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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第5章 城と国づくり

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第43話 最初の住民

翌朝。


「見えてきたぞ!」


街道の向こうから、数台の馬車がゆっくりと近づいてきた。


荷物を積んだ馬車。


子どもたちを乗せた馬車。


家畜を連れた荷車。


「本当に来た……。」


リリアは目を丸くする。


アルトが微笑んだ。


「王都で募集をかけたんだ。」


「『新しい町の最初の住民を募集します』ってね。」


馬車が止まり、人々が次々と降りてくる。


鍛冶職人の一家。


パン職人の夫婦。


農家の家族。


大工。


仕立て屋。


花農家。


総勢三十人ほどだ。


しかし、みんな少し不安そうな表情をしていた。


「本当にここで暮らせるのかな……。」


「まだ家しかないぞ。」


「仕事はあるんだろうか。」


そんな声が聞こえてくる。


リリアは一歩前へ出た。


「ようこそ!」


満面の笑みで頭を下げる。


「この町へ来てくださって、本当にありがとうございます!」


その笑顔に、人々の表情が少し和らいだ。


「私はリリアです。」


「この町を、世界一住みやすい場所にしたいと思っています。」


一人の農夫が手を挙げた。


「質問してもいいですか?」


「もちろん!」


「まだ何もない町なのに、どうしてここへ人を呼んだんです?」


リリアは少し考え、にっこり笑った。


「何もないからです。」


「え?」


「町ってね。」


「建物だけじゃできないの。」


「暮らす人がいて初めて町になる。」


静かになった。


リリアは続ける。


「だから私は、お城より先に家を建てました。」


「市場より先に暮らしを作ります。」


「みんなと一緒に、この町を育てたいんです。」


その言葉を聞いた年配の女性が微笑んだ。


「いい町になりそうだねぇ。」


緊張していた空気が、少しずつ柔らかくなる。


「それじゃあ!」


リリアは大きな地図を広げた。


「今日は家を決めます!」


「好きな場所を選んでください!」


「えっ?」


住民たちは驚いた。


「普通は身分順じゃないのか?」


「抽選でもありません。」


「自分が住みたい場所を選んでください。」


アルトも少し驚く。


「それで揉めないか?」


「大丈夫。」


リリアは笑った。


「ちゃんと理由があるから。」


まず花農家の夫婦を呼ぶ。


「お花を育てるなら、川の近くがいいですよね。」


「はい!」


「日当たりもいいです。」


次に鍛冶職人。


「工房は少し離れた場所にしましょう。」


「音が出ますから。」


「なるほど!」


パン職人には市場予定地の近く。


農家には広い畑のそば。


仕立て屋には人通りの多くなる予定地。


一人ひとりの仕事に合わせて家を決めていく。


「すごい……。」


宰相バルディアが感心した。


「町全体を考えて配置している。」


リリアは照れくさそうに笑う。


「毎日暮らす場所だから。」


「便利じゃないと困るもん。」


昼過ぎ。


全員の家が決まった。


子どもたちはもう走り回って遊んでいる。


「あっ!」


一人の小さな男の子が転びそうになる。


リリアは慌てて駆け寄る。


「大丈夫?」


「うん!」


男の子は笑顔で立ち上がる。


「ここ広い!」


「いっぱい走れる!」


その笑顔を見て、リリアも笑った。


「そうだね。」


「いっぱい遊んでね。」


すると男の子が真剣な顔で聞いた。


「ねぇ、お姉ちゃん。」


「公園はある?」


リリアは一瞬止まる。


「公園?」


「ブランコ!」


「滑り台!」


「みんなで遊べる場所!」


周りの子どもたちも一斉にうなずく。


「欲しい!」


「遊びたい!」


リリアはアルトを見る。


アルトは苦笑した。


「予定にはなかったな。」


リリアは子どもたちを見つめ、優しく微笑んだ。


「……追加しよう。」


「えっ!」


「この国で最初に作る公共施設は、公園!」


子どもたちから大歓声が上がる。


「やったー!」


「ブランコー!」


「滑り台ー!」


グレッグは頭をかいた。


「また仕事が増えたぞ。」


「でも。」


フィオナが笑う。


「子どもたちの笑顔のためですから。」


職人たちも笑顔でうなずいた。


その夜。


クラフトガイドが静かに光る。


---


【住民 30人】


【幸福度 82】


【住民からの要望】


・公園


・学校


・診療所


・市場


---


リリアは画面を見つめながら、嬉しそうに微笑んだ。


「よかった。」


「建物を作るだけじゃなくて。」


「ちゃんと"暮らし"が始まってる。」


アルトはその横顔を見ながら、小さくつぶやく。


「君は国を作っているんじゃない。」


「人が幸せになれる毎日を作っているんだ。」


翌朝。


リリアは大きな設計図を机いっぱいに広げた。


中央に大きく書かれている文字は一つ。


『みんなの公園』


ここから、この国はさらに賑やかに成長していくのだった。

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