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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第4章 癒やしのスパリゾート

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第36話 ヒーリングガーデン

「次は庭を作ろう!」


翌朝。


リリアはスパリゾート全体を見渡しながら大きく伸びをした。


露天スパ。


ラウンジテラス。


宿泊棟。


どれも大勢のお客様で賑わっている。


しかし、リリアは少しだけ首をかしげた。


「まだ足りない。」


アルトが笑う。


「また何か見つけたのか。」


「うん。」


リリアは宿泊棟のテラスを指差した。


「みんな、お風呂に入ったらそのまま帰っちゃうの。」


「もっとゆっくりしてほしい。」


「それで?」


「何もしない場所を作る。」


「……何もしない場所?」


グレッグが不思議そうな顔をする。


リリアは笑顔でうなずいた。


「うん。」


「景色を眺めたり。」


「本を読んだり。」


「昼寝したり。」


「ぼーっとしたり。」


「そんな場所。」


「商売になるのか?」


王都から来た商人が思わず尋ねる。


リリアは自信たっぷりに答えた。


「なるよ。」


「忙しい人ほど、何もしない時間が必要なんだから。」


その言葉に、宰相バルディアが静かに目を閉じた。


「……確かに。」


「王城では、一日中予定に追われています。」


「何も考えず空を眺める時間など、何年もありません。」


リリアは微笑んだ。


「だから作るんです。」


「何もしなくても幸せになれる庭。」


設計図には、大きな円形の庭園が描かれていた。


色とりどりの花壇。


木漏れ日の小道。


ゆっくり揺れる木製ブランコ。


読書用の東屋。


小さな池。


池には睡蓮が浮かび、小さな橋が架かっている。


そして庭の中央には、大きな一本の木。


「この木は残すのか?」


アルトが尋ねる。


「もちろん。」


リリアは迷わず答えた。


「この木が、この庭の主役だから。」


「建物より木?」


「うん。」


「何百年もここに立ってるんだよ。」


「私たちは、その隣を少し借りるだけ。」


職人たちは静かにうなずいた。


誰もその木を切ろうとは言わなかった。


建設はいつもよりゆっくり進められた。


花壇は一つずつ丁寧に。


石畳は歩きやすく。


ベンチは木陰へ。


風の通り道を考えながら木を植える。


フィオナは花の配置を何度も見直していた。


「春はピンク。」


「夏は青。」


「秋は赤。」


「冬は白。」


「一年中違う景色を楽しめます。」


「ありがとう。」


リリアは嬉しそうに笑った。


午後になると、小さな池も完成した。


澄んだ水面に青空が映る。


小魚が泳ぎ、鳥が水を飲みにやって来る。


「ここ、本当に人工なんですか?」


王都の庭師が驚いていた。


「自然にしか見えません。」


「それが一番嬉しい。」


リリアは池のほとりへ座る。


「作ったって分からないくらい自然が理想なの。」


アルトも隣へ腰掛けた。


「君は建物より風景を作っているんだな。」


「そうかも。」


リリアは空を見上げる。


白い雲がゆっくり流れていく。


「ここに来た人が。」


「帰る頃には少し元気になってくれたら、それだけでいい。」


夕方。


最後の花が植えられる。


リリアはクラフトガイドへ手を添えた。


「クラフト。」


淡い緑色の光が庭園全体を包む。


若木が少しずつ枝を伸ばす。


花が一斉に咲き始める。


池のほとりには白い花。


遊歩道には色鮮やかな花壇。


風が吹くたび、花びらが舞い上がる。


「きれい……。」


誰もが言葉を失った。


まるで昔からそこに存在していた楽園のようだった。


クラフトガイドが輝く。


【施設完成】


**ヒーリングガーデン**


【効果】


・心の疲労回復


・ストレス軽減


・滞在満足度上昇


・滞在時間増加


・四季ごとの景観変化


さらに新しい通知が表示された。


【スパリゾート開発度 75%】


【特別イベント解放】


**夜の庭園散策**


「夜?」


リリアの目が輝く。


「夜のお庭も見てもらおう!」


アルトは苦笑する。


「また寝る時間が減るぞ。」


「大丈夫!」


「夜は照明を工夫するだけだから!」


「その『だけ』が大変なんだけどな。」


職人たちが笑う。


その時、一人の少女がお母さんの手を引きながら庭へ入ってきた。


「お母さん。」


「ここ、お花の匂いがする。」


少女は大きな木の下まで歩き、芝生へ寝転んだ。


「気持ちいい。」


その姿を見たリリアは思わず笑顔になる。


「うん。」


「それでいいんだ。」


豪華な建物よりも。


高価な装飾よりも。


誰かが自然と笑顔になれる場所。


それこそが、リリアの作りたかった"癒やし"だった。


その夜。


庭園は優しい灯りに包まれ、多くの人が静かに散策を楽しんでいた。


そして、その人混みの中には、フードを深くかぶった一人の女性がいた。


彼女は庭園を見渡し、小さく微笑む。


「お兄様が惹かれた理由が、ようやく分かりました。」


その女性は、アルトの妹――第一王女セレスだった。


彼女は兄にも気づかれないよう、静かにリリアを見つめていた。


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