18 - 新たな拠点。そして、ズウへ
教会は生き残ったレジスタンス受け入れることにした。
それで場所も狭くなり、これからの計画のためにも、もっと広い場所が必要となってくる。
「イングゥを新たな拠点にしよう」と、最後は全員の合意でその案に決めた。
ネズミ型とゴリラ型がうろつく廃墟都市・イングゥ。【鼠王】の討伐によって、ネズミ型は動物に戻り、残ったのはゴリラ型のみ。
方舟の支援もあり、イングゥに残ったゴリラ型の掃除は二日も掛からなかった。
壊されたアジトを修復し、皆が力を合わせて廃墟都市・イングゥを新たな拠点に仕上げた。
「おお、おおおおおぉぉぉぉおお!」
通信設備や会議室まで設置される本ビル。
食堂と宿舎がその隣で、その裏は野菜を栽培する畑。
生活に必要なものは最低限そろったところで、最後は外囲に、廃墟都市・イングゥ全体を囲むように高い壁を積み上げた。
数ヶ月かかって完成した新拠点。
廃墟都市・イングゥを、人類の新たなスタートラインとして、「アース・タウン」と名付けた。
「人類の勝利……」
「違うぞ、ボルス。ここは人類の勝利の始まりに過ぎない」
アニモをも超える高い壁を前にしてそう呟いたボルスに、ルバルトは後ろから声をかけた。
「本当の勝利は、これからだ」
「そうだな」
消えた右腕を見つめ、ボルスがルバルトに近づいて小声で言う。
「例のことは進んでいる。--もう少し待ってくれ」
「あんまり待たせるなよ」
ルバルトはボルスの肩に左手をぽんと叩いた。
「こっちは一か月前から準備は出来ている」
壁を後にして、ルバルトは本ビルに足を伸ばす。
「会議の時間だ。次の任務について話があると、カントウ・フジワラが呼んでいる」
ーーーーーー
会議室は本ビルの2階にある。
一番大きい広間を使って、中央に大きくて丸い円卓を設置した。その円卓を囲むように座ったのは6人。
教会で代表である教祖、カントウ・フジワラ。
レジスタンスの代表、ルバルトとボルス。
そして最も欠かせない、【パイオニア】たち。
「早速だが、次の救援ポイントはもう見つけた」
カントウの隣にいる教徒の一人がすぐに地図を円卓に広げた。
地図にある場所を指しながら、カントウが説明を続ける。
「先日、レジスタンスの方から、ここに大量な人類がアニモに捕らわれている情報が入った」
「ちょっと待て」とルリアが早速声を上げた。
「レジスタンスの人が自分で外を出たのですか?」
「ええ。我々も人類を救うために何かしたいのです。何もかもあなたたちに頼るわけにもいかないので」
ボルスがそう返事して、ルリアが心配そうにまた訊いた。
「危ないです。私たちに言ってくれれば……」
「地球が今のようななっても15年生きてきたから、アニモに見つからずに調査する方法があります。ご心配なく」
「どんな?」
「それは……」
ボルスはそこで言葉を濁った。
「まあ、よしてやってくれ」
カントウが嘲笑のように笑った。
「地球がこうなってもなお、心を一つにしないで何かをこそこそ企むのが人間だ。--性だろうな」
へいと、【パイオニア】の三人が納得したかしないかもわからない相槌を打った。
「【パイオニア】の諸君。あなたたちにここへ向かってほしい」
教徒が数枚の資料を皆に配った。
「この場所は【ズウ】と、彼らは呼んでいる」
その言葉を耳にした瞬間、シーカの眉をぴくっと跳ねた。
「どうしたのか? シーカくん」
「……いいえ」
皆が視線を自分に集まってくると、シーカが「……彼らとは?」と付け加えた。
「もちろん、アニモだ」
今更驚くことでもないが、それを聞いた時はやはり、この場にいる皆は思わず顔を引き締めた。
「【ズウ】はまるで一つの都市だ。明白な境界線が存在し、そこに警備のようなアニモも常に配置されている。調査に行った人たちはその中に入ったことはないらしく、詳しい状況はまだわからない。わかったことと言えば、そこい大量な人類がいることと、アニモの密度が高いことだ」
それでも行くのか、と訊くような目線をカントウは【パイオニア】たちに投げた。
「行きます!」
一瞬の迷いもなく、ルリアは返事した。
にやっと笑みを浮かべて、カントウは「もう一つ」と指を立てた。
「これが最も重要なことだ。--【ズウ】にはイヌ型がいる」
そしてバトンタッチするように、カントウは続きの話をボルスに任せた。
「残念ですが、おれのほうもイヌ型についてはほぼわからないとしか……」
ボルスが一冊のノートを見ながら言う。それは前に見せてもらった、ボルスが独自で集めた、アニモの情報が書かれていたノートだ。
「そう、ですか……」
方舟からの情報は当てにならない。ボルスにも情報がない。
ルリアが眉をひそめると、クーカスが彼女の肩に手を乗せた。
「大丈夫だ、ルリア」
「……オレたちがいる」
頼れる資料はどこにもない。
知らないことは、たくさん。むしろ地球に来てから知らないことばかりだ。
でも、ここまでやれてきた。
仲間がいるから。
だから、これからもきっと、やっていける。
「うん、そうだね」
二人の笑顔に、ルリアも同じく笑顔で返した。
再び円卓に顔を向き直し、ルリアが【パイオニア】の総意を告げる。
「【パイオニア】。これより【ズウ】へ向かいます!」




