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フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


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プロデューサーとは、ただお金を出す人ではない。

プロデューサーとは、ただお金を出す人ではない。

作品をつくるために、企画を考え、資金を集め、劇場を押さえ、スタッフを集め、出演者を決め、宣伝をし、チケットを売り、そして公演が終わるまで、すべての責任を背負う人である。

役者にとっては、自分の役を演じることが仕事だ。

しかしプロデューサーは、作品全体を見ている。

この役者でいいのか。

この演出でいいのか。

この作品は客に届くのか。

赤字にならないのか。

劇場は埋まるのか。

そうした判断を、最後には誰かがしなければならない。その役割を引き受けているのがプロデューサーだ。

だから、プロデューサーに意見を言うこと自体が悪いわけではない。

むしろ、作品を良くするための意見なら、プロデューサーは歓迎する。

ただし、「自分の考えと違うから反発する」のと、「作品を良くするために意見を言う」のはまったく違う。

役者が自分の立場だけを考えてプロデューサーに口答えをする。

プロデューサーを小馬鹿にする。

自分を起用してもらったことへの感謝もなく、作品への協力もしない。

そういう人と、プロデューサーが次の作品でも一緒に仕事をしたいと思うだろうか。

人間だから、当然、考える。

「この人とは、もう仕事をしない」

それは怒鳴って決めることではない。

静かに次のキャスティングから名前が消えるだけである。

役者は、自分が舞台に立っている時間だけが仕事だと思ってはいけない。

一本の作品には、多くの人間とお金と時間が動いている。

その全体を背負っている人間がいる。

それがプロデューサーだ。

プロデューサーを尊敬しろ、と言っているのではない。

プロデューサーの立場と責任を理解してほしいのである。

そして役者にも、ひとつだけ覚えておいてほしい。

「また一緒に仕事をしたい」と思われる役者になること。

演技力だけではない。

人間として信頼できること。

作品のために動けること。

自分の立場だけで物事を考えないこと。

それも、役者の大切な才能である。

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