第19話 何も間違えてない
僕は、何も間違えてない。
僕は、おかしいことを何も言ってない。
そんなことを考えながら家の廊下を歩く。
「希空、少しいいかい。」
「…なんでしょうか、お兄様。」
この様子だと、なんで呼ばれたかは理解しているだろう。ほんと、そこまで理解できるなら僕が言っている約束を守って欲しい。
「次、約束破ったら学校を辞める約束だったの、覚えてる?」
「はい、覚えてます…。」
「じゃあ、退学の手続きを明日しに行こうか。」
「…。」
黙るなんて、希空らしくないな。
僕やお父さん、お母さんの言うことを聞いていればいいのに。
「返事。」
「…わかりました。」
学校に通わせてるのだって、希空が学校に行ってみたいと言うからわざわざ条件付きで通わせてあげているのに。
ほんと、馬鹿な妹だね。僕に似ていればもっと賢かっただろうに。
「今日はもう寝ること。明日は早起きしないといけないだろうからね。」
「…はい。」
「じゃ、おやすみ。希空。」
「おやすみなさい。お兄様。」
ガチャ
はぁ、めんどくさいな。
家族が信頼している人以外と関わるな。必要最低限だけしか認めない。守れない約束じゃないだろうに。
ふぅ、とりあえず少しは勉強出来た。
最近は生徒会関連の仕事で帰るのも遅くなってるから勉強出来る時間が少なくなってるし、4時間勉強出来るのはありがたい。
コンコン
「入っていいよ。」
「はいはーい。」
「海音か…、こんな時間になんの用?」
「んー、陸斗がなんかやらかしてないかなーって、思って。暇だし来た。」
「僕は海音と違って暇じゃないんだけど、もう予習復習も終わって寝るところなんだけど。」
「まぁいいじゃん?」
もう日跨ぐから早く寝たい。6時間は寝ないと明日のパフォーマンスに影響するし。
「少しだけだからさ。」
「はぁ、もう24時だから静かにね。で、何?」
「ありがとー。じゃ希空についてなんだけどー。」
「あぁ、希空なら明日退学手続きすることになったよ。」
「はぁ。私は希空の退学認めないからね。最近希空が楽しそうにしてるし、それを邪魔するのはいくらお兄ちゃんでも許せないかな。」
は?何を急に言い出すんだ?
ほんとに昔から海音の考えてることが分からない。
一応双子のはずなんだけど。
「海音、それはそういう約束だから仕方のないことだ。約束を破るのが悪いっていう、それだけの話。」
「陸斗さ、その約束、必要最低限以外喋るなって言ってるってことでしょ?」
「そうだよ。守れる範囲だろ。」
「陸斗はそうかもね。けど希空は9歳だよ。誰かと話したり遊んだりしたい年頃の子なのに、そんな約束、守れるはずないじゃん。」
「…。」
「陸斗、いくら希空を守りたいからって、限度は考えた方がいいよ。」
希空は1人で居させないと何をされるか分からない。それなのにやりすぎ…?
「んー、言いたいこと言ったし、私も希空が楽しそうにしてる理由知りたいな。教えて、お兄ちゃん。」
「知らない。希空に変な虫がついてた事だけ知ってる。」
「へー。その人に明日会ってみよー。教えてくれてありがとねー。」
ガチャ
海音も月森と似たようなことを言ってくるのか。
希空は僕…、僕とお父さんお母さんの言うことだけ聞いてれば幸せに生きられるんだ。
邪魔をするなら…。
「海音でも関係ないよ。」




