↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第5章 城と国づくり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/50

第42話 みんなが帰る家

翌朝。


東の空から昇る朝日が、広大な草原を黄金色に染めていた。


まだ建物は一つもない。


あるのは昨日リリアが打ち込んだ一本の杭だけ。


それでも職人たちは、どこか嬉しそうだった。


「さて!」


リリアは地図を広げる。


「今日から建築開始!」


「おおーっ!」


全員が元気よく返事をする。


グレッグが腕を組んだ。


「まずは城だな?」


リリアは笑いながら首を振る。


「まだ早いよ。」


「え?」


「お城は最後。」


職人たちは顔を見合わせた。


「王様の家なのに?」


リリアは丘の上から周囲を見渡す。


「みんなは、家族が雨の日も安心して眠れる家と、お城。」


「どっちを先に建ててほしい?」


その問いに、職人たちは少し考える。


やがてミアが答えた。


「家……です。」


「ですよね。」


リリアは微笑んだ。


「王様だけ立派な家に住む国じゃなくて。」


「みんなが安心して暮らせる国にしたい。」


アルトは静かに頷いた。


「それでこそ君らしい。」


「だから。」


リリアは設計図を広げる。


そこには今までの家とは少し違う図面が描かれていた。


「今回は標準住宅を作る。」


「標準住宅?」


「誰でも建てられる家。」


「家族が増えても増築できる。」


「修理もしやすい。」


「冬は暖かく。」


「夏は風が通る。」


「材料も少なくて済む。」


王都の技師たちは目を丸くした。


「量産できる家……。」


「しかも住みやすい。」


リリアはうなずく。


「みんなが幸せになるには。」


「特別な家を一軒作るより。」


「良い家を百軒作る方が大事だから。」


その考え方に、宰相バルディアは深く感心した。


「……これが国づくり。」


「街づくりとは視点が違う。」


建設が始まった。


「クラフト!」


リリアがハンマーを振る。


光が草原を駆け抜ける。


基礎が現れ、柱が立つ。


壁が組み上がり、屋根が載る。


しかし今回は、それだけでは終わらない。


「窓は少し大きく。」


「朝日が入る向きに。」


「玄関の前には小さな屋根。」


「雨の日でも濡れないように。」


「ここには花壇。」


「子どもが遊べる庭も。」


細かな工夫が次々と加えられていく。


「家ってね。」


リリアは作業を続けながら話す。


「寝る場所じゃないの。」


「帰ってきて『ほっ』とする場所なの。」


グレッグは笑った。


「相変わらず細かいな。」


「大事なことだよ。」


夕方。


一軒目の家が完成した。


白い壁。


木の温もりを感じる玄関。


赤茶色の屋根。


窓辺には花箱。


小さいけれど温かい家だった。


「いい家だ。」


アルトが静かにつぶやく。


リリアは扉を開ける。


中には暖炉。


家族で食事ができる大きなテーブル。


窓際には読書用の椅子。


二階には子ども部屋まで用意されていた。


「もう住みたい。」


フィオナが笑う。


「私も。」


ミアもうなずく。


その時、クラフトガイドが光を放った。


【施設完成】


**標準住宅 第一号**


【評価】


★★★★★


【効果】


・住民幸福度上昇


・建築コスト20%削減


・増築可能


・快適度上昇


さらに新しい通知が現れる。


【新機能解放】


**住宅設計図の共有**


リリアは目を見開く。


「共有?」


画面を確認すると、設計図を職人全員へ配布できる機能だった。


「すごい!」


「これならみんなも同じ家を建てられる!」


王都の技師たちは驚きを隠せない。


「今まで設計は職人だけの技術だった。」


「これなら誰でも同じ品質で建てられる……。」


リリアは嬉しそうに微笑む。


「一人じゃ国は作れない。」


「だから。」


「みんなが作れる仕組みを作るんだよ。」


アルトはその言葉に感心した。


「君は建物だけじゃなく。」


「技術まで残そうとしているんだな。」


「うん。」


「私がいなくなっても。」


「この国はずっと発展してほしいから。」


その言葉を聞いた職人たちは、胸が熱くなった。


リリアは自分だけが評価されることを望んでいない。


誰もが技術を学び、誰もが家を建てられる国。


それが彼女の理想だった。


夕日が沈む頃。


草原には十軒の家が並んでいた。


まだ小さな集落。


けれど昨日まで何もなかった場所とは思えないほど、温かな景色が広がっていた。


煙突からは煙が立ち上り、窓からは灯りが漏れる。


「ただいま。」


仕事を終えた職人の一人が、思わずそう口にした。


リリアはその言葉を聞いて、嬉しそうに微笑んだ。


「うん。」


「おかえり。」


こうして、未来の王国で最初の「暮らし」が始まった。


そして翌朝、新たな住民となる家族を乗せた馬車が、この小さな集落へ到着するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。