第23話 みんなの図書館
「次は図書館を作ります!」
翌朝、広場に集まった住民たちは顔を見合わせた。
「図書館?」
「本を置く建物ですよね?」
「そんなに大きい建物が必要なのか?」
リリアは大きく頷いた。
「必要!」
その勢いに、ハンナが思わず笑う。
「理由は?」
「本ってね、一人で読むものじゃないの。」
みんなが首を傾げる。
リリアは地面に枝で簡単な絵を描いた。
本棚。
机。
暖炉。
大きな窓。
そしてソファ。
「本を読んだり。」
「勉強したり。」
「おしゃべりしたり。」
「休憩したり。」
「そんな場所があったら、毎日来たくならない?」
住民たちは想像する。
「確かに……。」
「雨の日でも過ごせそうだ。」
「子どもも喜びそう!」
グレッグまで乗り気になっていた。
アルトは笑いながら呟く。
「また新しい発想だな。」
「前から作りたかったんだ。」
リリアの目は輝いていた。
前世では休日になると図書館へ通っていた。
静かな空間。
木の机。
本棚に囲まれた景色。
あの空気が大好きだった。
だから、この世界にも作りたい。
「世界一居心地のいい図書館を!」
住民たちが一斉に笑った。
「また始まった!」
建設場所は時計塔の近くに決まった。
広場からも近く、花屋も見える。
リリアは設計図を広げる。
「入口は大きな木の扉。」
「窓はいっぱい。」
「光が入るように。」
「中庭には木を一本植える。」
「読書しながら休める場所も作る!」
フィオナが嬉しそうに手を挙げる。
「庭は私に任せてください!」
「お願い!」
「花もたくさん植えます!」
「やった!」
みんなが自然と役割を決め始める。
もう誰も「面倒だからやらない」とは言わない。
「棚は俺が作る。」
グレッグが木材を運ぶ。
「机は私が磨きます。」
ミアが布で丁寧に仕上げる。
「カーテンを縫います。」
ソフィアも笑顔だった。
リリアはその光景を見て、胸が熱くなる。
「ありがとう。」
その一言しか出てこなかった。
昼過ぎ。
建物が完成する。
木の香りが漂う二階建て。
大きな窓から光が差し込む。
中央には暖炉。
壁一面には本棚。
丸い机。
ふかふかの長椅子。
窓際には読書スペース。
「……最高。」
リリアは思わず呟いた。
まるで前世で憧れていた図書館そのものだった。
最後に本棚へ本を並べる。
村に残っていた古い歴史書。
薬草の本。
料理の本。
農業の本。
決して数は多くない。
それでも十分だった。
クラフトガイドが淡く光る。
【施設完成】
みんなの図書館
【効果】
・住民の知識向上
・子どもの成長速度上昇
・新レシピ発見率上昇
「新レシピ?」
リリアが画面を見る。
そこには見たことのない項目が並んでいた。
・ガラス温室
・風車
・街路樹
・音楽堂
「すごい!」
図書館を建てたことで、新しい知識が生まれたらしい。
その時だった。
入口から小さな男の子が恐る恐る入ってきた。
「入ってもいい?」
「もちろん!」
男の子は本棚を見上げる。
「本がいっぱい……。」
一冊の絵本を手に取り、椅子へ座る。
静かにページをめくる。
夢中になって読んでいる。
その姿を見て、リリアは自然と笑顔になった。
「これが見たかったんだ。」
アルトが隣へ来る。
「本を読む子どもか。」
「うん。」
「この子が大人になったら。」
「もっとすごい物を作るかもしれない。」
アルトは静かに頷いた。
「街は建物だけじゃない。」
「人も育つ。」
リリアは嬉しそうに笑った。
「そう!」
「だから図書館は必要なの。」
夕方。
図書館の前には思った以上に人が集まっていた。
大人は歴史書を読む。
子どもは絵本を読む。
旅人は地図を広げる。
誰もが静かな時間を楽しんでいる。
クラフトガイドが再び光る。
【街発展度 170】
【文化レベル上昇】
【称号獲得】
『街の設計士』→『理想都市の創造者』
さらに新しい文字が浮かび上がる。
【特別イベント発生】
王立建築学院 来訪予定
リリアは首を傾げた。
「建築学院?」
アルトはその文字を見て苦笑する。
「今度は職人たちまで来るらしい。」
「えっ?」
「たぶん、この街を見て勉強したいんだろう。」
リリアは驚いたあと、小さく笑った。
「だったら歓迎しなくちゃ。」
知らないうちに、この街は「学ぶために訪れる街」になり始めていた。
そして、それは王国中の職人たちの運命を大きく変える始まりでもあった。




