第26話 四季の庭園都市
翌朝。
リリアは図書館の机いっぱいに設計図を広げていた。
「できた!」
勢いよく立ち上がる。
その声に、図書館で本を読んでいた子どもたちがびくっと肩を震わせた。
「あ、ごめん!」
リリアは慌てて口を押さえる。
「図書館では静かにしないとね。」
子どもたちがくすっと笑う。
アルトも笑いをこらえていた。
「静かにって言った本人が一番大きな声だったな。」
「うぅ……反省。」
みんなが笑い、図書館はまた穏やかな空気に戻った。
リリアは設計図を抱えて外へ飛び出す。
「みんな集まって!」
広場にはいつもの仲間が集まった。
モルガン。
ミア。
ソフィア。
フィオナ。
ハンナ。
グレッグ。
そしてアルト。
「今度は何を作るんだ?」
グレッグが笑いながら尋ねる。
リリアは満面の笑みで設計図を広げた。
「温室庭園!」
透明なガラス張りの建物。
中央には噴水。
色とりどりの花。
木製のベンチ。
小さな橋まで描かれている。
「これは……庭園?」
フィオナが目を輝かせた。
「そう!」
「冬でも花が咲く場所!」
その言葉に全員が驚く。
「冬でも?」
「そんなことができるのか?」
リリアは頷く。
「ガラスで囲えば暖かい空気を逃がさないの。」
「太陽の光もいっぱい入る。」
フィオナは興奮していた。
「一年中、お花を育てられる……。」
「うん!」
「それにね。」
リリアは設計図をめくる。
そこには季節ごとの花壇が描かれていた。
春の花。
夏の花。
秋の花。
冬の花。
「歩くだけで四季を楽しめる庭園にしたいの。」
フィオナは感動で目を潤ませる。
「夢みたいです。」
「一緒に作ろう!」
「はい!」
建設はすぐに始まった。
ガラス工房では職人たちが大きな窓ガラスを作る。
木工工房ではアーチ型の柱を加工する。
鍛冶工房では金具を製作。
街中の職人たちが自然と協力し始めた。
ガイウス学院長も腕をまくる。
「久しぶりに本気を出しますか。」
弟子たちが驚く。
「学院長が現場に!?」
「当然です。」
「こんな仕事、見ているだけではもったいない。」
リリアは嬉しそうに笑った。
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ。」
学院長まで職人として働き始める。
住民たちはその光景に目を丸くしていた。
昼過ぎ。
温室の骨組みが完成する。
巨大なガラス屋根。
木の梁。
白い石畳。
中央には大きな噴水。
「きれい……。」
ハンナが思わず息を呑む。
まだ花は植えていない。
それでも十分美しかった。
フィオナは一つ一つ丁寧に苗を植えていく。
「春はこちら。」
「夏はこの花。」
「秋には紅葉する木。」
「冬は白い花。」
リリアも一緒に植えていく。
前世では鉢植えしか育てられなかった。
でも今は違う。
こんな大きな庭園を作れる。
夢みたいだった。
夕方。
最後の花を植え終えた。
リリアは深呼吸し、クラフトスキルを発動する。
「クラフト!」
温室全体が淡い緑色の光に包まれる。
ガラスがきらきらと輝き、植物が一斉に成長した。
つぼみが開く。
色とりどりの花が咲き誇る。
噴水の水音が静かに響く。
「わあぁ……。」
住民たちから歓声が上がる。
「本当に一年中花が咲いてる!」
「冬の花と春の花が一緒に!」
「こんなの初めて見た!」
旅人たちも次々と集まってきた。
「なんて美しい場所なんだ。」
「王都にもないぞ。」
「写真……じゃなかった、絵を描きたい!」
画家らしい旅人が慌ててスケッチを始める。
ガイウス学院長は目を細めながら言った。
「これだけでも、この街へ来る価値があります。」
クラフトガイドがまばゆく光る。
【施設完成】
四季の温室庭園
【効果】
・観光客大幅増加
・花の品質向上
・住民幸福度上昇
・芸術家が集まりやすくなります
さらに新しい通知が現れる。
【街発展度 220】
【称号更新】
『理想都市の創造者』
↓
『庭園都市の設計者』
そして最後に、一行の文字が浮かび上がった。
【新たな来訪者】
王国宮廷庭師 来訪決定
リリアは思わずガッツポーズをした。
「庭師さん!」
「またすごい人が来る!」
アルトは苦笑する。
「普通なら緊張する場面なんだけどな。」
「だって、お花の話ができる人だよ!」
「楽しみ!」
その笑顔を見て、アルトも自然と笑ってしまう。
この街には、人を笑顔にする不思議な力があった。
そして、その中心には、今日も夢中で新しい設計図を描くリリアの姿があった。




