第46話 似合いますか?
「お待たせしました。こちら鰻と玉子の重ね重膳と胡麻豆腐と汲み上げ湯葉膳になります。どちらもお熱いのでお気を付けてお召し上がりください。」
「ありがとうございます。」
「それでは、ごゆっくりどうぞ。」
店員は丁寧に頭を下げて静かに下がっていく。
「とてもおいしそうですね。」
「そうだな、さっさと食べるか。」
「そうですね、じゃあ食べましょうか。いただきます。」
希空はさっそく箸を手に取って胡麻豆腐を口に運ぶ。とても美味しいそうに食べてんな。
「見た目通りとても美味しいです。胡麻の香ばしさとコクがしっかり感じられるのに、全然しつこくないです。丁寧に作られてるのがよく分かります。」
「よかったな。」
じゃ、俺も食べようかな。
そう思い蓋を開ければ、膳からいい匂いが溢れ出してきた。めっちゃ美味そうだな…。
さっそく箸を取って鰻と玉子を一緒に口に運ぶ。
「…やっば、くそうめぇ…。」
「そんなに美味しいんですか?」
「少し食べるか?食べたいなら希空の方に渡すけど。」
「いえ、大丈夫です。絢星さんが頼んだものですし、私はこれだけで十分ですので。」
「そうか。」
それにしても、看板メニューだけあってまじで美味すぎるな。俺も家帰って料理作る練習しないとな。
母さんも俺の作るご飯待ってるみたいだし、栞達にも美味しいもの食べさせたいしな。
まぁまぁ食べたところでとあることを思い出す。
そういや、さっきの店で希空にあげるヘアピン買ったんだったな。忘れる前にさっさと渡しとくか。
「希空、少しいいか?」
「どうしました?私まだ食べてる途中なんですが…。」
「いや、いるか分からねぇけど、さっきヘアピン買ったからやるよ。希空に似合いそうなやつを俺なりに選んでみたんだけど。」
「私に、ですか?お姉様とお兄様のプレゼントを買いに来たのに、私が買ってもらう訳には…。」
「気にんすな。俺が勝手に買っただけだから受け取るだけ受け取ってくれ。まぁつけるかつけないかは任せるけど。」
「それなら…、ありがたくもらいますね。」
「はい、これ。」
鞄から小さめのパールに星モチーフのヘアピンを取り出して渡す。
「…とても可愛いですね。これ、ほんとに私に似合いますか?」
「俺は似合うと思うけどな。海音さんも似合うって言うんじゃないか?」
「そう言ってくれて嬉しいです。選んでくれてありがとうございます。大事にさせてもらいますね。ヘアピン代は…。」
「さっきも言ったけど、俺が勝手に買っただけだから気にすんな。」
「…はい!」
そう言って希空は笑ってくれた。笑顔をあんまり出してこない奴が笑ってくれたなら、まぁこっちとしてもよかったな。
希空は、また大人びた表情に戻ったが、さっきと比べてかなり子供っぽい顔つきにもなったような気がする。俺これ海音さんになんか言われる気がして怖いんだけど。それはその時考えるか。一旦昼ごはん食べよ。




