坂本龍一 矢沢の音へのこだわり
坂本龍一 矢沢の音へのこだわり
坂本は「時間よ止まれ」の録音について、矢沢から**「こういうふうに弾いてほしい」と具体的な音を説明されるわけではなかった**と振り返っています。
> 「要するに勘だけであそこまでやってる人だから……こういう風に弾いてほしい、っていうことをね、うまく言えない」
そこで坂本は、矢沢が言葉で説明できないイメージを察して、
**「こういうことかな」**
と音で返す。
すると矢沢から、
**「だけど、ちょっと違うんだよな」**
と返ってくる。
そこでまた坂本が別の音を出す。
それを何度も繰り返したそうです。坂本自身が「音で返すって感じ」と表現しています。([ほぼ日][1])
そして坂本が特に面白がっていたのが、矢沢の音へのこだわりです。
**「何時間もそういうことが行なわれてて」**
最後には矢沢が、全員を「ピンポイント」で自分の欲しいところまで持っていく。
坂本は、
**「1曲を」作るのに「けっこう時間かかってる」**
と回想しています。([ほぼ日][1])
つまり、先ほどの「コード表を渡して、坂本が9thで弾き始めた」という話と合わせると、かなり興味深い録音風景になります。
**矢沢は細かなアレンジを指示しない。
坂本が音を出す。
矢沢が「違う」と言う。
坂本がまた音を変える。
それを何時間も繰り返す。**
そして、そのやり取りを中心に、スタジオにいたミュージシャンたちが音を作っていった。
実際、矢沢の公式50周年史でも、この録音は坂本、高橋幸宏、後藤次利、斉藤ノブらとエンジニア吉野金次が、非常にクリエイティブな環境で作り上げたものとされています。([矢沢永吉公式サイト][2])
**だから坂本の回想で一番重要なのは、「矢沢は何も分からないから任せた」のではなく、むしろ逆で、矢沢には頭の中に完成形がある。しかし、それを言葉や譜面では伝えられない。だから坂本が音で探り当てていった――ということです。**




