↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王第二の人生――こんどは人間界に転生したので、世界をリノベします――』  作者: 木口タカシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/13

第13話 図面の誤算と、現場に潜む罠

道の駅の内装工事は順調に進んでいるように見えた。


しかし、現場では図面だけでは気づけない問題が次々と発生する。


魔王は職人たちと知恵を出し合い、難題を乗り越えられるのか。


今度は、現場の納まりが試される。

道の駅の内装工事が始まって数日。


物販コーナーやレストラン、休憩スペースでは、それぞれの製作物の準備が進んでいた。


俺は側近とともに現場を巡回し、各業者の作業状況を確認していた。


大工のじじいも工房で造作家具の寸法を確認し、順次搬入の準備を進めている。


「魔王様。各製作物の進捗は順調でございます。ただ、現場でいくつか確認が必要な箇所が出ておりまして」


側近が険しい顔で図面を差し出した。


「ほう。何があった?」


「まずはレストランのカウンターです。厨房側の設備配管が、カウンター内部の予定位置と干渉しているようです」


俺は図面を覗き込んだ。


「なるほど。設備との取り合いか。現場で位置を確認しよう」


――


第一の難題:設備との取り合い


レストランの厨房側では、設備工事の職人たちが配管作業を進めていた。


俺は現場監督に声をかけ、配管の位置とカウンターの納まりを確認する。


「この位置では、カウンター内部の収納スペースが確保できぬな」


そこへ大工のじじいがやってきた。


「おい、魔王。こっちは図面どおりに造るつもりじゃぞ。後から寸法を変えられても困るわい」


「わかっておる。だが、設備を無視して造作を進めるわけにもいかぬ」


俺は図面を広げ、配管の経路と収納スペースを見比べた。


「配管の位置を確認したうえで、カウンター内部の収納と点検スペースを見直そう。設備側とも相談して納まりを決める」


じじいは腕を組み、納得したように図面を覗き込んだ。


「ふむ。そこまで考えるなら、わしも造作寸法を検討し直してやろう」


――


第二の難題:コンセントの位置


次に向かったのは、休憩スペースだった。


旅行者が気軽に利用できるローカウンターを設置し、スマートフォンの充電などに使えるよう、コンセントを設ける計画である。


ところが、現場で確認すると、電気工事で予定していたコンセントの位置とカウンターの高さが合っていなかった。


「魔王様。これではコンセントの位置がカウンターと干渉してしまいます」


側近が困った顔で図面を見せた。


「ふむ。カウンターの高さだけでなく、コンセントボックスの位置も確認せねばならんな」


俺は電気工事の職人を呼んだ。


「すまぬが、このコンセントの位置をもう一度確認してもらいたい。カウンターの高さと使用する人のことも考え、使いやすい位置に納めたいのだ」


電気工事の職人は図面を確認した。


「なるほど。配線の取り回しもありますので、位置を調整できるか確認しましょう」


「頼む。無理に納めても使いにくくては意味がない」


じじいもカウンターの図面を覗き込んだ。


「電気のことは専門の者に任せよう。わしは造作側の寸法を合わせる」


「うむ。それぞれの仕事を合わせてこそ、良いものができる」


――


第三の難題:搬入経路の罠


数日後。


物販コーナーに設置する大型陳列什器が、ついに工場から運ばれてきた。


トラックが建物の前に停車し、職人たちが慎重に荷台から什器を降ろし始める。


そのときだった。


「おい! これじゃ入口を通らないぞ!」


現場に職人の声が響いた。


トラックの荷台から降ろされたのは、黒塗りの重厚な木目とガラスで飾られた、巨大な物販陳列棚だった。


威風堂々たる佇まいだが、なるほど……自動ドアのフレームと見比べても、明らかに一回り大きい。


「なんじゃこりゃ。ずいぶん立派なもんを造ったのう」


駆けつけたじじいが、陳列棚を見上げた。


「立派なのはよいが、これでは店内に入らぬではないか」


俺は腕を組み、搬入口から設置場所までの経路を確認した。


通路の幅、曲がり角、天井の高さ。


什器そのものの寸法だけでなく、運び込む際に必要な余裕、つまり搬入経路の有効寸法まで考慮する必要があった。


そこへ勇者が駆けつけてきた。


「魔王よ! 搬入が止まっているぞ! 予定していた作業時間がずれれば、ほかの業者にも影響が出る!」


「ふむ……。図面上では問題ないはずだったが」


俺は什器の図面を広げた。


「どうやら、搬入方法を見直す必要がある。分割できる構造に変更し、現場で組み立てる方法を検討しよう。製作側にも確認が必要だ」


じじいは少し不満そうな顔をした。


「せっかく仕上げたものを、またバラすのか」


「無理に通して壁や什器を傷つけるわけにはいかぬ。安全に運び込める方法を考えるのだ」


勇者が腕を組んだ。


「分割して搬入するなら、作業場所と時間を確保しなければならんな。他業者の工程も調整しよう」


「頼む。搬入経路と作業範囲を確保してくれ」


じじいは陳列棚をもう一度見上げた。


「ふん、仕方ないのう。最後まできっちり納めてやるわい」


側近も図面を手に取り、必要な寸法を確認し始めた。


――


その日の夕方。


俺たちは工房に集まり、三つの問題について改めて図面を広げていた。


設備配管との干渉。


コンセントの位置とカウンターの高さ。


そして、巨大什器の搬入方法。


どれも図面を描いて終わりというわけにはいかない。


現場を確認し、関係する職人たちと話し合い、それぞれの仕事が無理なく納まる方法を考える必要がある。


側近が図面を見ながら口を開いた。


「魔王様。図面だけでは気づけないことも、現場には多いのですね」


「そうだ。図面は大切だが、それだけですべてが決まるわけではない」


じじいがニッと笑った。


「ふん。ようやくわかってきたようじゃな」


勇者は書き直した工程表を机に置いた。


「問題はまだ残っている。だが、解決の目処が立てば工程も組み直せる」


俺は三人を見渡した。


「よいか。現場では、一人の都合だけで仕事を進めることはできぬ。設備も電気も造作も、それぞれが関わり合っておる」


俺は図面を閉じた。


「すべての仕事が正しく納まってこそ、建物は完成するのだ」


じじいが深く頷き、勇者も静かに笑った。


こうして、道の駅の内装工事は新たな段階へと進んでいく。


しかし、現場にはまだ、俺たちの予想を超える難題が待ち受けていた。


開館を目前に控えた消防検査。


そして、保健所による保健衛生指導という名の試練。


どうやら、魔王の仕事は什器を納めて終わりというわけにはいかないらしい――。

今回は、内装工事の現場で起こり得る三つの問題を題材にしてみました。


図面上では問題がなくても、実際の現場では設備配管との干渉や電気設備との位置関係、什器の搬入経路など、さまざまな確認が必要になります。


大切なのは、一つの業者だけで判断せず、それぞれの職人や関係者と相談しながら、全体として無理のない納まりを考えること。


魔王の知識だけでなく、勇者の工程管理、側近の学び、そして大工じじいの職人技。


それぞれの力を合わせて、道の駅の完成を目指します。


さて、次はどんな難題が待ち受けているのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。