この俳優は、もう二度と使わない
この俳優は、もう二度と使わない
プロデューサーの立場は、実に複雑です。
会社にたとえれば、作品を成立させる責任を負う「社長」に近い立場にあります。資金を出し、人を集め、劇場を押さえ、宣伝を考え、最終的には作品全体の責任を引き受ける。
しかし、プロデューサーも一人の人間です。感情があります。好き嫌いもあれば、誇りもあります。どれだけ冷静に振る舞おうとしても、自分を小馬鹿にしたり、見下したり、プロデューサーに対して失礼な態度を取る俳優がいれば、心の中では当然傷つきます。
そういう時、プロデューサーが取るべき態度は、舞台上で感情をぶつけない。
じっと我慢する。
「今回は作品のためだ」と自分に言い聞かせ、稽古や本番が終わるまで感情を表に出さない。そして、すべてが終わったところで静かに判断する。
「この俳優は、もう二度と使わない」
それでいいのだと思います。
これは仕返しではありません。プロデューサーには、次の作品の出演者を選ぶ権利があります。誰を使うかは、演技力だけでなく、人間性、仕事に対する姿勢、スタッフへの敬意、作品に対する熱意などを含めて判断するものです。
特に危険なのは、「自分は俳優だから、プロデューサーより立場が上だ」と勘違いすることです。俳優は作品の重要な一員ですが、一人で作品を成立させることはできません。プロデューサー、演出家、脚本家、スタッフ、劇場、そして観客がいて、初めて舞台が成立します。
だからこそ、プロデューサーに対して意見を言うことと、プロデューサーを見下すことは全く違います。
意見は歓迎していい。
議論も必要です。
しかし、相手の人格や立場を軽く扱うことは別問題です。
プロデューサーは、その場で怒鳴る必要もありません。長々と説教する必要もありません。
ただ覚えておけばいい。
「この人とは、もう仕事をしない」
そして次の作品では、別の俳優を選ぶ。
プロデューサーにとって、一番大切なのは感情的に勝つことではなく、作品を成功させることです。だからこそ、怒りを表に出さず、最後まで仕事をやり切る。そして終わった後に、自分の経験として人選に反映させる。
それが、プロデューサーとしての「静かな決断」なのだと思います。




