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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第4章 癒やしのスパリゾート

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第35話 最高のおもてなし

「た、大変です!」


朝早くから受付へ飛び込んできたのは、新しく雇った受付係のエマだった。


「どうしたの?」


リリアは庭園で花の手入れをしていた手を止める。


「予約がいっぱいです!」


「え?」


「もう三か月先まで埋まりました!」


「ええぇぇ!?」


リリアは思わずじょうろを落としそうになる。


受付へ向かうと、長い列ができていた。


貴族らしき夫婦。


商人。


旅人。


冒険者。


子ども連れの家族。


さまざまな人が順番を待っている。


「本当に人気になったんだ……。」


リリアは少し信じられない気持ちだった。


「リリアさん!」


フィオナが駆け寄ってくる。


「お花が足りません!」


「露天スパに飾る花が全部なくなりました!」


「えっ?」


「お客様がお土産に買ってくださるんです!」


「それは嬉しい!」


今度はミアが走ってくる。


「パンが足りません!」


「全部売り切れました!」


「追加で焼きます!」


続いてグレッグ。


「ベンチが足りない!」


「みんな景色を見ながら休んでる!」


次々と問題が報告される。


普通なら大慌てだ。


だがリリアは笑っていた。


「みんな。」


「困ってるんじゃないよ。」


「必要とされてるんだ。」


全員が顔を見合わせる。


「だったら。」


「もっと居心地のいい場所にしよう!」


その一言で職人たちの目が輝いた。


「よし!」


「増築だ!」


「任せろ!」


その日の午後。


リリアは新しい設計図を広げる。


「今度は湯上がり広場を作るよ。」


「湯上がり広場?」


アルトが図面をのぞき込む。


そこには大きな木造の建物と広いテラスが描かれていた。


「お風呂から出たら終わりじゃないの。」


「その後もゆっくりしてほしい。」


木陰のテラス。


ゆったり座れるソファ。


読書コーナー。


暖炉。


景色を眺められる大きな窓。


そして中央には、小さな喫茶スペース。


「ここで温かいお茶を飲んだり。」


「甘いお菓子を食べたり。」


「家族でおしゃべりしたり。」


「何時間でも過ごせる場所にする!」


ミアが手を叩いた。


「新作パンを置きます!」


フィオナも笑顔になる。


「季節のお花を飾ります!」


ソフィアは小さなクッションを手に取る。


「座布団じゃなくて、ふかふかのクッションを作りたいです。」


グレッグは図面を見て笑った。


「仕事が増えるな。」


「でも嫌いじゃない。」


建設は一気に始まった。


木材の香りが広がる。


職人たちが息を合わせて柱を立てる。


大きな窓からは山々が見渡せる。


テラスには木製のハンモック。


小鳥が遊びに来るよう、小さな餌台まで設置した。


「細かいなぁ。」


アルトが笑う。


リリアは真剣な顔で答える。


「細かいところが思い出になるんだよ。」


「また来たいって思ってもらえる理由は、こういうところだから。」


夕方。


建物が完成した。


木の香りが漂う広々とした休憩ラウンジ。


窓を開ければ心地よい風が吹き抜ける。


テラスへ出れば、露天スパから立ち上る湯気と山並みが一望できた。


「すごい……。」


最初のお客様が中へ入る。


温かい薬草茶を飲みながら椅子へ腰掛ける。


「帰りたくない。」


誰かがぽつりと言った。


その一言に、リリアは思わず笑顔になる。


「最高の褒め言葉だ。」


クラフトガイドが光り始めた。


【施設完成】


**癒やしのラウンジテラス**


【効果】


・滞在時間大幅増加


・満足度上昇


・リピーター率上昇


・家族連れ人気上昇


さらに新しい通知が現れる。


【スパリゾート開発度 55%】


【新施設解放】


**ヒーリングガーデン**


その時、一人の老紳士がリリアへ近付いてきた。


上品な服装だが護衛はいない。


普通の旅人にも見える。


「失礼。」


「はい?」


「私は各地を旅して五十年以上になります。」


老紳士は穏やかに微笑んだ。


「ですが……。」


「ここほど『帰りたくない』と思った場所は初めてです。」


リリアは照れくさそうに笑う。


「ありがとうございます。」


「また来てくださいね。」


「ええ。」


「必ず。」


老紳士は深く一礼すると、静かに馬車へ戻っていった。


その姿を遠くから見ていたアルトは、小さく息をのむ。


「あの方が、こんなところまで……。」


リリアは気づかない。


あの老紳士こそ、変装して視察に訪れた現国王だった。


国王は馬車の窓からスパを見つめ、小さく微笑む。


「アルト。」


「お前が信頼する理由が、ようやく分かった。」


「この娘なら……。」


「王国の未来を任せられる。」


その言葉は、誰にも聞こえなかった。


しかし、この極秘視察が、リリアとアルトの運命を大きく動かす最初の一歩となるのだった。


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