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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第4章 癒やしのスパリゾート

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第39話 隠していた名前

王城の謁見が終わり、リリアたちはスパリゾートへ戻ってきた。


「ただいま!」


「おかえりなさい!」


職人たちが笑顔で迎えてくれる。


「王様はどうだった?」


「怖かった?」


グレッグが興味津々で聞く。


リリアは苦笑した。


「すごく優しいおじい……じゃなくて、国王陛下だったよ。」


みんなが笑う。


「リリアらしいな。」


アルトも思わず吹き出した。


そんな穏やかな空気の中、一台の豪華な馬車がスパリゾートへ到着した。


王家の紋章が描かれている。


「王都から?」


リリアが首をかしげる。


馬車から降りてきたのは、近衛騎士団長だった。


「王命です。」


その一言で場の空気が引き締まる。


騎士団長はアルトの前まで歩き、片膝をついた。


「アルト殿下。」


その呼び名に、リリアは固まった。


「……え?」


職人たちも動きを止める。


団長は続ける。


「国王陛下がお呼びです。」


「至急、王城へお戻りください。」


静寂が流れた。


リリアはゆっくりとアルトを見る。


「……殿下?」


アルトは小さく目を閉じた。


「隠していて、ごめん。」


「え?」


「僕の本当の名前は――」


アルトはリリアへ向き直る。


「アルト・ルクス・エルディア。」


「この国の第二王子だ。」


言葉が出ない。


リリアの頭は真っ白になった。


「…………。」


十秒ほど沈黙が続く。


「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


山中に大きな叫び声が響いた。


グレッグも口を開けたまま固まる。


「王子ぃ!?」


フィオナは慌てて頭を下げる。


「し、失礼しました!」


ミアも青ざめる。


「私、普通に肩を叩いちゃいました……。」


アルトは苦笑しながら首を振った。


「今まで通りでいい。」


「僕はみんなと一緒に家を建てて、一緒に汗を流したアルトだ。」


「でも……。」


リリアはまだ混乱していた。


「あの時、一緒に木を切ってたよね?」


「切った。」


「家具も運んでたよね?」


「運んだ。」


「泥だらけにもなってたよね?」


「なってた。」


「王子なのに?」


アルトは笑う。


「あれが楽しかったんだ。」


その笑顔は、旅人だった頃と何も変わらない。


リリアはしばらく黙っていたが、やがて大きくため息をついた。


「なんだ。」


「アルトはアルトか。」


「……怒らないの?」


「ちょっとびっくりした。」


「でも。」


リリアは笑顔を浮かべる。


「身分が変わっても、クラフト仲間でしょ?」


その言葉に、アルトは少し目を潤ませた。


「ありがとう。」


その時だった。


王都から来た使者が新しい巻物を開く。


「第二王子アルト殿下。」


「並びに王国特別建築顧問リリア殿。」


「国王陛下より、新たな勅命です。」


二人は顔を見合わせる。


使者はゆっくりと読み上げた。


「王国東部の未開拓地を、新たな領地として開発せよ。」


「城。」


「城下町。」


「港。」


「農地。」


「すべてを備えた新しい都市国家の建設を命ずる。」


職人たちは息をのんだ。


家づくりから始まったリリアのクラフトは、街をつくり、スパリゾートをつくり、ついに一つの国を築く仕事へと変わろうとしていた。


アルトはリリアへ静かに手を差し出す。


「一緒に来てくれる?」


リリアはその手を見つめる。


そして、いつもの笑顔で力強く握り返した。


「もちろん!」


「今度は世界一住みたい国を作ろう!」


こうして二人は、新たな夢へ向かって歩き出す。


それは、一人の建築好きな少女と、一人の王子が紡ぐ、王国史上最大のクラフト計画の始まりだった。


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