第34章
この日、花蓮は自分のことを話した。
父親はかなりひどい人だったようだ。酒を飲んでは暴力を振るった。母親がパートで稼いだ金をむしり取って、酒やギャンブルや遊びに使った。典型的な駄目な父親だった。それが彼女が高校生の時に借金を残して急に死んだ。
今は母親と歳の離れた弟二人と四人で暮らしている。借金や弟の学費を稼ぐために今の仕事をし始めた。上の弟は大学生で、下は専門学校に通っている。
「上の弟はうちの家系では珍しく、お勉強が出来るの」と、嬉しそうに言った。
花蓮は正夫に何かの奉仕をし、正夫が喜ぶことに喜びを感じるようだった。
プレイの最中、よく上げ口調で「気持ちい?」と聞いてくる。
それに頷くと、目を細めて満足したように微笑んだ。
しかし、「綺麗だ」と褒めたり、先程のように「愛してる」などと言ったりすると、無表情になり、黙ったまま目を大きく見開いて正夫の顔を見つめるだけだった。
あの目は真偽を確かめようとしているように思われた。どれだけ本気で言っているのかを探ろうとする目だ。
たくさんの客がより大きな快感を得るために、彼女を褒め、甘い言葉を口にするのだろう。それだけに自分の言葉も信用出来ないのだろうか?
一方、正夫も彼女がどれだけ本心を言っているのかいまだに判断がつかない。
自分達はお互いに相手の真意がどこにあるのかを測りかねていて、探り合っている奇妙な関係であるように思われた。




