↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
850/865

六本木編 転機


才能がない。


そして、失恋。


二つのことで追い詰められて、僕はいつしか、六本木へ行って、その夜を刹那的に楽しむことが生きがいになっていた。


そんな頃、転機が訪れた。


秀樹がアメリカから帰国した。


大学時代からの友人だった秀樹は、アメリカでMBAを取得し、日本の広告代理店に就職した。


そして、年収は二千万円。


僕は、その数字を聞いて心が動いた。


二千万円。


それまでの僕には、想像したこともない金額だった。


このまま日本の会社に勤めていても、そんな年収になることは考えられない。


秀樹は言った。


「おまえも外資系に転職しろよ。間違いなく年収二千万円になる」


僕の心は揺らいだ。


しかし、すぐに会社を辞めることはできなかった。


これまで働いてきた会社への忠誠心があったからだろうか。


いや、そうではなかった。


僕が大切にしていたのは、上司や同僚、そして先輩たちとの絆だった。


とくに先輩には、あの失恋のときに励ましてもらった。


上司にもかわいがってもらった。


会社そのものより、そこにいる人たちとの関係が、僕を会社につなぎとめていたのだと思う。


ところが、運命というのは不思議なものだ。


僕の周りにいた上司や先輩が、相次いで人事異動で去っていった。


僕を励ましてくれた先輩もいなくなった。


かわいがってくれた上司もいなくなった。


そして、新しく僕の上司になった部長と課長とは、どうしてもそりが合わなかった。


それまで僕を会社につなぎとめていたものが、一つずつ消えていった。


気がつくと、会社に残る理由がなくなっていた。


秀樹の言葉が、また頭に浮かんだ。


「おまえも外資系に転職しろよ」


僕は、会社を辞めようと思った。


それは、二千万円という年収だけが理由ではなかった。


才能を諦め、恋を失い、六本木で刹那的な楽しさを求めていた僕に、初めてもう一度、人生を変えてみようと思わせるものが現れたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。