく私を貫通しただろう。目を向ければさらなる隙が生まれるため見ることもできないが遠くから聞こえる後輩の声、腹部に走る熱、太ももをつたう液体、そしてまた違う後輩の声が聞こえる。

「京華さん!!」

それは先程帰したはずの後輩。どうしてここにいるのはかわからない。ただ、彼女に釘付けになる鬼がいた。私はそれを見過ごすことなく、出る力を振り絞って彼の体を倒し刀で地面と固定する。私は全体重でその刀を抑え、彼が立ち上がるのを阻止する。彼は抵抗するように私の太ももに手先を食い込ませてくるけど、そんな痛みにはかまっていられなかった。ここだ。

「害気(がいき)を攘払(ゆずりはらい)し、四柱神(しちゅうしん)を鎮護(ちんご)し、五神開衢(ごしんかいえい)」

「離せ小娘。貴様に我は殺せん。諦めろ。それにそれは攻撃の呪文ではないだろう。」

「悪鬼を逐(はら)い、奇動霊光四隅(きどうれいこうしぐう)に衝徹(しょうてつ)し」

「ふん。あの男と娘ですら我を封じるので精一杯だったのだ。我は不死身だからだ。貴様のあとはあの娘を殺してやる」

「元柱固具(がんちゅうこしん)、安鎮(あんちん)を得んことを、慎(つと)みて五陽霊神(ごようれいしん)に願い奉る」

そう、たしかにこれは呪符のようなものだ。言い終われば、彼の体は光に包まれ金縛りにあったように動かなくなる。時間はそんなにない。私は左胸に刺している刀を抜き、温かい、ある物(・・・)を探す。私がそれを取り出すと彼の今までの余裕ある表情が崩れ落ちた。

「小娘、何をする気だ?!」

「たしかに貴方を倒すことはできない。それは今も昔も」

私はゆっくり立ち上がり刹那のもとにそれを持っていく。彼女は何も聞かされていないのだろう。何もわかっていない。彼女は器だ。かの時代、彼を仕留めることが不可能と判断した封じ者は彼を封じると同時にその地の主にいつか覚める彼のため、彼を体内にしまえる器を用意するよう説いたのだ。

私は彼女に彼の心臓を差し出した。

「食べて」

「え……」

刹那は困惑した。構わず私はまだ温かくドクドク動く彼の心臓を彼女の口にねじこんだ。

「っう!……うぅ!!」

暴れる彼女を抑え込む。喉につまらせそうな勢いだ。

「しっかり噛んで。大丈夫、生だけどお腹は壊さないと思うから」

「そういう話じゃない」とでも言うように彼女はガンガン蹴りを入れてくる。しかしそれもだんだんと弱くなり、しばらくすると彼女はゴクンとそれを飲み込んだ。彼女の目が金色に光り縦長の瞳孔が入ったことを確認して私は彼に目を向ける。

「力の半分はもう消えたみたいね。やがてその意識も消え完全な無となるわ」

「おのれ……紫蘭(しらん)、貴様だけでも――」

粒子になり始めた彼はそう捨て台詞のような言葉を吐いて最後の力で幸村さんに向かった。「しまった」そう思ったときには遅かった。手負いでも鬼は鬼。その凄まじいスピードに彼女を守るには時間が足りなかった。

 その時だった。

大騒ぎしていた木々はピタリと会話をやめ、風も逃げ出し、建物の軋む音すらも聞こえなくなる。まるで時間が止まったかのようだ。

「その人は貴方の恨むべき人ではありませんよ」

鮮明に聞こえたその声は私の横を通っていった。一切の影も見せずに現れた彼は鬼の動きを止めた。

「貴方の探す冬神はもういない。紫蘭という娘もだ」

「なんだ貴様は。なぜそんなことを知っている」

「人々には『禍津日神(まがつひのかみ)』と呼ばれています。そして彼らは千年前を生きたものだ。であれば貴方がここで消えてしまうのは私にとって惜しい。どうです、私と一緒に来ませんか」

彼があの本に書いてあった――

「ならば俺を救ってみろ」

そのとき彼から激しい風が拭き始めた。目も開けられないようなその突風は家屋を吹き飛ばし、その瓦礫や木材、辺の小石が何そも何度もあたってくる。足も動かず、立っているのがやっとの状況。このまま逃げるつもりか。しかし、その悪神は幸村さんに手を伸ばす。何かを唱えて彼女の頭に触れる。彼のそれが彼女にとって危険な行為だというものは本能でわかるが風のせいで何もできない自分がもどかしい。

「いやっ!!」

彼女がそう叫んだ瞬間白い光を放つ術式が現れ彼の手を拒んだ。彼は彼女の術式が発動される前に飛び退いた。あの陣を私はどこかで見たことがあった。


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