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妖霊怪奇学園綺譚  作者: ±√
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14話


「貴女(あなた)は――お前は一体、何なんだ?!」

応龍の鱗は硬い。普通にプラズマを放っても跳ね返されるだけだろう。打ち続ければなにかあるかもしれないが、それは百発打っても起きる可能性は低い。次の戦いを考えると妖力をここであまり消費するわけにはいかない。それは愚策だった。彼は先程の衝撃波を放ったり、地面を液状化させたり、土の傀儡を作って操ったり、様々な技を仕掛けてくる。しかし、彼の攻撃が私に当たることはない。このままでは長期戦。そろそろ彼を倒して刹那のもとに向かわなければならない。幸いにも応龍は未だ自身に溺れているのか、空高く飛ぶことはなく建物の屋根ぐらいの高さにいる。私は素早く辺りの木を使い応龍の背中へと飛び乗った。

「な、おりろ。何をする気だ?!」

応龍が背中に乗る私を振り払おうと暴れるも、私は鱗の隙間に刀を入れてこのように数枚鱗を剥ぎ取る。すると中から柔らかい体が現れた。私は手のひらでそこに触れ勝利を確信する。

「雷霆万鈞(らいていばんきん)・天(あま)」

鱗の下で高電力のプラズマが走るのが見える。硬い鱗のおかげで私にそれが感電することはない。

「あ゛......がぁ――」

彼はそのまま力を失い、地に落ちた。

「さぁ、答えてくれる?どうして封印を解いたの?」

私は彼を見下ろし、瞳に刀を向けて尋ねてみる。しかしその回答は帰ってこない。声も出さえないのだろうか。いや――

私はそのまま刀を進ませ応龍の片目を潰してみる。

「あぁぁ!!!!」

彼は大きな叫び声を上げてのたうち回る。

「なんだ、喋れるじゃない」

空を飛ぶ余力はないのだろう。私はかがんで彼と目線を合わせた。

「答えて。どーして封印を解いたの?ここ最近いろんな妖怪の封印が解かれているのだけれど。それも貴女の仕業?」

それでも答えない。私は口角を上げ、じっと彼の目を見つめた。

「あなたは強い。あなたの力は流石としか言えないわ。そんなあなたが負けたのはただの偶然。私が木であなたが土だから。ただそれだけよ」

「――......あの人の、私に力を与えてくださった人。主様の、力になりたかった」

そう震える彼は、先程の姿よりも可愛げがあった。そして彼の体は白い光に包まれ人形の依代に姿を変えた。そしてその依代はその場で燃え尽きた。

「......逃げた」

どうやら彼の後ろになにかいるようだ。依代さえ残っていてくれたらその『主』というやつを探すことができた。「あ。幸村さんに送る『応龍討伐の記念写真』撮り忘れた」

メッセージで無事を知らせるために送ろうと思っていたのだが。少し残念な気持ちになりながらも、私は次の場所へ向かった。


「鬼は人形に近づけば近づくほど、それには力がある」

よく祖父に聞かされた言葉だ。それを今、よく感じる。羅刹天(こいつ)に比べれば酒吞童子など赤子のようなものだ。数十分前、家にいる鬼祓い達は集まって、ソイツの姿を捉えた。190センチ前後の鬼と言うには小柄で、人間としては大柄な男。ツノも生えていない彼は限りなく人間に似ていて、街中にいても違和感がないほど。もしかしたら相手を間違えているのではないかとも思ったが、それにしては異様な妖力量に一目瞭然だった。

「我が封じられてどれほどだ」

彼は静かに尋ねた。一瞬で背筋にヒヤッとした空気があたり、ビリビリとした雰囲気を感じる。私はその時、初めて相手を恐怖の対象だと感じた。死を感じた。

「......千年と、少しだ」

誰かがそっと呟いた。

「ふん......千年。千年あれば何ができただろうか。そうだ、全てはあの『冬神(ふゆがみ)』のせだ。あれが私から時間を奪ったんだ。あぁそうか、あぁそうだ!あの男の首を取ってやろう!人間、やつは今どこにいる」

「冬神」なんて言葉聞いたことがない。それは私だけでなくみんな同じようだった。

「我々はその『冬神』を知らない。大人しく封の中にもどれ!」

誰かがそう叫ぶ。

「誰が好き好んでもう一度封じられるものか。我を縛れるのは我だけ。我に命じて良いのも我だけ。我は今このときより誰よりも自由なのだ!なぁに、場所が分からずとも呼ぶことはできる。千年の復讐、果たしてやろう。全てを壊す!まずは貴様らからだ」

彼はそう言い、走り出した。まるで嵐のようだ。「逃げろ!」と誰かが叫んだが、その忠告はもう遅い。彼の腕が私の叔父の喉元を掴んだ。

「伯父さん!!」

彼は伯父の体を片手で宙に持ち上げる。その力はやはり鬼。その目はやはり鬼。彼は不敵な笑みを浮かべ、ぐっと手に力を入れた。

「やめ――」

そんな忠告も虚しく、伯父の頭が吹き飛ぶ。私の目の前に転がってきた伯父の首の断面はグチャッとしていてきれいなものではなかった。その恐怖とショックで私は言葉を失った。

「怯むな!戦闘態勢をとれ!」

その伯父の息子が声を上げる。その声は震え、今にも目から水が溢れ出しそうだった。いとも簡単に一人の人間を殺めたその鬼は私の体をこおりつけた。

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