↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

19Hong Kong2

(凛ブリーフィング)

「先ず、考えれるシナリオとしては、「彩音」の情報を欲しがるクライアントと仲介する業者、そして

実行犯が存在することです。その実行犯グループの潜伏先がどうやら香港らしいということです。」

「奏がいまマップを描いています。奏のマップを待って作戦はスタートします。」  

香港の身分証明制度は、まず基本構造として、合法的に居住して7年で永久性居民身分証が取れます。

外国人でも7年居住すれば永住権を得られる、という点が重要です。

国籍問題が特に複雑です。香港在住の「民族的に」中国人である香港人は皆一律に中国の国籍を有するとみなされます。ただし問題となるのは、民族的には中国人に違いはないものの、英国を含む外国の国籍を既に取得し、外国の旅券を所持して香港に住んでいる人達の国籍です。そうした人たちは香港及び中国では中国人とみなされ、どの国の領事保護も受けられませんが、外国では所持しているパスポートの国籍を有する者とみなされるという奇妙な状況が発生します。

つまり同一人物が、中国側では「中国人」外国では「カナダ人」や「英国人」として扱われるという

二重性があります。

そして2024年から新制度として、非中国籍で香港の永住権を持つ人に「回郷証」が発行され、

パスポート不要で、中国本土に自由に出入りできるようになりました。

犯罪組織の人物が複数の身分を持つことが合法的に可能な環境がある。

「中国では中国人、香港では外国人永住者、別の国ではその国の国籍者」という三重の身分を使い分けられる。これが、健人さんのの追跡を難しくさせています。

彩には、「彩音」香港市場進出時の関係者等をリスト化してもらいます。

健人さん、彩のリストを元に更に調査を進めてください。


◇奏語り◇

(マップ ― 仲介業者を中心に。)

「回郷証」凛のブリーフィングを聞いて、引っ掛かった単語だ。凛のことだから直感的に加えているのだろう。つまり、英国やカナダのパスポートで日本やアメリカに入国し香港に住む中国人犯罪組織。

ただ実行犯に過ぎない。しかも現在進行形の事案だ。

今回、オレはマップからクライアントを外して仲介業者を中心に描いた。「彩音」のデータを欲しがるクライアントは無数に存在するし、そこに触れていくとオレたちの情報が漏れる可能性が高いと睨んだ。凛、健人、彩さんの安全確保。実行犯をデコイとして仲介業者を炙り出しサーバーを特定し、公安経由か健人経由でUS CYBER COMによって、物理的にデータセンターを破壊させる作戦。

凛の流儀に沿って、尚且つヒーローにならないオレの流儀でマップを描いた。

◇/◇



奏のマップを受け取った。見た。クライアントが外されていた。

「クライアントは?」

私のブリーフィングでは、クライアント、仲介業者、実行犯の三層構造として提示した。

「追わない。」

「そうね。そこを動くと私たちの動きが見える。それに……」

「危険だ。」

「まず安全という石。そうね。結果は彩音を守ること。」


もう一度読んで、静かに奏の腕に私の腕を絡めた。


作戦の順序を整理した。まず彩が香港市場進出時の関係者リストを作成する。健人さんがそのリストを元に「回郷証」保有者の動きを追う。複数の身分を持つ人物を特定する。実行犯グループを把握した上で、デコイを動かし、仲介業者のサーバーを浮かび上がらせる。

最後は公安かUS CYBER COMで物理的に叩く。

問題は、デコイを動かす段階だ。



◇奏語り◇

香港に向かうことになって、思い浮かぶことを少し。

最近は民主化運動(デモ?)が鎮圧されたが、他国によって翻弄され続ける「東洋の真珠」

昔は小さな漁村だったらしい。イギリスの植民地になり、日本に統治され、またイギリス。

そして、とうとう中国共産党。

日本人として懸念するのは、当時貯水池を奪ってイギリス軍を降伏させた

酒井という中将だ。こいつは最悪だ。香港人から水を奪った日本人。

過去のこととはいえ、因縁が取り巻く環境下では常に慎重に対応しなければならない。

◇/◇



◇彩語り◇

LAで生活するようになって、自分の中に緩みを感じていたのは確かで、

元々、温暖な気候と多様な文化に憧れて、尚且つ日本人コミュニティが確立されているLAを選んだ。

日本人の私が海外のお客様にも「彩音」を効果的に拡大するための環境も整っている。

だが、根っこは常に日本にあった。そして、日本からアジア市場を見つめたとき香港は魅力的だった。

直営店を出店したかった。マックスを信頼している。そこは間違いない。しかしながら他の人材に関しては不安がある。香港支店とLA本社もオンラインでデータベースを共有している。

そして、データ流出。凛には些細なことまで全て聞いてもらい本当に感謝している。


彩リスト

マックスウェル・M  英国籍白人 コーディネーター兼香港支店長。データ閲覧可能

トミー・E      英国籍中国人 賢こい。回郷証有 

ナオミ・K      現地通訳 香港生まれだが、英国籍。日本人ハーフ。 回郷証有

◇/◇




彩のリストを読んだ。三人。

マックスウェル・M——彩が「信頼している」と言った人物だ。彩の人を見る目を信頼している。

ただし、信頼できる人物の周囲に穴がある場合がある。マックスが悪意を持っているとは思わない。でも、マックスを経由して情報が漏れた可能性は排除できない。

トミー・E——英国籍でありながら中国本土に自由に出入りできる。この二重性が今回の件に関わっているとすれば……直感が反応した。引っかかる。賢い人間が、なぜ実行犯側にいるのか。

仲介業者との接点があるとすれば、トミーEだと思う。

ナオミ・K——この人物が、いちばん見えない。

日本語、広東語、英語が使える。香港と中国本土と英国、三つの文化圏を自然に往来できる。

通訳という立場は、情報の中継点になりやすい。意図的にそこに置かれた人物の可能性がある。

奏にリストを回した。しばらく見ていた。前髪が下りていて眉間に皺が寄った。



作戦の輪郭が見えてきた。

デコイとして使うのは、「彩音」の新商品開発工程表だ。数回に分けて流す。

健人さんが追跡ログを仕込む。情報が動いた瞬間を捉える。

接触方法は、彩のコラボレーション企画メーカーとして香港に入る。

観光案内という体裁を取る。自然な接触だ。

変装名を決めた。私は大村華。奏は中森明。健人さんは小林博。

「中森明」と聞いて奏が微笑した。私は、奏の膝に手を置いてスリスリ撫でた。

AIが名付けた似合わない名前。でも似合わないのが変装の正しい姿だ。

大丈夫。奏は、どんな名前でも奏だよ。

「香港人から水を奪った日本人の歴史」「因縁が取り巻く環境下での対応」

その記憶の中に、今回私たちは日本人として入る。慎重に、丁寧に。だ。

「大村華」として動く私は、彩のビジネスパートナーとして香港に入る。

エージェントの顔は、完全に消す。



ナオミ・Kのことを、もう少し考えた。

日本人ハーフで、おそらく天真爛漫な印象を与える人物。「現地通訳」という立場で、香港生まれの

英国籍、回郷証保有という背景を持つ人物。

こういう環境で生き抜いてきた人間は、人を見抜く目がある。

バレるとすれば、健人さんのオーラだ。実はLAで名の知れた日本人で、ディールメーカーとして、

テクノロジー分野での実績もある。彩のビジネスパートナーとして香港に現れた健人さんは、

ナオミ・Kにとって魅力的な標的になりうる。

ハニートラップは、情報戦の古典的な手法だ。でも古典だからこそ、見えにくい形で現れる。

健人さんにはもう一つ、気になることがある。「ヒーローになりたい願望がある」

今回の作戦で、健人さんがその願望のまま動くと……

奏は当然把握している。わかっている。奏のマップには、健人さんへの配慮が最初から入っている。

マップには、健人さんがヒーローを手放す方法まで、最初から描かれていると思う。

奏は、ヒーローにならない男として、親友が誇れる「名誉」を準備しているはず。

奏の観察眼と私の直感は全く同じ場所を指している。





♪♪その㉑♪♪


この間、初めて奏からダウンを奪った。

私の右膝が、カウンターで奏の溝内に突き刺さった。

奏が崩れ落ちた。

馬乗りになってとどめを刺そうとしたら、

奏が苦しそうに微笑んだ。

「呼吸、止まったよ。ナイスKnee」

私は、逆にとどめを刺されて抱きついてしまった。


それからというもの

自分でもどうしようもないくらい、奏の体に触りたい。




「もぉ」



私は、おかしくなってしまったのかな?






続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。