ざまぁ展開 被害者ヅラをするニナ
「はい。これで登録完了です」
とギルドの受付の女性は言う。俺は冒険者ギルドに『白銀の翼』加入のために来ていた。
これで俺は白銀の翼のリーダーになった……いやなってしまった。大丈夫なのか?
「こちらがバッジとなります。無くさないようお気をつけください」
受付嬢は言う。
俺は小さなバッジを渡された。星が3つついているメッキ製のバッジだ。
「これは……」
俺はそのバッジを手に取り聞く。
「星三つのバッジになります。これを提示するとギルドと契約している武器屋や防具屋での購入は三分の一の値段に。教会の治療はタダ。宿屋もタダとなります。街での飲食店や酒場も無料で利用できます。それら全てをギルドが代わりに支払う形になります。その他様々な特典がございます」
と受付嬢は言う。
おっ! マジか……凄いな。このバッジ。持ってるだけで人生フリーパスかよ。
「ありがとうございました」
俺はギルドを出た。
「先生どうですか? 今のご気分は」
エリスが聞く。
「うん……なんだか信じられない。自分がトリプルスターズのクランに入ったなんて……これから活躍しないといけないな」
俺が言う。
「先生は魔王なんですからあとは覚醒していただくだけですよ」
エリスが言う。
ん? なんなんだ。前から気になってたがその魔王というのは。一体……
「そうやなぁ。まだ覚醒してへんみたいやからなぁ。なんとかきばって覚醒して貰わんと、ウチの充電も大変やわぁ」
ミヤビが言う。
「覚醒? 覚醒ってなに?」
「まぁじっくりと待とうじゃないか。先生が目覚めるその瞬間を」
ミラーカが俺を見て笑った。だからなんの話なんだ。
「あっ! 可愛い!!」
エリスが噴水の近くでリードに繋がれている犬に近づいた。
「おっ! わんわんじゃないか!」
ミラーカも犬を撫でる。
「えぇ!! 可愛いなぁ。名前なんて言うん?」
ミヤビも犬を撫でた。
俺はその三人の様子を微笑ましく見る。すると俺の背後から声がかかった。
「随分とご活躍されてるみたいですね。アーサー先生」
と恨みのこもった低い女性の声が聞こえる。
「うあぁ!」
バッっ! っと俺は後ろを振り返る。
するとそこには際どく胸元が見えているまるで娼婦のような格好のニナが居た。
「ニナ先生……」
俺は驚く。
「うふふ……先生。久しぶりですね。あ……この格好で分かっちゃいました? 私新しいバイト始めたんですよ。男の人を気持ち良くするバイトなんですけど……」
ニナはなんだか卑屈に笑っている。
「あ……あぁ」
俺はニナの変わりようにビックリする。
「私元々夜の商売やってたんですよ。で、過去を隠して学校に潜り込んだんですけど。バレちゃいました。ひょっとしてバラしたの先生ですか?」
ニナが聞く。
「えっ? なんの話?」
マジで意味が分からない。
ニナは俺を恨みのこもった目で睨みつける。
「私アーサー先生のせいで学校辞めさせられそうなんですけど」
ニナは俺を睨みつける。
「えっ? どういうこと?」
「先生! 私をレイプしたこと忘れたんですか?」
ニナが大声で叫んだ。
は? 一体なにを言ってるんだこいつは! 周りの視線が少しだけ俺たちに集まる。
「先生! あの飲み会の時に酔った私を無理矢理押し倒しましたよね!!」
ニナが叫んだ。
「おい! なにを言ってるんだ!」
俺は小声で叫んだ。
「私が被害者なのに!! 先生が加害者じゃないですか!! 先生が幸せになっちゃ駄目じゃないですか!」
ニナが叫んだ。
もちろん嘘だ。ハメのはニナの方だ。嘘をついて俺がニナをキスしたと……それで俺は学園を追放された。理不尽に。
ニナが卑怯な手を使い俺をハメた加害者だ。それがなぜ俺が悪いことになってるんだ?
「先生。どうかしました?」
エリスが俺の背後から俺に聞いた。
「あっ……あぁ。頭のおかしな人に絡まれて……」
俺は答える。
「アーサー先生! 私が学園に入ったとき私を無視してましたよね! あれ絶対イジメですよね! 私が生徒とのコミュニケーションに困ってる時! 先生なんて言いましたか? なんとかなるよって! 具体的なアドバイスをなにもしてくれなかったですよね!! それで私メチャクチャ困ったんですよ!!」
ニナは娼婦の格好で叫んだ。周りの通行人がニナを見る。
こいつなにを言ってるんだ……いやていうか全くの嘘だった。俺は無視していなかったし、新人教師としてニナには随分と気を使っていた。飲み会でゲロを吐いていたニナを介抱したのもなんとか助けてあげたいとの親心からだった。
それに不親切なアドバイスをしたとニナは言ったが、そもそもニナの仕事を教えるコーチ役はレイモンドだった。だからニナに仕事を教える責任は全てレイモンドにあった。俺にはない。
確かになんとかなるよと言ったがそれはニナの愚痴を散々聞いたあと多くのアドバイスをした。それでもニナがグチグチ言ってたので、なんとかなるよと言っただけだ。
なんて奴だ。自分が誰かからしてもらったことは当然のように忘れて
些細な被害を大げさに取り上げて被害者ヅラをする。
そしてこちらを一方的にこちらを悪者にする。
「ねぇ! みんな聞いてくださいよ! 私このアーサー先生にレイプされたんですよ!! そして職場で散々イジメられました!!」
とニナはついに周りの集まっている人たち相手に大声で被害者アピールを始めた!
「!……」
ヤバい。やんだこいつ。本気で頭がおかしいのか? なんでもありなのか。こいつは。どうしたらいいんだ。こんな頭のおかしい奴に絡まれたら俺は……
「いいから黙りなさい」
とエリスが言うと
「!」
ニナは急に黙った!
口をパクパクさせているニナ。沈黙魔法か?
俺はエリスを見る。
「違うよ。先生。今のはただの言葉だ。ただエリスの魔力が高すぎるんだ。魔力が強すぎると魔力の低い相手にはただの命令でも凄まじい強制力を持つ」
ミラーカが解説した。ニナは口をパクパクさせている。聞いたことがある。だが初めて見た。ただの言葉が魔力を込めた一言と一緒?……凄すぎるぞ。エリス。
「いま……この女性が君からレイプされたと訴えてたんだが……」
通行人の一人が言う。
「いえ、全く違うんです。この人の言ってることはデタラメで……被害をでっち上げられてるんです」
俺は答えた。
「おっ……そうか……なるほど」
俺の説明で通行人は納得したのか去っていった。
「えっ? 一体どういうこと? アーサーはんがこの子になんか酷いことしたん?」
ミヤビがよく分からない様子だ。
「違うよ!!」
俺は答える。
「とにかく屋敷まで連れ帰ろう。そこで痛い目に合わせないといけないな」
とミラーカが言うと。手で印を結んだ。その手の形は人差し指をピンっと伸ばした鬼のような形だった。ミラーカはその手の影を影絵のように地上に写すと、その影で出来た鬼はニナの影を手で掴んで引っ張りだした。
するとニナの体もニナの影に引きずられて動き出した。体をジタバタさせて口をパクパクさせるニナ。これがミラーカの魔法か……。
「酷い嘘つき! 絶対に真実を暴いてやる!!」
エリスはそう憤慨している。
「あぁ。あんなところで大声を上げて先生を侮辱した罪。絶対に払わせるぞ!!」
怒るミラーカ。
俺たちはナイトブリッジ家まで向かうことにした
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