3話 「パニック」
突然の警報が耳を貫いた。
スピーカーから聞こえるのはいかにも慌てている教師の声。
「全校生徒に告ぎます!今すぐ整列して体育館に向かってください!」
「めんどくせー」「だりー」「まじかよ、かえりてぇ」
男子たちは不満の声をあげる。
そこでもやはり委員長が男子達を制止し、廊下に並ばされる。
さっきの爆発と関係があるのだろうか?
胸がざわめくのを感じながら廊下に並んだ。
体育館では先生たちが忙しそうに走り回っている。
生徒達を怒る暇もないようだ。
クラスの皆は「芸能人でも来るか?」とはしゃいでいた。
その騒ぎを止めたのは黒板を引っ掻いたときに似ている、マイクのキーンとした高音だった。
先生たちが話をやめ、ステージの上に立っている校長先生に目をやる。
その声はまるで慌てている教師とは関係ないと言いたげな、意外にも落ち着いている声だった。
「えー、みなさんのなかには先程の爆発音が聞こえた人もいると思います。」
「爆発音?」「こわーい!」「事件でもあったのか…?」
再びざわめきだす生徒達。
「静粛に。今回集まってもらったのはそのことについてです。単刀直入に言うと、この近くの原子力発電所つまり「原発」で事故が発生しました。」
「原発?」「それって…やばくないか?」「放射能とか大丈夫なのかよ…」
生徒達の顔から光が失われる。
「政府の発表によれば、今回の原発事故による…」
ギャァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!
突然だった。突然の悲鳴だった。女子生徒の聞いたこともないような大きな悲鳴が体育館中に響き渡った。
「どうしたの!?」
委員長がその女子生徒の元に駆け寄る。
「やっ…やまっ…!やまだくんがっ!山田くんがっ!!!」
女子は震えた指を上げ、ある方向を示す。
その先にいたのは…
「ウガッ…ウガッ…ウガガガガッ!ウガガガガガガガ!」
あまりにも青白い顔をした山田だった。
いや…青白いという表現は間違っているかもしれない。
まるで信号機のような「蒼」だった。
「大丈夫ですか?体調でも悪いのかしら?保健室にいきましょ?」
委員長が彼に近づく。
グチュ!!!
肉をえぐるような嫌な音がした。
ブッシャッッッ!
音に続いて先程の「蒼」とは対照的な、澄みわたった「紅」が飛び散った。
「…え?」
力なく委員長が倒れる。
そして、山田は倒れている委員長に近づき
グッシャァァアア!!!
顔を胴体と違う物体にしてしまった。
「うっ…嘘だろ!?」
あのか細い山田が…なんの抵抗もなく委員長をいたぶっている。
ギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
女子生徒が先程よりも大きな悲鳴を上げた!
二度目の悲鳴でようやく生徒達がただならぬ事態に気付く。
生徒の一人が体育館の後ろにある扉へと駆け込む。
それを見た多くの生徒達は我を忘れてその小さな扉に走り出す。
「うわぁあぁぁぁああ!」「俺が先だっ!どけ!」「押さないで!痛いわよ!!!」
パニックだ。学校の体育館が一気に絶望で満たされる。
俺は世界が止まったかのように立ちすくんで動けなくなってしまっていた。




