第27話 夜を彩る街灯
「きれい……。」
夕暮れの温室庭園を見ながら、リリアは小さくつぶやいた。
夕日に照らされた花々は昼とは違う美しさを見せている。
「でも……。」
リリアは少しだけ眉をひそめた。
「どうした?」
アルトが隣に立つ。
「夜になると暗いんだよね。」
街を見回す。
日が沈み始めると、人通りは一気に減る。
店も早く閉まり、住民たちは家へ帰ってしまう。
せっかく作った噴水も。
花壇も。
時計塔も。
夜になると、その姿がほとんど見えなくなってしまう。
「もったいない。」
リリアはそう言って立ち上がった。
「決めた!」
アルトが苦笑する。
「また何か思いついたな。」
「街灯を作る!」
「街灯?」
住民たちも聞き慣れない言葉に首を傾げる。
翌朝。
広場に設計図が広げられた。
一本の細い柱。
先端にはガラス製のランタン。
その中には魔石を利用した小さな光源。
「これが街灯!」
グレッグが図面をのぞき込む。
「夜に光るのか?」
「うん!」
「道が明るくなるし、安全になるよ。」
「それだけじゃない。」
リリアは時計塔を指差した。
「夜の街も歩きたくなるの。」
「夜も?」
「そう。」
「昼と夜で違う景色を楽しめたら素敵でしょ?」
ハンナは目を輝かせる。
「ロマンチック!」
フィオナも笑顔になる。
「温室ももっときれいに見えそうです。」
「その通り!」
建設が始まった。
木工職人が柱を作る。
ガラス工房がランタンを仕上げる。
鍛冶工房が金具を作る。
ガイウス学院長は街灯の高さを細かく確認していた。
「一本だけではだめです。」
「等間隔に並べましょう。」
リリアも頷く。
「うん。」
「光がつながるように。」
一本。
また一本。
広場から宿屋へ。
宿屋から図書館へ。
図書館から工房通りへ。
街中へ街灯が並んでいく。
最後は温室庭園の入口。
フィオナが花を植え終える。
「完成です!」
日が暮れる。
住民たちが広場へ集まった。
「本当に光るの?」
子どもたちは興味津々だ。
リリアはクラフトガイドへ手を添える。
「点灯。」
カチッ。
最初の街灯が優しく光った。
続いて二本目。
三本目。
四本目。
まるで光が街を走るように、一つずつ灯りがともっていく。
「わあぁぁ!」
住民たちから歓声が上がった。
黄金色の光が石畳を照らす。
噴水の水面がきらめく。
花壇の花が優しく浮かび上がる。
温室庭園はガラス越しに幻想的な光を放っていた。
まるで絵本の世界だった。
「すごい……。」
ミアは目を潤ませる。
「夜なのに怖くない。」
「むしろ歩きたくなる。」
宿屋へ泊まっていた旅人たちも感動している。
「夜の散歩をしたい。」
「こんな街は初めて見た。」
「昼より好きかもしれない。」
その時だった。
一組の老夫婦が手をつないで歩き始める。
「昔は暗くなる前に帰っていたね。」
「今日はもう少し歩こうか。」
ゆっくりと石畳を歩く二人。
その姿を見たリリアは胸が熱くなった。
「よかった……。」
前世でも夜景を見るのが好きだった。
温かい灯りを見るだけで心が落ち着いた。
その景色を、この世界でも作ることができた。
ガイウス学院長が静かに拍手を送る。
「建物だけではありません。」
「夜の時間まで設計するとは。」
「さすがです。」
クラフトガイドが黄金色に輝く。
【施設完成】
街路灯システム
【効果】
・夜間の安全性向上
・夜間営業可能
・夜間観光客増加
・住民満足度上昇
さらに新しい通知が現れる。
【街発展度 250】
【特別イベント解放】
夜祭りを開催できます
「夜祭り!」
リリアの目が一気に輝く。
「お祭り!」
ハンナも飛び跳ねる。
「やりたい!」
ミアも笑顔で手を挙げる。
「屋台を出します!」
ソフィアも負けじと声を上げる。
「雑貨もいっぱい並べます!」
フィオナは嬉しそうに言う。
「夜に咲く花を飾ります!」
広場は一気に盛り上がった。
アルトはそんなみんなを見渡し、穏やかに微笑む。
「最初はただの村だったのにな。」
「今では誰もが、この街をもっと良くしたいと思っている。」
リリアは笑顔で頷いた。
「うん。」
「街って建物じゃなくて、人が育てるものなんだね。」
その言葉に、住民全員が大きく頷いた。
そして数日後。
この街では初めてとなる夜祭りが開かれることになる。
その祭りには、王都から思いもよらない客人が姿を見せるのだった。




