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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第4章 癒やしのスパリゾート

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第38話 王城への招待

「む、無理無理無理!」


リリアは招待状を両手で持ったまま、その場にしゃがみ込んだ。


「相手は国王陛下だよ!?」


「何を話せばいいの!?」


「失礼があったらどうしよう!」


昨日までスパの設計図を描いていた少女とは思えないほどの慌てぶりだった。


その様子に職人たちは笑いをこらえている。


グレッグが豪快に笑った。


「大丈夫だ!」


「いつも通り話せばいい!」


「それが一番無理!」


リリアは勢いよく立ち上がる。


「相手は国王様だよ!」


「『こんにちは!』なんて言えないよ!」


フィオナがくすっと笑う。


「でもリリアさんなら大丈夫です。」


「どうして?」


「誰に対しても同じ笑顔ですから。」


その言葉にリリアは少しだけ落ち着いた。


「……そうかな。」


アルトは静かに微笑む。


「そのままの君で行けばいい。」


「飾ろうとすると、逆に失敗する。」


「アルト……。」


その言葉に背中を押されるように、リリアは深呼吸をした。


「よし。」


「行ってくる!」


二日後。


王都。


巨大な城壁に囲まれた王城は、朝日に照らされて輝いていた。


「大きい……。」


リリアは思わず立ち止まる。


自分がこれまで建ててきた建物とは比べものにならない。


白い石造りの城。


高くそびえる塔。


美しく手入れされた庭園。


「すごい。」


建築好きとして純粋に感動してしまう。


「中へどうぞ。」


近衛騎士に案内され、王城へ入る。


廊下には豪華な赤いじゅうたん。


壁には歴代国王の肖像画。


天井には繊細な装飾。


リリアは思わず足を止めた。


「……もったいない。」


「え?」


案内役が振り返る。


「この窓。」


「景色がすごくいいのに、椅子がない。」


「ここにベンチを置いたら、休憩できるのにな。」


騎士は目を丸くした。


「そ、そういうところを見るのですか?」


「はい。」


「景色が素敵なのにもったいないです。」


騎士は思わず笑ってしまう。


「なるほど。」


「あなたらしいですね。」


やがて大広間の扉が開いた。


「リリア殿、ご到着です!」


大きな声が響く。


玉座には国王。


その左右には王妃、宰相バルディア、王国の重臣たちが並んでいた。


リリアは緊張で体が固まる。


(どうしよう……。)


(足が震える……。)


そこへ国王が穏やかに笑った。


「そう緊張せずともよい。」


その声に聞き覚えがあった。


リリアは顔を上げる。


「あっ!」


思わず声が漏れる。


「あの時の……。」


国王は笑って頷いた。


「先日は素晴らしいおもてなしをありがとう。」


「え?」


「変装して視察に行っておった。」


リリアの頭が真っ白になる。


「あのおじいちゃん……。」


しまった、と口を押さえた。


大広間が静まり返る。


(終わった……。)


リリアは青ざめる。


しかし次の瞬間。


「はっはっは!」


国王が大声で笑い始めた。


重臣たちも驚く。


「久しぶりに『おじいちゃん』と呼ばれたぞ!」


「悪い気はせん!」


場の空気が一気に和らいだ。


リリアは胸をなで下ろす。


「す、すみません!」


「謝る必要はない。」


国王は玉座から立ち上がる。


「私は王としてではなく、一人の旅人としてあの場所を訪れた。」


「そこで見たものは忘れられん。」


国王はゆっくり歩きながら語る。


「身分に関係なく笑い合う人々。」


「子どもたちの笑顔。」


「疲れた旅人の安らかな寝顔。」


「そして、お前が作った景色。」


「……。」


「建物は、いずれ古くなる。」


「だが、人の心に残る思い出は消えぬ。」


リリアは静かに話を聞いていた。


国王は彼女の前で立ち止まる。


「リリア。」


「お前は建築士ではない。」


「人々の幸せを築く者だ。」


そう言って、一枚の巻物を差し出した。


「これを受け取ってほしい。」


リリアが開くと、美しい文字でこう書かれていた。


**『王国特別建築顧問』**


「えっ?」


「今日より、お前を王国特別建築顧問に任命する。」


「建物だけではなく、人々が幸せに暮らせる国づくりに力を貸してほしい。」


重臣たちから拍手が送られる。


リリアは目を潤ませながら深く頭を下げた。


「……はい。」


「精一杯頑張ります。」


その様子を少し離れた柱の陰から見つめる一人の青年がいた。


アルトである。


「父上も、ついに決断したか。」


小さく微笑む。


その横には第一王女セレスが立っていた。


「お兄様。」


「もう隠し続けるのは難しそうですね。」


アルトは苦笑する。


「ああ。」


「でも、もう少しだけ。」


「彼女には今まで通り接したい。」


しかし運命は、そんなささやかな願いすら待ってはくれなかった。


大広間の扉が勢いよく開く。


「ご報告!」


一人の近衛騎士が駆け込んできた。


「西の国境にて魔物の大群が出現!」


「避難民が王都へ向かっています!」


広間の空気が一変する。


国王はすぐに表情を引き締めた。


「軍を出せ!」


「はっ!」


リリアも息をのむ。


平和だった王国に、突如として迫る新たな危機。


そして、この出来事がアルトの正体を隠し続けることを不可能にする、大きな転機となるのだった。

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