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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第3章 理想の街へ

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第30話 理想の街へ

朝日が街を優しく照らしていた。


時計塔の鐘が静かに鳴り響く。


広場ではパンの焼ける香りが漂い、子どもたちは噴水の周りを元気いっぱい走り回っている。


工房通りからは木を削る音。


花屋ではフィオナが花束を作り、図書館では開館を待つ子どもたちが列を作っていた。


リリアは時計塔の展望台から、その景色を静かに眺めていた。


「……ここまで来たんだ。」


森で一人目を覚ました日から、まだ一年も経っていない。


木を切ることしかできなかった自分が、今ではこんな街を作っている。


信じられなかった。


「何を考えてる?」


後ろからアルトが声をかける。


「最初の日のこと。」


リリアは微笑んだ。


「あの頃は、雨をしのげる家があれば十分だと思ってた。」


「そうだったな。」


「でも今は……。」


街を見下ろす。


「みんなの笑顔を見ると、もっと素敵な街にしたくなる。」


アルトは静かに頷いた。


「君は建物を作っているんじゃない。」


「幸せを作っているんだ。」


リリアは照れくさそうに笑う。


「そんな立派なものじゃないよ。」


「私はただ、みんなが楽しく暮らせる場所を作りたいだけ。」


その時だった。


広場の方から鐘とは違う音が聞こえてきた。


カラン、カラン。


街の入口に一台の馬車が止まる。


王国の紋章が描かれた白い馬車だった。


「王都から?」


住民たちが集まり始める。


馬車から降りてきたのは、以前この街を訪れた視察官エドガーだった。


「リリアさん、お久しぶりです。」


「エドガーさん!」


エドガーは笑顔で一礼すると、一枚の巻物を広げた。


「王国より正式な通達です。」


広場が静まり返る。


「本日をもちまして、この街を――」


一拍置いて、高らかに読み上げた。


「**『王国認定・理想都市第一号』**に認定いたします!」


一瞬の静寂。


そして――。


「やったぁーー!!」


広場中が歓声に包まれた。


子どもたちは飛び跳ね、大人たちは抱き合って喜ぶ。


ミアは涙ぐみながら拍手を送り、グレッグは豪快に笑った。


「俺たちの街が王国一だ!」


「やったぞ!」


フィオナは嬉しそうに花びらを空へ舞わせる。


色とりどりの花びらが春風に乗って広場を包み込んだ。


リリアは呆然と立ち尽くしていた。


「私たちの……街が?」


エドガーは深く頷く。


「ええ。」


「王立建築学院。」


「商業局。」


「農業局。」


「観光局。」


「すべての機関が満場一致で認定しました。」


住民たちから再び大きな拍手が起こる。


「さらに。」


エドガーはもう一枚の書類を取り出した。


「王国より褒賞金と、新たな開発資金が支給されます。」


金貨が入った大きな箱が運び込まれる。


「こんなに……。」


リリアは驚きを隠せなかった。


しかし次の瞬間。


「よし。」


「図書館の本をもっと増やそう。」


「工房も広くしたい。」


「子どもたちの遊び場も増やしたいな。」


その言葉に、住民たちは一斉に笑った。


「自分のご褒美じゃないのか!」


グレッグが大笑いする。


リリアはきょとんとした。


「え?」


「街のお金でしょ?」


「だったら街に使うよ。」


アルトは苦笑しながら肩をすくめた。


「君らしい。」


その様子を見たエドガーは、小さく笑う。


「だからこそ、王都はあなたを信頼しているのです。」


式典が終わったあと、街ではささやかなお祝いが開かれた。


パン屋では焼きたてのパンが無料で配られ、花屋では子どもたちに花冠が贈られる。


工房通りでは職人たちが実演を始め、温室庭園では演奏会が開かれた。


夜になると街路灯が優しく灯り、広場には住民たちの笑顔があふれていた。


リリアはベンチへ座り、その景色を眺める。


「いい街になったね。」


アルトが隣へ腰掛ける。


「ああ。」


「でも君なら、ここで終わらないんだろう?」


リリアは少し考えたあと、にっこり笑った。


「もちろん。」


「まだまだ作りたいものがあるもん。」


「例えば?」


「もっとみんながゆっくり休める場所。」


「一日中遊べる場所。」


「疲れが吹き飛ぶ場所。」


アルトは笑う。


「また何か考えてるな。」


「うん。」


「前世で大好きだった場所があるの。」


「そこを、この世界にも作りたい。」


その時だった。


エドガーが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「リリアさん!」


「はい?」


「実は、もう一通だけ王都から預かっている手紙があります。」


「もう一通?」


封を開く。


そこには短く、しかし力強い文字で書かれていた。


『王都近郊で温泉が発見された。』


『その価値を活かせる者は、あなただけだ。』


『異世界初の"癒やしの街"を造ってほしい。』


リリアの目が大きく見開かれる。


「温泉……!」


前世で何度も通った、大好きな場所。


露天風呂。


サウナ。


岩盤浴。


湯上がりの牛乳。


家族や友人と笑いながら過ごした時間が、一気によみがえった。


リリアは思わず立ち上がる。


「作りたい!」


「絶対に作りたい!」


住民たちは顔を見合わせて笑う。


アルトも優しく微笑んだ。


「その顔を見ると、もう止められないな。」


「うん!」


「今度は世界一のお風呂を作る!」


こうして、王国初の理想都市は完成した。


しかし、それは終わりではない。


リリアの新しい夢が、今また動き始める。


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