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魔王、第二の人生 〜こんどは人間界に転生したので、世界をリノベします〜  作者: 木口タカシ


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2/12

第二のホルムズ海峡 〜伝説の職人世界の物流に挑む〜

世界情勢の悪化により、多くの材料が手に入らなくなった。


職人として死活問題に直面した元魔王のもとに、前代未聞の依頼が舞い込む。


「第二のホルムズ海峡を造ってほしい」


渡された図面には、SGL鋼板と高耐水木材の文字が並んでいた。


「……よかろう。図面を見せろ!」


世界を揺るがす物流危機に、伝説の職人が立ち上がる。


果たして魔王は、海峡を納めることができるのか。

「……これを造れというのか?」


魔王……いや、俺は、机の上に広げられた図面を見つめていた。


図面の中央には、堂々たる文字でこう記されている。


『第二のホルムズ海峡建設計画』


その下には、使用材料の指定があった。


世界的な鋼材・セメント不足により、コンクリートによる護岸工事は不可能。


そこで採用されたのが、耐食性がガルバリウムの3倍以上あるSGL鋼板と、塩水に強い高耐水木材を組み合わせた、超巨大乾式工法だった。


「SGL鋼板に、高耐水木材……か」


俺は図面をもう一度見つめた。


「なるほど……」


「お引き受けいただけますか?」


依頼主が期待に満ちた目を向けてくる。


俺は静かに腕を組んだ。


「まず確認したい。SGL鋼板の厚みは?」


「えっ?」


「高耐水木材の規格は? 接合部の仕様は? それと、この断面図を描いたのは誰だ?」


依頼主の顔から、少しずつ笑みが消えていく。


「……あの、海峡そのものを造る計画なのですが」


「見ればわかる」


俺は鉛筆を手に取った。


「だが、海峡だからといって、納まりを考えなくていい理由にはならん」


かつて俺は、魔王として異世界に君臨していた。


幾多の戦いを経て、最後には伝説の職人と呼ばれるまでになった。


そして人間界に転生した今も、俺の職人魂は変わらない。


材料が指定されているなら、その特性を理解する。


条件が厳しいなら、取り合いを考える。


納まらないなら、納まる方法を探す。


それだけだ。


「よろしい。まずはSGL鋼板と高耐水木材の接合方法から検討する」


「本当に造れるのですか?」


俺は顔を上げた。


「君は、俺が無理だと言うためにここへ来たと思っているのか?」


依頼主は黙り込んだ。


「無理だと言うのは簡単だ。だが、納める方法を考えるのが職人だ」


俺は図面の余白に、接合部のスケッチを描き始めた。


鋼板の取り合い。木材との接合。水の侵入をどう防ぐか。そして、長期使用に耐える構造をどう成立させるか。


考えるべきことはいくらでもある。


だが、俺は笑っていた。


久しぶりに、腕が鳴る仕事だった。


「……ところで」


俺は鉛筆を止めた。


「この計画の予算はいくらだ?」


依頼主は、恐る恐る金額を告げた。


俺は数秒間、沈黙した。


「……ふむ」


「いかがでしょう?」


俺は図面を裏返した。


「予算に合わせて、見えるところだけ仕上げるか」


「海峡ですよ!?」


「わかっている。だからこそ、割付が重要なのだ」


依頼主は頭を抱えた。


俺は再び図面に向き直る。


人間界には、勇者も魔王軍も存在しない。


だが、予算と納期、そして材料指定の厳しさは、異世界と何も変わらなかった。


そして俺は、世界の物流を左右する壮大な計画に、たった一本の鉛筆で立ち向かい始めたのだった。

お読みいただきありがとうございます!


ついに魔王、海峡建設に挑戦です。


世界の物流を左右する巨大プロジェクトも、魔王にとっては材料と納まりの問題。


予算が足りなければ、見えるところだけ仕上げる。

それもまた、職人の知恵……なのかもしれません〔笑}


次回も、魔王の第二の人生をよろしくお願いします!


納まれば良い!


※実際は国家規模のプロジェクトを、このような材料だけで工事はできません。


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