第46話 にぎわいの中央市場
朝日が昇ると同時に、リリアは建設予定地へ向かった。
そこは国のほぼ中央。
東西南北どこからでも集まりやすい場所だった。
アルトが地図を見ながら尋ねる。
「市場をここに作る理由は?」
リリアは地面に一本の線を引いた。
「ここがメインストリート。」
さらに横へ線を引く。
「こっちは生活通り。」
「人ってね。」
「目的がなくても歩きたくなる道があるの。」
「歩きたくなる道?」
「うん。」
「歩いていたらパンの香りがして。」
「お花が咲いていて。」
「誰かと『おはよう』って挨拶して。」
「そんな毎日って素敵でしょ?」
アルトは優しく笑った。
「君は建物じゃなく、毎日を設計しているんだな。」
「そうかもしれない。」
リリアは少し照れながら答えた。
設計図には、大きな円形広場が描かれていた。
中央には噴水。
その周りを囲むように石畳。
放射状に広がる商店街。
屋根付きの歩道もあり、雨の日でも買い物ができる。
「これは便利だ。」
王都の商人が感心する。
「しかも店の前が広い。」
「荷物の積み下ろしもしやすい。」
「そうなの。」
リリアは頷く。
「お客様だけじゃなくて、お店の人も働きやすくないとね。」
建設が始まる。
職人たちは慣れた手つきで石畳を敷いていく。
木材が組み上がり、可愛らしい店舗が並んでいく。
パン屋。
八百屋。
花屋。
仕立て屋。
雑貨屋。
鍛冶屋。
本屋。
どの店も外観が少しずつ違う。
「同じ形じゃないんですね。」
若い大工が驚く。
リリアは笑顔で答えた。
「全部同じだと迷子になっちゃうから。」
「それに。」
「お店にも個性があった方が歩いていて楽しいでしょ?」
フィオナは花壇へ色とりどりの花を植えていく。
ミアは新しいパンの看板を掲げた。
「焼きたてパンあります!」
かわいらしい文字に、子どもたちが集まってくる。
「もう食べたい!」
「まだ開店前だよ。」
ミアが笑う。
昼過ぎ。
最後に残ったのは、広場の中央だった。
「ここには何を作るんですか?」
グレッグが尋ねる。
リリアは静かに微笑む。
「噴水。」
「でも、ただの噴水じゃないよ。」
クラフトハンマーを握り、静かに唱える。
「クラフト。」
青白い光が地面を包む。
石が積み上がる。
透き通った白い石で作られた噴水。
中央には、小鳥が羽を広げた彫刻。
やがて水が勢いよく噴き上がる。
キラキラと光を反射しながら、水しぶきが風に乗って舞う。
「きれい……。」
子どもたちは目を輝かせた。
水辺へ駆け寄り、小さな歓声を上げる。
ベンチでは、お年寄りが笑顔で噴水を眺めている。
パンを買った家族が芝生で昼食を楽しむ。
商人たちは店先で笑顔を交わす。
まだ完成したばかりなのに、市場には自然と人が集まり始めていた。
クラフトガイドが光を放つ。
---
【施設完成】
中央市場
★★★★★
【効果】
・商業発展
・経済力上昇
・観光客増加
・住民交流促進
・幸福度上昇
---
続けて、新たな通知が表示される。
【人口 520人】
【国家レベル 5】
【国家評価】
★★★★☆
【新施設解放】
王城
リリアは画面を見つめた。
「……とうとう。」
アルトも静かに頷く。
「いよいよだね。」
二人は丘の上を見上げる。
国のどこからでも見える、小高い丘。
そこだけは、まだ手つかずのままだった。
「あそこに、お城を建てよう。」
リリアがそう言うと、住民たちも一斉に丘を見つめた。
誰かが小さく拍手をする。
その拍手は次第に大きくなり、やがて市場中へ広がっていく。
「リリアさん!」
「アルト様!」
「お願いします!」
「この国のお城を!」
住民たちの笑顔を見ながら、リリアは胸に手を当てた。
最初は、自分が住むための小さな家を建てた。
次に街を作った。
スパを作った。
そして今、多くの人が暮らす国がここにある。
残る大きな建物は、ただ一つ。
この国の象徴となる城だった。
リリアはアルトへ手を差し出す。
「一緒に建てよう。」
アルトはその手をしっかりと握る。
「ああ。」
「みんなが誇れる城を。」
夕日に照らされる丘の上。
そこにはまだ何もない。
しかしリリアの瞳には、白い城と、その周りに広がる幸せな街並みが、はっきりと見えていた。




