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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第4章 癒やしのスパリゾート

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第40話 夢の続きを、君と

朝霧がスパリゾートを包んでいた。


いつもなら職人たちの笑い声が響く時間。


しかし今日だけは、どこか静かだった。


アルトが王子だった。


その事実は、まだ誰も完全には受け止めきれていない。


リリアもまた、露天スパの縁に腰を掛けたまま、お湯をぼんやり眺めていた。


「……王子かぁ。」


何度つぶやいても実感が湧かない。


そこへアルトがゆっくり歩いてきた。


「隣、いい?」


「もちろん。」


二人は並んで湯気の向こうに広がる山々を眺める。


しばらく沈黙が続いた。


やがてアルトが静かに口を開く。


「……怒ってる?」


「少しだけ。」


リリアは正直に答えた。


「もっと早く教えてくれてもよかったのに。」


アルトは苦笑する。


「言えなかった。」


「僕が王子だと知られたら、誰も普通に接してくれなくなる。」


「みんな距離を置くだろうし、君もきっと……。」


「そんなことしないよ。」


リリアは即座に否定した。


「アルトはアルト。」


「旅人でも王子でも、家具を運ぶのが下手なのは変わらないし。」


「それはまだ言うのか。」


アルトは思わず笑った。


「釘を何本も曲げてたし。」


「……忘れてくれ。」


「木を切りすぎて、家一本分くらい余らせたし。」


「それも。」


「初めて作った椅子なんて、脚の長さが全部違ったよね。」


「お願いだから、その話は終わりにしよう。」


二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。


その笑い声を聞いて、少し離れた場所で見守っていたグレッグたちも安心したように微笑む。


「いつもの二人だ。」


フィオナも胸をなで下ろした。


「よかった。」


笑いが落ち着くと、アルトは真剣な表情になった。


「でも。」


「これからは変わる。」


「王族としての仕事に戻らなきゃいけない。」


「新しい領地の開発。」


「貴族との調整。」


「王城での会議。」


「忙しくなる。」


リリアは静かに頷いた。


「うん。」


「だから。」


アルトはリリアをまっすぐ見つめた。


「一緒に来てほしい。」


「君の力が必要なんだ。」


リリアは少しだけ考えた。


そして、にっこり笑う。


「断る理由なんてないよ。」


「だって。」


「まだ作りたいものが山ほどあるもん。」


「城。」


「城下町。」


「港。」


「市場。」


「大図書館。」


「大温室。」


「劇場。」


「運河。」


「公園。」


話し始めると止まらない。


いつものリリアだった。


アルトは苦笑しながら聞いている。


「それ全部作る気?」


「もちろん!」


「せっかくなら世界一住みやすい国にしたい。」


「子どもが笑って。」


「大人が安心して。」


「おじいちゃん、おばあちゃんも暮らしやすい。」


「旅人はまた来たいって思って。」


「みんなが幸せになれる国。」


リリアは目を輝かせながら語る。


その姿を見て、アルトは確信した。


この人ならできる。


家を一軒建てることから始まり。


街をつくり。


スパリゾートをつくり。


次は国をつくる。


そんな夢物語を、本当に実現してしまう人だ。


その時だった。


国王と王妃、そして第一王女セレスがスパリゾートへ姿を現した。


職人たちは慌てて頭を下げる。


しかし国王は笑いながら手を振った。


「今日は視察ではない。」


「一人の客として来た。」


「もちろん、入浴料は払うぞ。」


グレッグが思わず吹き出す。


「陛下から金を取るのか?」


リリアは真面目な顔で答えた。


「はい。」


「お客様はみんな平等です。」


一瞬、静まり返る。


次の瞬間。


国王は腹を抱えて笑った。


「はっはっはっ!」


「そうでなくては面白くない!」


「では一番高い部屋を頼もう。」


「ありがとうございます!」


王妃も微笑む。


「あなたが造ったこの場所、本当に素敵ですね。」


セレスはリリアに近づき、小さく頭を下げた。


「これから兄をよろしくお願いします。」


「え?」


「兄は昔から、少し頑張りすぎる人なんです。」


「だから。」


「休むことも教えてあげてください。」


リリアはアルトを見る。


「……確かに。」


「昨日も夜遅くまで図面見てたよね?」


アルトは目をそらした。


「少しだけ。」


「少しじゃなかった。」


「反省します。」


みんなが笑う。


穏やかな時間が流れていく。


その光景を見つめながら、国王は静かにつぶやいた。


「これからの王国は、きっと大丈夫だ。」


夕暮れ。


リリアとアルトは高台へ登り、自分たちが作ったスパリゾートを見下ろしていた。


露天スパから立ち上る湯気。


庭園を散歩する家族。


笑顔で手を振る子どもたち。


「完成したね。」


リリアがつぶやく。


アルトは首を横に振った。


「いや。」


「完成じゃない。」


「これは始まりだ。」


リリアも笑顔で頷く。


「そうだね。」


「次は国を作ろう。」


二人は夕日に照らされながら、新しい地図を広げた。


そこには、まだ何も描かれていない広大な土地。


真っ白な未来。


リリアは鉛筆を持ち、一番最初の線を引く。


「まずは、お城をどこに建てようか。」


その一言から。


王国史上最大のクラフト計画が始まる。




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