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フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


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マイズナーテクニックは、俳優の「演技をする力」よりも、まず「相手を本当に見て、聞いて、反応する力」を鍛える訓練です。

マイズナーテクニックは、俳優の「演技をする力」よりも、まず「相手を本当に見て、聞いて、反応する力」を鍛える訓練です。


サンフォード・マイズナーが作った俳優訓練法で、中心にある考え方は「与えられた架空の状況の中で、真実に生きる」というものです。感情を自分から作るのではなく、相手や状況によって自分に何が起きたかを受け、それに反応することを重視します。([Meisner International][1])


### 1.まず「リピティション」


一番有名な練習です。


二人が向かい合います。


A「あなた、笑っている」


B「私は笑っている」


A「あなた、笑っている」


B「私は笑っている」


これを延々と繰り返します。


ただし、単に台詞を暗唱するのではありません。


Bの表情が変わった。


Aが少し嫌な顔をした。


BがAをじっと見た。


すると、


「あなた、笑っている」


という同じ言葉でも、意味や感情が変わってきます。


重要なのは「次に何を言おう」と考えないこと。


相手を見て、


「今、相手から自分に何が起きたか」


に反応します。これによって、俳優が頭の中で演技を設計する癖を減らしていきます。([Meisner International][1])


### 2.「独立した作業」をしながら演技する


次にかなり面白い訓練があります。


例えば、


「10分以内に壊れた時計を直さなければならない」


「手紙を完成させなければならない」


「複雑な書類を整理しなければならない」


など、本当に集中力が必要な作業をします。


そこへ相手が入ってきます。


相手と会話をしながらも、自分は作業を続ける。


つまり、


「演技をする」


のではなく、


「目的を持って本当に何かをしている人間になる」


わけです。([Elin Hilläng][2])


これは舞台では非常に重要です。


### 3.「ノック・アット・ザ・ドア」


さらに進むと、


部屋の中でAが必死に作業をしている。


そこへBがやってきて、ドアをノックする。


Aは作業をしているので、簡単には出ない。


BはどうしてもAにドアを開けさせたい。


ここで二人の「目的」がぶつかります。


台本に、


「Aは怒っている」


「Bは悲しんでいる」


と書いてあるから怒ったり悲しんだりするのではありません。


相手との関係の中で、本当に怒りや焦りが生まれてくることを狙います。([Backstage][3])


### 4.「エモーショナル・プレパレーション」


これはさらに高度です。


舞台に出る直前に、


「悲しい顔をしよう」


「怒った状態で登場しよう」


とはしません。


俳優が想像力を使って、自分の中にある感情の状態を作っておきます。


そして、その状態を持ったまま相手の前に出る。


しかし、相手が何かをした瞬間には、その相手に反応する。


つまり、


「感情を作って終わり」


ではなく、


「感情を準備して、相手によって変化させる」


わけです。([The Physics of Connection][4])


---


## マイズナーの訓練を順番にすると


かなり単純化すると、


**① 相手を見る

↓

② 相手の言葉を繰り返す

↓

③ 相手によって自分が変化する

↓

④ 自分の目的を持って行動する

↓

⑤ 相手との関係を入れる

↓

⑥ 感情の準備をする

↓

⑦ 最後に台本のシーンを演じる**


という階段を上っていきます。


実際、マイズナー系の訓練では、最初の数か月をリピティションなどの基礎訓練に費やし、その後、独立した活動、感情準備、シーンへと進んでいくカリキュラムがあります。([The Sanford Meisner Center][5])



「演技で大切なのは間」


という考え方と、マイズナーはかなり相性がいいと思います。


なぜならマイズナーでは、


「台詞を言うタイミング」


を頭で決めないからです。


相手を見る。


相手の言葉を聞く。


自分の中に何かが起こる。


そして、言葉が出る。


だから、結果として「間」が生まれます。


これは、**上手に台詞を言う演技ではなく、相手を受けた結果として台詞が出てくる演技**です。


そして舞台の演出家の立場から見ると、かなり重要なのがここです。


**「台詞を覚えている俳優」と「相手を受けて芝居ができる俳優」は別物です。**


マイズナーは後者を徹底的に鍛える方法、と考えると分かりやすいです。



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