第40章 閑話その四
畑に行くと言って出掛けたのに、こんな人形を家に持って帰るわけにはいかない。正夫は土産のビニール袋に人形を入れたまま、車のダッシュボードの中に隠した。
月曜日に帰宅すると、すぐに二階の自分の部屋に上がり、本棚の上に人形を置いた。
翌日の夕食の時、「あの人形はどうしたの?」と妻に尋ねられた。
もう気が付いたのか、内心どきりとしながらも、平静を装って、
「部下の一人がインドネシアに旅行に行ってね。あの人形が僕に似ていると思ったそうで、おみやげに買ってきてくれたんだ」
「女の人なの?」
またどきりとする。これが女のカンというやつか。
「いや、男だよ」
「へえー、面白そう。どこに置いてるの?」
娘が口を挟んできた。
「お父さんの部屋の本棚の上に置いているわよ」
「そんなにお父さんに似ているの?」
「いや、あまり似ていないけどね」
「似ているわよ。とぼけたことを言う時の表情とそっくり。県庁でもあんな顔をする時があるのね。買ってきた人は、よくあなたの顔を見ているのね」
「見て来よっと」
そう言いながら、娘が立ち上がった。
「きゃあ!何これ、いやらしい!」
二階から大きな声が聞こえ、バタバタと階段を下りてくる音がした。
「ねえ、お母さん、これ見て。こんないやらしい仕掛けがあるのよ」
「まあ、本当!いやらしい」
「だから、男が買ってきたって言っただろう」




