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フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


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出版トラブル 「全国の書店で販売します」


【B大手出版社をめぐる出版トラブル 第4話】


「全国の書店で販売します」


作家にとって、この言葉は魅力的だ。


自分の本が、紀伊國屋書店、三省堂書店、大型書店の棚に並ぶ。


そう聞けば、


「自分の本が全国に出ていく」


と思うのも無理はない。


ところが――


「書店で販売する」


と、


「書店の棚に、普通の新刊として並ぶ」


は、必ずしも同じではない。


当時の「共同出版・自費出版の被害をなくす会」の資料には、書店流通について非常に興味深い説明がある。


書店への流通には、大きく分けて二つの方法がある。


一つは、出版社から取次を通じて書店へ配本する方法。


もう一つは、書店から注文が入った場合に、その注文に応じて本を送る方法。


つまり、


「全国の書店で注文できます」


と、


「全国の書店の棚に並びます」


は、まったく違う。


さらに、提携書店に出版社専用の棚を確保するケースもあるという。


いわゆる「棚借り」「棚買い」と呼ばれる方法だ。


この場合、書店に本が置かれていても、それが通常のジャンル別の棚に置かれているとは限らない。


同時期に出版された本が、出版社ごとにまとめて置かれることもある。


つまり、


「大型書店に置かれている」


という事実だけでは、


「一般の新刊と同じように売れている」


とは判断できない。


実際、当時の資料には、


「全国に提携書店があり、一定期間、必ず本が並ぶ」


と説明された場合でも、


「どの書店に、どのような形で並ぶのか」


「その費用は誰が負担するのか」


「売れ残った本はどうなるのか」


を契約前に確認すべきだ、と書かれている。([共同出版・自費出版の被害をなくす会][1])


ここは非常に重要だ。


出版を考えている人は、


「書店に置かれる」


という言葉だけで安心してはいけない。


聞くべきなのは、


「何店舗ですか?」


ではない。


「どの店舗ですか?」


「何冊ですか?」


「何日間ですか?」


「どの棚ですか?」


「売れ残った本はどうなりますか?」


「その費用は誰が負担しますか?」


である。


そして、もう一つ。


「売れた」という数字にも注意が必要になる。


出版社から書店へ送られた冊数なのか。


書店から読者に売れた冊数なのか。


ここには大きな違いがある。


本が書店に届いた。


それだけでは、


「読者に売れた」


ことにはならない。


出版の世界では、


「配本」

「陳列」

「注文」

「実売」


という言葉を区別して考える必要がある。


そして、この先にもう一つ大きな問題が出てくる。


売れ残った本は、いったいどこへ行くのか。


次回は、


「返品された本」


について調べてみたい。


本が売れなかったとき、


誰が損をするのか――。


ここから出版契約の本当の姿が見えてくる。



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