第57章
「翌日、美鈴さんは店に出る筈だったのに連絡なしに休んでいたから、店長に電話のことを話して、美鈴さんの身に何か悪いことが起こったに違いないって言ったんだけど、社長も店長もスキャンダルになることを恐れたのか、「美鈴のことだから大丈夫だ」なんて言うの。
でも、五日ぐらい経っても美鈴さんから何の連絡がないものだから、店員さんが彼女のアパートに行ってみたのね。ドアは閉まっているし、隣の部屋の人に聞いても、ずっと帰っていないようだと言うので、社長がやっと警察に届けたの。そうしたら、あんな具合になっていて……」
「そうか……」
正夫は長くため息をついた。
「それで君が犯人のことを聞いていたことが逮捕につながったわけだ」
「うん。そうみたい。うちの店に何度か来て、美鈴さんが相手をしたことがあったらしいの。警察から聞いた話だけど、美鈴さん、色んな客と店外デートして、お金を貰って本番をしていたみたいなの。そういえば、前に金持ちのお客さんが三十万円小遣いをくれたって喜んでいたけど、いくらお金持ちでも何もしないで、そんな大金くれるわけないよね」
「三十万とはごついよな。しかし、今度は客を見誤ったってわけか」
「ねえ、美鈴さんって可哀相だと思わない」
正夫が頷くのを見て、花蓮は首を横に振った。
「ううん、そうじゃないの。あんな酷い殺され方をしたのが可哀相なのはもちろんだけど、最後に電話を掛けた相手が私だったことが切ないの。
殺されることはないだろうと、美鈴さんは言ってたけど、後で考えたら、彼女、殺されるかもしれないと思っていたような気がするの。
だから、私にあんな謝るような電話を掛けてきたんじゃないかと思うの。
死を予感した時に、最後に話をする相手が親でも恋人でもなく、こんな仕事をしている同僚の私だったなんて……。美鈴さん、哀れだよ。可哀相だよ」
花蓮の瞳に涙が溢れ、大粒の涙がこぼれ落ちた。
別れ際、正夫は気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「さっき、美鈴さんが僕のことを話したって言っていただろう?あれはどういう内容だったんだい」
「ああ、あれはね……」
そう言うと花蓮は口ごもった。
「……実は、川村さんの相手をした時、下手で全然気持ち良くなかったけど、私への当てつけで、他の女の子に聞こえるように、わざと大きな声を出したっていうことなの」
美鈴の様子は大仰で、芝居がかっていたので、そういうことだろうとは思っていたが、実際のところを聞くと、正夫はやはりがっかりした。




