第6話 VS キングオーク①
「ボォォォオオオアアアア!!!!」
金棒を持つキングオーク。その叫び声で、床や壁は地震が起きたように震動する。
「ぐあっ!」
「耳が……」
冒険者たちは耳を塞ぐ。その瞬間、キングオークはその場から姿を消した。
——いや、消えたのではない。
「はやっ……!」
キングオークは、冒険者の先頭に立つミナトの眼前に移動していた。
振り下ろされる金棒。
すんでで避けるミナト。
それは、耳元で風を切る。
すぐに翻ると、ミナトはキングオークに手を翳した。
「ウィンド!!」
「ボウッ」
キングオークの顔面に命中する。が、その体躯だ。嫌がるような表情を見せるが、微動だにしない。
「グオオオ!!」
その雄叫びに合わせて、再び金棒が向かってくる。キングオークの薙ぎ払いだ。ミナトは掌を広げると、今度は地面に翳す。
「ウィンド!」
地面に向けられた風魔法は、突風となりミナトの体を持ち上げた。ふわりと舞い上がり、キングオークの金棒を避ける。
ミナトを見失ったのだろう。キングオークは眼下で激しく首を振っていた。
——今だ。
キングオークの頭上から、ミナトは自由落下していた。剣先を真下に向け、頭蓋を狙う。
「トツ・スタブッ!」
ミナトの剣先はキングオークの頭を掠め、右肩に命中した。
「ブオオアアア!!」
くそ。ギリギリで避けたか。
ミナトは風魔法を駆使し緩やかに地面へと降りると、バックステップで距離を取った。
キングオークの肩からは、血が流れている。しかし、動きを確認するように右腕を動かすと、先程と変わらずに金棒を握り直した。
「はあ、はあ」
致命傷には至っていないか。あの大きさ、火力が足りない。どうにか冒険者の中に高火力を出せるやつは……。
ミナトは後ろに首を回した。
「な、何だよあれ……」
「無理だろ、あんなの」
しかし、冒険者はほとんどがD級。高火力はおろか、武器を構えているものさえ少なかった。
……どうする。俺だけじゃ良いとこ互角だ。
すでに観客と化した後ろを見限るように、ミナトは視線を前方に戻した。
すると、キングオークは、何やら不気味な表情を浮かべた。
「ブヘァァアア」
なんだ。細めた目と這い出る舌。
まるで……いや、そうだ。あいつ、笑っている……?
「バアッ!!」
ミナトが気づいた時には、すでにキングオークは天高く跳躍していた。
は……? あいつどこに……?
それはミナトを軽々と越え、背後に着地する。
「うわ! こっちに……!」
冒険者の声。
くそ、そういうことか!
「逃げろ!」
ミナトは叫ぶ。しかし、キングオークはすでに金棒を振り上げていた。
「ウィンド!!」
ミナトは背後に掌を向けると、その突風で飛ぶように駆け出した。しかし、遠くに映る視界には、すでに振り下ろされる金棒。
ダメだ、間に合わない……!
その瞬間、視界の端から何者かが横切った。
「ディフェンサー!!」
響いた声は、女性のものだろうか。直後、振り下ろされた金棒と同時に爆発音が部屋を覆う。
「きゃあっ!!」
女性の叫び声と同時に、キングオークの陰から人影が吹き飛ばされる。
あの攻撃を受けたのか……? 何にしろよくやった。
ミナトが走りながら目を凝らすと、そこには見覚えのある盾姿が映った。
まさか、あいつは……!
「アホタンク!!」




